第51話 珍獣? その4
俺達は村長との食事を終えて、部屋に戻った。
「みんな、ちょっと話がある」
「なんだ、兄ちゃん?」
俺は少し厳しい顔をしてカイン達を前にして話し始める。
「さっきの村長の話は聞いていたか?」
「ああ、ハイコボルトが最低5体いるそうだね」
カインは神妙な面持ちで答える。
どうやらすこし問題があることは理解しているようだ。
「ああ、それに、更にコボルトクイーンがいるかもしれない」
「コボルトクイーンですか?」
キュィが?の顔で俺を見る。
俺は、魔物図鑑を開いてコボルトクイーンのページを開く。
そのページには詳細なコボルトクイーンの情報が載っている。
そして、ページの最後に冒険者の討伐ランクはDランクであると書かれている。
つまり、この本によると、コボルトがFランク、ハイコボルトがEランク、コボルトクイーンがDランクという事だ。
ただ、これはあくまで単体での難易度であり、単純な指標でしかないだろう。
俺はそのことを皆につげて、厳しい表情で更に話をする。
「この本によると場合によっては誰か死ぬかもしれん。今回は一度ギルドに戻って報告したほうがいいじゃないか?」
「なにもはっきりしたことがわかっていないこの状況では、それは出来ない」
俺が言い終わると同時に、カインが即答した。
「おまえ、状況わかっているのか?」
「・・・わかってねぇのは兄ちゃんだ」
「なに!」
「冒険者は死ぬことも仕事の1つなんだ。だからこそ俺達は高い報酬と名誉を得ることが出来るんだ」
「なにをいってる。むやみに突っ走ってもただの無駄死にだぞ」
俺が強く言い放つと、ムーイが反論する。
「・・・僕達はギルドに登録した時から、死ぬことは覚悟していますよ」
「そうです。それに、私達のパーティで仲間の死は初めてじゃあありません」
俺はキュィの言葉を聞いて愕然とした。
普段そのような様子は見受けられなかったが、すでにカイン達のパーティでは死者が出ているという事のようだ。
三人はうつむいて、黙ってしまった。
「しかし、無駄に死ぬことは無いだろう?」
「無駄じゃあない。もし俺達がやられれば、それだけ脅威であることがわかる。そうすれば領主様の追加報酬が加わり、より高いランクの冒険者が派遣されることになるんだ。そしてその結果、脅威をより早く取り除くことが出来る」
「じゃぁ、そのために死ぬのか?」
「もちろん、死ぬことが目的じゃあ無いよ。それは1つの結果でしかない。それに兄ちゃんはちょっと強い敵がいるかも知れないと思ったら毎回逃げるのか?それなら、こんな常に危ない橋を渡る仕事はやめた方がいい」
カインはうつむいたまま、ボソッと話し、更に続ける。
「俺の生まれた村でも同じようなことが何度もあった。最初にランクの低い冒険者が派遣されて、そして最悪の場合、死ぬことでギルドは魔物の脅威をはかるんだ。そうやって何度も村は冒険者に守ってもらったんだ」
「そんな、非効率な・・・」
「兄ちゃんは頭が良いし、強いからそう思うかもしれない。でも、多くの場合、頭の悪い村のはみ出し者が一攫千金を狙ってなるのが冒険者だよ。そういう俺もその1人だ。そして五体満足でAランクまで生き残ることが出来る奴らはごく一部だ。あとは皆そいつらのために、死ぬようなもんだよ」
「そんなの、単なる使い捨てじゃないか!」
俺は言葉を、はき捨てる。
それを聞いたカインは顔を上げて、真っ直ぐな目で、俺の目を見て言う。
「それは違う。誰にでもチャンスはあるんだ。生き残れるかは能力と運にかかっている。だからみんな死に物狂いでがんばるんだ」
「・・・わかった。もうこの話はやめよう」
「そうだね。兄ちゃんがどうしても今回の討伐が嫌なら抜けてもいいよ。兄ちゃんは臨時なんだし」
「見損なうなよ!俺にも最低限のプライドはある。一度引き受けたからには最後までやるさ」
「・・・ありがとう」
カインは小さい声で俺に感謝の言葉を述べた。
「ただ、カイン、お前はリーダーなんだから今後からは情報収集はしっかりしろ。今回村長の話を聞いていなかったら、場合によっては即全滅だからな」
「わかった。ごめんよ。肝に銘じておくよ」
カインは素直に俺のいう事を聞いたようだった。
取り敢えず、夜も更けてきたので4人は寝ることにした。
◇◆◇◆◇◆◇
朝になり、討伐初日が始まった。
まずは村長と一緒に朝食を取った後、コボルトたちの巣くっている場所を確認することにした。
村長の手はずで、村の猟師の1人に巣があるであろう場所の近くまで案内してもらうことになった。
「じゃあ案内お願いします。今日は偵察なんで、場所と規模を確認します」
カインがリーダーらしく皆に言うと、4人と案内人の1人の合計5人で森の中に入る。
「村からその巣まではどのくらいですか?」
俺は猟師に聞くと、
「えっとだな、今からだと昼すこし過ぎたころになるだべ」
(片道4時間くらいか)
俺は地形を記録するために羊皮紙に大雑把な地形を描いていく。
出発の少し前に召喚魔法ですずめを出して、村周辺の地形は上空から確認してマッピングを終えていた。
キュィはその作業の様子をじーっと見ていて話しかけてきた。
「ヨージさんすごいですね。召喚魔法も使えるんですね」
キュィは尊敬のまなざしで俺を見ている。
「まあ、まだ小動物系しか出せないけどな。偵察にはつかえるよ。巣の近くに着いたら、離れた位置から状況を確認することにしよう」
俺は偵察という事を強調する意味を込めてみんなに言い聞かせた。
猟師の説明により方向と距離がわかったので、どのあたりに巣があるか推測はできる。
一応猟師に手描きの即席地図を見せて確認すると、どうやら森の真ん中辺りにある小さな山の麓に巣があるようだ。
大まかな場所がわかったので、5人はずんずんと森の奥へ奥へと入っていった。
猟師は一番先頭を進み、その後にキュィが続き前方に常に意識を集中している。
彼女は犬の獣人なので比較的に耳と鼻が利く。
正確性はあまり無いが、30m先の状況をある程度察知することが出来る。
このような視界が木々で遮られる森において一番厄介なのが不意打ちだ。
俺達はキュィの集中力が途切れないように、定期的に休みながら進むことになった。
「止まって!」
キュィが急に猟師の服を引張って動きを止める。
「どうした?」
俺がすぐさまキュィに聞く。
「何かいます。数は・・・10匹ぐらい」
「わかった。召喚でねずみを先行させる」
そういうと、俺はすぐに召喚魔法を発動さると、前方に小さな魔法陣が浮かびあがり、その魔法陣の中からねずみが飛び出てくる。
召喚したねずみと意識を一体化させて前方を探る。
ちょうど30m先に行ったところで、12匹のコボルト達が寝ていた。
奴らは見張りも立てず、のんきに寝ている。
一匹だけ毛皮の敷物の上に大の字にして豪快に寝ている奴がいる。
こいつだけサイズと毛並みが異なることからハイコボルトだと思われる。
俺は召喚魔法をやめて皆にそのことを説明した。
「1つ試したいことがあるんだけど・・・」
カインは俺の偵察の話を聞いて、あるひとつの作戦を提案した。




