第47話 姫さま考える その6
シャルロッテとパムは暗い部屋の中で後ろでに縛られていた。
どうやら物置のような部屋に寝転がされているようだ。
「う~ん」
シャルロッテが起きて周りを見渡す。横にはパムがすやすやと寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている。
「パム、パム、起きなさない」
「ん~ん、もう食べられませんでマフ」
「何、寝ぼけているの!ほら、起きて」
「ん、ん、あれ、ここはどこマフ。・・・シャルロッテ様、大丈夫でマフか?」
パムはキョロキョロあたりを見回したあと、シャルロッテを見る。
そして周囲に危険が無いことを理解する。
「ええ、どうも2人とも怪我は無いようね。さて、どうしましょうか?」
「ああ、こんなの大丈夫でマフ。」
そう言うと、パムは後ろでされた縄をいとも簡単にはずした。
「えっ!?どうやったの?」
「えっへん、こういう仕掛けでマフ」
パムは、シャルロッテに両手を見せる。
シャキーン
指の先から鋭い爪が5本飛び出てきた。
「これで、縄を切ったでマフ。シャルロッテ様もすぐに縄を切るでマフ」
「ええ、お願い!」
パムはシャルロッテの縄を切って、自由にする。
その後、2人は部屋の扉の近くに行く。
扉を少し開いて、2人して外の様子を見る。
そこにはスリープの魔法をかけた女魔法使いと、なんと警備隊長の姿が見える。
「・・・・・・・・やりすぎよ。なんで斬る必要があったの!」
「しょうがないじゃないか!こっちもいろいろ大変なんだ。お前が回復魔法をかけて命に別状無いんだからいいだろ」
「そういう問題じゃないわ。私が後であいつらにアレコレ言われるんだから。割り増し料金は頂くわよ」
「そんなこと俺に言われても困る。バスター様に言え!」
どうやら誘拐犯内で何かもめているようだ。
シャルロッテはパムを見て驚きの表情をする。
「・・・あれ、警備隊長よね」
「そうでマフね」
「・・・バスターって言ったわね」
「ええ、いいましたでマフね」
「まさか、身内が犯人だったとは・・・」
シャルロッテががっくりした表情でうなだれているところで、シャルロッテの後ろでカタンという音がした。
「なんだ!」
警備隊長はその音に気づき扉のほうに歩いてくる。
シャルロッテは近くにあった木の棒を持ち、意を決して扉を開ける。
「あっ、シャルロッテ様!」
警備隊長はびっくりした表情で歩みを止める。
「これはどういう事ですか!貴方は恩を仇で返すという事ですか!」
「・・・バレちゃぁしょうがない」
「王族を警備隊長が誘拐するなど、恥を知りなさい!恥を」
「はぁ~、何もわかっていないようで。もう少し、ご自身の立場を理解したほうがいいのでは?」
「先日のパレードの件もあなた達の仕業ですか!」
シャルロッテは強く叱責するように警備隊長に問いただす。
「あぁ~、あれは違います。貴方は知らないでしょうが、王宮内には王家に力を取り戻してもらっては困る方がたくさんいるという事ですよ。王家を蔑ろにする輩が大勢いるという事ですよ。」
「なっ!?」
(私は、知らずのうちに敵がいっぱいいるようですわね。はぁ~)
シャルロッテは内心はがっくりした感じであったが、それは表情に出さなかった。
「投降しなさい!そうすれば罪を多少は減刑してあげますよ。」
シャルロッテは最後の慈悲の言葉を警備隊長に言う。
「・・・あっはっは、この状況で何をアホなことを。状況がまだわかっていないようですね。小熊と小娘で何が出来るというのです。大人しくするのはそちらです。いつものように大人しく誘拐されていなさい。おい、またスリープをかけて静かにさせろ!」
警備隊長は女魔法使いに怒鳴る。
「わかったわよ。ちょっと待ちなさい」
そう言うと、女魔法使いは魔法の杖をかかげて詠唱を始める。
その瞬間、シュッという音がしたかと思えば、茶色い塊が一瞬で女魔法使いの足元に移動する。
その塊は女魔法使いの足元に来ると、ぴょーんと女の顔の高さまで飛び上がる。
バシュ、バシュ、ビュー
「ぎぃゃぁー」
大きな叫び声とともに女魔法使いの喉から大量の血液が噴出し、そのまま崩れ落ちる。
そしてその血溜まりの前に、血で真っ赤に染まったパムがニヤリと笑い、両手の爪をシャキーンと出して警備隊長の方を見ていた。
「シャルロッテ様、援護魔法をお願いしマフ」
パムはそう言うと、四足になり壁際まで一瞬で移動し、壁にかけてあった手斧2本を手に取った。
警備隊長は一瞬でその状況を判断し、剣を抜き盾を構える。
「ウィンドラァーッシュ」
シャルロッテが今使える一番威力のある魔法を唱える。
その瞬間、小さな風の刃が無数に発生し警備隊長に襲い掛かる。
バン、バ、バ、プシュ、バ、バ、バ、プシュ、バン
警備隊長は無数の風の刃を盾で上手く受け止めるが、いくつかの刃が体を切り裂く。
その間にパムは手斧を持ったまま器用に四足で移動し、シャルロッテと警備隊長の間に入ると両手に斧を持って構える。
じりじりとパムが警備隊長との距離をつめる。
すると、いきなり警備隊長は剣をパムに投げ捨てて扉のほうに走り出した。
ヒュン、ヒュン
パムは逃げ出した警備隊長の背中にめがけて両手の手斧を投げつける。
ドス、ドス
2本の手斧は警備隊長の後ろ頭と背中に命中し、警備隊長は扉にもたれかかるようにズルズルと崩れ落ちた。
「ふぅ~、何とか助かったでマフ。さあ、シャルロッテ様、早くここから逃げましょうマフ」
そういうと、パムはシャルロッテの手を引いて外に出ようとするが、シャルロッテはその手を振りほどく。
「ちょっと待ちなさい!さっきの動きは何?どういう事」
2人の間に沈黙の状態が続く。
「・・・ごめんなさいでマフ。実は僕は国王陛下直属の特殊兵でマフ。陛下の命で、最近まではステファニー様の護衛をやっていたでマフ」
「えっ!?お母様の・・・」
「そうでマフ。それで、シャルロッテ様の身を案じたステファニー様が、国王陛下へ直接嘆願して僕の派遣が実現したでマフ」
「え、でも、10歳だって・・・」
「それ完全に嘘でマフ(テヘぺろ)。よく間違われるんでマフが、僕は子熊族という獣人で、これでもれっきとした成人でマフ。ちなみに成人した子供も3人いるでマフ」
「え゛ぇぇぇぇぇ!? ・・・うそ!?」
「この見た目が僕の最大の武器なのでマフ。騙してごめんなさいでマフ」
パムはペコりと頭を下げた。
「・・・もういいわ。パレードの件といい、今回の件といい、命の恩人ですからね。でももう隠し事は無いでしょうね!」
「それは無いでマフ。バスターが首謀者であるならば、取り敢えず、ここを出てステファニー様のところに身を隠すほうがいいでマフ。そこなら僕の直属の部下達もいるので安心でマフ」
「・・・わかりました。でもちょっと待って!」
そういうと、シャルロッテは顔がズタズタで喉を切り裂かれてあっけなく死んだ魔法使いの女の服を脱がせると、自身がそれを着る。
代わりに自分の服をその女に着せて、指輪とネックレスをつける。
「どうするでマフか?」
「この子は、私と背格好がよく似ているから、身代わりにします。そして、このままこの建物を燃やします。そうすれば、上手く騙せるかもしれません」
「・・・王宮には戻らないでマフか?」
パムは怪訝な顔をしてシャルロッテを見る。
「・・・そんなに簡単に騙せるとは思いませんが、取り敢えずは時間稼ぎにはなるでしょう」
「わかったでマフ。シャルロッテ様がそう言うなら、僕はその命令に従いマフ」
「よろしい」
そういうと、シャルロッテは女魔法使いの杖をかかげ、ファイヤーウォールの呪文を唱える。
大きな火柱が5本3mほどの高さまで伸び、建物はあっという間に炎に包まれる。
2人は急いでその建物から脱出する。
「では、こちらでマフ」
そういうと、2人は轟々と燃えさかる建物を背にして暗闇の中を走り始めた。




