第43話 姫さま考える その2
バスター子爵の視察予定の話から2週間が経った。
その間、シャルロッテはいろいろな手を使ってお見合い回避の行動を取った。
まずは、仮病を使って体調がすぐれないとしたが、それはすぐに宮廷医務官にばれた。
バスターに直接会いに行って遠まわしに断ろうとしたが多忙を理由に会ってもらえなかった。
最後の手段として、直接会うことが難しい父に手紙を書いてみたが、いまだに返事が無い。
「はぁ~、八方ふさがりですわ。」
シャルロッテは今日も自室のテーブルに頬杖をついている。
すでにあきらめの境地に入りつつある。
(こうなったら、王宮から逃げ出しますか・・・。)
王宮から逃げる方法を考えてみる。
①正門から馬鹿正直に外に出ようとする → ×
(無理ですわ。絶対に止められます。)
②夜中にこっそり縄梯子で窓から外に出て・・・ → ×
(王宮の外には衛兵として犬族の獣人が配備されていますわ。不審者がいればすぐに見つかるでしょうねぇ。)
③誰かにお金を渡して逃げる手引きをしてもらう。 → ×
(王族を誘拐したとされて即縛り首ですわね。誰も手助けなんかしてくれないですわ。そもそもそんな伝手ないですし・・・。)
シャルロッテは頭をかきむしるようにして、テーブルに顔を突っ伏して両手をバンザイして広げる。
「はぁ~、私、頭が悪いのでたいした考えが思い浮かびませんわ。」
シャルロッテは尚も独り言をブツブツ言っている。
もともとメイドや教育係の先生くらいしか話す相手がいないので、日常的に独り言と妄想が激しい傾向にある。
初めて見るものは引きまくるが、専属のメイドはもう慣れている様子だ。
「シャルロッテ様、もうあきらめなさってはいかがですか?」
旅支度をしているメイドが手を止めてシャルロッテに話しかけてきた。
「何を言うのです!私の一生が決まってしまうのですよ。あなたは直接関係ないから良いでしょうが・・・。」
シャルロッテはぷんぷんとした様子でメイドに言い放つ。
「良いお相手ではないですか。ガルム侯爵様は上位10貴族に数えられるお方。広大な領地と財をお持ちの方で、その跡目を継がれるアレン様は有望でしょう。」
「はぁ~、あなたはお会いしたことが無いからいえるのです。私にはあの方は絶対無理です。」
メイドはもう何を言ってもダメだこりゃという表情で進言をやめる。
そして、話をやめてシャルロッテの視察先の仕度の作業に戻る。
予定では明日には王宮を出発し、3日かけてケルムの街に到着することになっている。
トントン。
「はい、どちら様でしょうか。」
「バスターです。お時間よろしいでしょうか?」
「ちょっと、お待ちください。」
メイドが旅支度の作業を切り上げて荷物が目に入らないように片付ける。
「どうぞ、お入りください。」
「失礼します。」
バスターは部屋に入り、そのままシャルロッテが座るテーブルに着く。
そして、メイドがシャルロッテとバスターに紅茶を出す。
「今日はどのようなご用件でしょうか?」
(先日会いに行った際には会ってくれなかったくせに!)
シャルロッテは不満の表情がわかるようにバスターに話すが、まったく意に介さない様子で、
「アレン様とのお見合いの件で正式に準備が整いました。お見合いは、ケルムに到着してから2日後になると思います。あと、毎回の事ではありますが、ケルム到着後はパレードを予定しております。その後、周辺の貴族様をお呼びして晩餐会という流れです。」
「お見合い以外はいつもの流れですわね。」
「ええ、ただ今回はある方からのご提案で、シャルロッテ様に同行する者がおります。この視察パレードにおきましてはシャルロッテ様のおそばに同席することになります。」
「新しい、メイドですか?」
「いえ、メイドではありません。執事をかねたマスコットです。」
「えっ、マスコット?」
「今つれておりますので、部屋に入れてもよろしいでしょうか?」
「・・・えぇ、かまいませんが。」
「ありがとうございます。おい、入ってまいれ。」
そう言うと部屋の扉が開き、ぬいぐるみのようなモフモフな小さなクマさんが、執事の服を着てちょこんと立っていた。




