第54話 珍獣? その7
カインが続行の決断をしたので俺が作戦を考える。
「要は単純だ。まず、眼下の7匹を俺達3人が弓矢で倒す。その次に、洞窟内部に潜入し3匹のコボルトと1匹のハイコボルトを倒して、50匹近くいる子供コボルトを殲滅する」
俺は簡単に説明した。
そして、これからは本格的な討伐に入るので、案内役の猟師さんは村に帰ってもらった。
それぞれ、準備をし態勢を整える。
俺とキュィとムーイは矢をつがえて、まず入口で見張りをしている2匹に狙いを定める。
「いくぞ。用意はいいな」
「「「いいよ!」」」
「3・2・1、今だ!」
俺達は矢を放ち、同時にカインは自分の盾をソリがわりにして一気に斜面を降る。
バシュ、バシュ、バシュ
高い位置からの射撃のため矢の威力は増し、更に狙いやすい。
3人ともに2射したところで、入口の見張りのコボルトは動かなくなった。
すぐに、キュィ達は残りの5匹に狙いを定める。
俺は射撃を止め、カインに続いて盾をソリがわりにして斜面を一気に滑り降りる。
異変を察知したコボルト達はショートソードを抜いてカインに向かって走ってくる
カインに近づくまでに、1匹のコボルトがムーイ達の矢で倒された。
カインは走って近づいてきた一番最初のコボルトに袈裟懸けに切りつける。
コボルトとカインが数合打ち合っている間に、俺と残りのコボルト達が追いつき、4対2の乱戦になる。
しかし、結局ものの5分といわず、あっという間に倒してしまった。
「余裕じゃね?」
カインはガッツポーズをとって意気揚々としている。
その間に、キュィとムーイが斜面をゆっくり降りてくるのだった。
◇◆◇◆◇◆
「どうやら、洞窟内にまだバレていないようだな。このままいくぞ!」
俺達はあたりを見回しみんなに声をかけると、カインを先頭にして洞窟に入っていく。
召喚ねずみの時は気づかなかったが、洞窟の通路は思いのほか狭い。
コボルト達の背丈は俺の腰の高さくらいしかないので問題ないようだが、俺達は少しかがまないと通れない。
それに、中はすごく獣臭かった。
入った瞬間に、ムワッとした臭いに襲われる。
我慢しながら20メートルほど進むと、第1の広い空間に出た。
そこには、強奪したであろう品物や武器・防具および食料品などが無造作に山積みされていた。
「カイン、止まってくれ」
「なんだよ」
「最悪の状況を考えて、ちょっと細工をする」
俺はそう言うと、魔法の杖を取り出し詠唱を始める。
「アースウォール」
「アースフォール」
「アースウォール」
「アースフォール」
「アースウォール」
「アースフォール」
洞窟入口付近から第1の広間までの通路に、土魔法で土壁と穴を交互に作る。
「なにしてんの?」
「奴らが戻ってきた時の時間稼ぎだ。あと、キュィとムーイはここで見張りをしてほしい。万が一、クイーン達が戻ってきたら知らせてくれ」
「わかりました」
ムーイが返事をすると、俺とカインは2人を残して先に進む。
第1の広間を抜け、通路を2人並んで歩く。
「この先の突き当たりに、たぶん子供のコボルト達と世話をしているハイコボルト達がいる」
「・・・なんか、気が重いね。コボルトとはいえ小っこいのを倒さないといけないとは」
「仕方が無いだろ。ほっとけば追加で50匹単位の大量増殖だ。更にクイーン候補の赤毛とハイコボルトの子供いたからな。そのままにすれば、手がつけられなくなる」
そうこうしているうちに、キーキーと騒々しい場所の前まで来た。
「さて、どうするの?」
カインが小声で聞いてくる。
「中は、コボルト達で密集しているから俺がアシッドレインを3回唱えて先制攻撃を加える。その後はひたすら斬りまくるだけだな」
「それ、作戦って言えんの?」
「し、しょうがないだろ。基本、俺達は盾職2人なんだから。あと、安全性を考えてハイコボルトは俺がやる。お前は入口近くに陣取って、近場からどんどん倒していけ!」
「・・・わかったよ」
「よし!いくぞ。3・2・1 」
「アシッドレイン!」X3
俺は通路の壁に隠れながら魔法の杖だけ広間に入れて、3回小範囲水魔法を唱える。
その後、辺り一面阿鼻叫喚の凄まじい叫び声で埋め尽くされた。
俺はショートソードを抜いて盾を構えなおし、カインと2人同時に広間の中に飛び込む。
広間の中は想像以上の状態になっていた。
酸で肉の焼け爛れる臭いと獣臭で鼻が曲がりそうになるが、我慢してあたりを見回す。
体のあちこちが溶けて爛れている小さいコボルト達が、地面の上をのたうちまわりながら呻いている。
その中でもっとも大きな個体を見つけると、俺は走って一気に近づいていく。
ハイコボルトは痛みで転がっていたが、俺の姿を見ると立ち上がりショートソードを抜いて迎撃態勢をとる。
ハイコボルトの顔を見ると、右半面が完全に焼け爛れていて見るも無残な状態になっている。
俺はすぐさま右に回り込み死角に入って斬りつけると、その動きがまったく見えなかった様子で、ハイコボルトの肩口から鮮血が飛び散る。
その後、前のめりにドッと倒れて動かなくなった。
俺はすぐさま後ろを振り返ると、カインが近場で転がって呻いている子コボルトを機械的にトドメを刺していた。
俺も、同様に近場から順番に斬りつけてどんどん倒していく。
コボルトと子コボルト達は、まったくなすすべも無くどんどん倒されていった。
小1時間経ったところで、動くものは何一つ存在しなかった。
カインと2人、全身返り血で血みどろになったが、幸い2人ともかすり傷程度であった。
2人ともヘトヘトな状態で声をかけるのもしんどかったが、なんとか無事に終わったのでホッと一息ついていた。
そんなところで、キュィが慌てた表情で広間の中に入ってきた。
「奴らが戻ってきたわ!今、ムーイが防衛しているからすぐに戻ってきて」
事態は、俺が想像してた最悪の状況になってしまった。
俺達3人は急いで洞窟の入口に戻る。
◇◆◇◆◇◆
第1の広間の入口付近ではムーイが懸命に矢を放って、コボルト達の侵入を防いでいた。
幸いにも俺が作った足止めがうまく機能して、俺達が戻ってくるまで何とか持ちこたえていた。
しかし、洞窟入口から第1の広間までの3/4の地点までコボルト達は到達していた。
先頭には盾を持ったハイコボルトがコボルトの屍を足場にして、壁と穴を乗り越えながらどんどん近づいてくる。
第1の広間まで到達するのは時間の問題のようだ。
「みんな後ろに下がれ!」
俺はそう言うと、魔法の杖を取り出して詠唱を始める。
「アースウォール」X5
俺は、アースウォールを通路の上下左右にランダムに何度も唱える。
5回連続で唱えたところで、一気に通路が音を立てて崩れ始めた。
ズッドドドドドーーーン
入口から第1広間までの通路が一気に崩れて、入口までの通路を土砂で塞いだのだった。




