第53話 珍獣? その6
俺達は遠くで待たせていた村の猟師を呼び、手分けして倒したコボルト達を一箇所に集めた。
「アースフォール!」
大きめの深い穴を4箇所開けて、その中にコボルト達の死体を放り込む。
ドサッ、ドサッ
各自持てる量の武具以外は泣く泣くあきらめて、そのまま土の中に埋めることにした。
ハイコボルトと12匹のコボルトの死体を野ざらしにすれば、馬鹿なコボルトでも異変に気づいてしまう。
多少の時間稼ぎにしかならないかも知れないが、敵に脅威と思われるよりマシであると判断した。
「兄ちゃん、やっぱ頭良いな!」
「アホか。こんなの初歩だ、初歩。ちょっとの手間を惜しんで討伐の難易度を上げるのは愚の骨頂だ」
「ぐのこっちょう?」
カインはアホの子のように、首をかしげて頭の上で?が浮いているが、俺は無視して猟師に話しかける。
「あと、目的地までどのくらいですか?」
「もう目と鼻の先だ。この先の丘の下辺りに横穴がある。たぶんその中に奴らが巣くっている」
猟師は指で斜面になっている上の方をさして場所を示す。
「という事は、こいつらはある意味見張りのような存在だったか。うーん?」
「どうしたんですか?」
キュィが心配そうに俺の顔を覗き込んで聞いてくる。
「ん!?見張りの仲間が急に消えたらどう思う?」
「そりゃ、なんかあったとおもいますね」
「そうだろ。死体は隠したが、バレるのは時間の問題だろう。そうなるとなるべく行動を早く行う必要がある。なんにせよ、取り敢えず巣穴を確認することがまず第一だ!」
俺達はまた、猟師を先頭にして移動を始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
緩やかな斜面の一番上までくると、その先は10メートルくらいの高さの急な斜面になっていた。
眼下には40匹のコボルト達がいて、皆横になって休んでいる。
そして右手側に大きな横穴があり、入口には2匹のコボルトが立って見張りをしている。
「兄ちゃんどうする?」
「取り敢えず、ちょっと様子を見よう。出来れば未確認のクイーンの存在を確かめたい」
「わかった。じゃあ、キュィとムーイは背後を警戒して!」
カインは2人に指示を出して、俺とカインと猟師がうつ伏せの状態で眼下の様子を窺い、2人は立ってあたりを警戒する。
1時間程度その状態のまま様子を見るが、眼下では何も変化が無い。
「うぅん、なんにも起きないねぇ」
カインは大きく背伸びをして、立ち上がろうとした。
その時!?
「・・・まて!コボルト達が起き始めた」
俺はカインを制止させて、鷹の目を発動させて洞窟の入口あたりを注視する。
「うぉーん」
一声、洞窟の中から鳴き声が聞こえたかと思った瞬間、40匹のコボルト達は一斉に動き出し、4列縦隊に綺麗に並んだ。
そして、洞窟から奴が現れた。
「うぉぉおおぉん」
「「うおおおん」」
ひと際大きな赤毛のハイコボルトが、洞窟から出てきた。
その後には、ハイコボルトと思われる個体が4匹、付き従うかのように出てくる。
40匹のコボルト達の列の先頭に、4匹のハイコボルトがつくと、一斉に片膝をついて頭を垂れる。
赤毛のハイコボルトは、3匹を指差すと急に走り始めた。
コボルト達はそれに付き従うように、3列に綺麗に並んで駆け足でついていく。
俺達のいる位置に対して丁度反対側に向かって30匹+4匹のコボルトとハイコボルトが駆け足で去っていった。
残されたコボルト達の中でハイコボルトと3匹のコボルトが洞窟の中に消える。
「どうやら、あの赤毛の一際大きいハイコボルトがクイーンなのだろうな」
「そうだね。でも思ったより数が少ない感じがするね」
俺は横にいるカインと今見た光景の確認をする。
「まあ、馬車襲撃で5匹と、さっき倒した13匹がいるし、まだ洞窟の中には何がいるかわからんが・・・」
「どうするの?」
「チャンスと見るべきだろうな。洞窟の中にどのくらいいるかが不安だが、村長の話では確認されているのは5匹のハイコボルトという事だから、さっき1匹倒して、残りは今洞窟の中には1匹だ。ここで1匹倒せば、かなり今後の戦いが楽になるだろう」
「問題は洞窟の中かぁ・・・」
「大丈夫だ。こういう時の召喚魔法だ」
「そっか!偵察だね」
そういうと俺はすぐさま召喚魔法でねずみを出し、見張りをしているコボルトの目をかい潜りながら、洞窟内部に潜入した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
洞窟内部はところどころにたいまつが掲げられていて、薄暗い感じになっていた。
コボルトに見つからないように横壁や天井をつたいながら、どんどん奥に入っていく。
内部は比較的広く、一本道になっている。
入口から少し進むと、少し大きな空間に出た。
そこには、旅人や商人小隊の襲撃で得たであろう食料品や武器などが無造作に積まれていた。
その場所を過ぎて、更に奥に進むとちょっと騒がしい音が聞こえてきた。
「キュィーー」
「ゥーーー」
「クーン」
一際大きな空洞に出たかと思えば、そこには小さな子供のコボルトが50匹前後いて、ハイコボルトと4匹のコボルトがその世話をしていた。
その中に、明らかに他の子供のコボルトより体の作りが大きい個体が4匹いて、更にその中で赤毛タイプが2匹確認出来た。
ザシュ
急に音がした瞬間、視界が暗転し元に戻った。
どうやら、コボルトに召喚ねずみが攻撃されたようだ。
「みんな、集まってくれ。洞窟の内部の様子を話す」
俺は、洞窟内部で見た様子を詳細に伝えた。
「どうする?」
「そりゃ、今がチャンスでしょう。クイーン以下3匹のハイコボルトがいないんですから」
ムーイは速攻で叩くべきだと主張する。
「でも、叩いているうちに、クイーンたちが戻ってきたらどうするの?危険よ」
キュィが間髪いれず反論する。
村の猟師は何も言わず、ただ黙って様子を見ている。
「どうするべきか?俺としては絶好のチャンスなので叩くべきだと思う。しかし、俺達のパーティのリーダーはカインだ。カインに最終的には決めてもらおう」
俺がそういうとみんなカインに視線が集まる。
カインは腕を組み、その場で胡坐をかいて目をつぶって考える。
「うーん、・・・決めた!今はチャンスだ。叩こう。これを逃すと次は無いかもしれない」
カインの一言で次なる行動が決まった。




