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第42話 姫さま考える その1

 時はさかのぼり、3ヶ月ほど前のヨージがダンジョンに向かう直前。

 場所は、ムスファ王宮の一室。

 あまり、王女のものとは思えない狭い部屋に女の子がテーブルに頬杖をついてため息をついている。


 「はぁ~。どういたしましょうか?」


 大きなため息と心の声が独り言のように出ている。

 質素な部屋の装飾に利便性重視の家具が置いてある。

 彼女の名前はシャルロッテ。

 ムスファ新王国の第11王女その人である。


 「アレスの街のお仕事が終わって、やっと一段落つけると思ったのに・・・。」


 彼女の前には一枚の手紙が広がっている。


 (わたくし、嫌ですわ!あんなデブのガマがえるようなおじさんの元に嫁ぐのは!)


 彼女の元にはガルム侯爵の子息アレン様とのお見合い話が来ていた。

 一度王室のパーティで会ったことがある。

 げひげひと変な笑い方をする、30代半ばの太り気味のちょっと気持ち悪い感じの人だ。

 まだ、日程などは決まってはいないが、王室が選定したお婿さん候補ということだ。


 (ついに、来るときがきたのでしょうか?想像した通りになってきました。)


 「はぁ~。」


 彼女はこれまで王室で頑張って生きてきた。

 部屋が質素で着飾った感じが無いのには理由がある。

 王女ではあるが、彼女の地位は王室内では低い。

 周りからは、平民出、妾の子、成り上がり、などと陰口を叩くものが大勢いる。

 そういった批判を子供のころから受けてきた。

 その結果、極力王室内で目立たないようにしてきた。

 部屋は他の兄弟姉妹より2周り小さく、室内の装飾も王女というよりちょっと良いとこの子程度のかなり質素なものである。

 家具類も必要最低限の利便性を重視したものしかない。

 給仕のメイドの数もワザと少なくした。

 そのおかげで着替えや身の周りのことはほとんど自分で行えるようになった。

 これもそれも、シャルロッテ自身が敵を極力作らないようにあれこれ考えた結果である。


 シャルロッテは、少し考えてペンと羊皮紙を取り出してなにやら手紙を書き始めた。


◇◆◇◆◇


 拝啓 

 いかがお過ごしでしょうか?

 そちらはもう、秋の空ですね。

 お久しぶりです。お母様。


 最近悪い事と良い事が1つずつありました。

 悪いことは、またもや誘拐されました。

 アレスの街の視察に行った際に急に警備が薄くなったと思った瞬間、3人組にさらわれました。

 ただ今回も、おとなしくしていれば、とりあえず助かりそうでした。

 そこで、良い事がおきました。

 1人の冒険者風のかっこいい男性が、さらわれて移動中の私を助けてくださいました。

 更に、そのお方は名前も名乗らず、恩賞も受けずその場で立ち去ったのです!!

 はぁ、なんて素敵な方でしょう。

 今、その方をお探ししているのですが一向に見つからない状況です。


 いろいろ最近、悩ましいところです。 


 敬具

 シャルロッテ


◇◆◇◆◇


 ちょっと、頭の悪い感じの手紙の内容だが、シャルロッテは近況を王室の外で生活している母親に定期的に書いて送っている。

 シャルロッテの母親は王宮に仕えていたメイドであった。

 平民ではあったがなかなかの美人で、魔法の才のある利発な娘であった。

 王はそれを見て気に入り、お手つきとなった。

 すぐに、身ごもりシャルロッテが生まれた。

 しかし、王室はねたみそねみが充満しているところである。

 平民出ということもあり、あちこちからいびられてシャルロッテが7歳のときに母親は体調を壊してしまった。

 王はそれを見かねて王都から少し離れた場所の街に屋敷を用意し、病気療養という名目で母親だけ王宮を離れて生活させることにした。


 シャルロッテはそれから1人で王宮で頑張って生きてきたのである。

 楽しみは定期的に送る母との手紙のやり取りと、王室から頂いている恩給を母に仕送りするくらいであった。

 王室ではシャルロッテは基本目立たないように生活しているため、お金をほとんど必要としない。

 手元にあっても邪魔なのですべて母親に送金しているのだ。

 シャルロッテにあるのは、ペンと羊皮紙、魔法を勉強するための書籍と魔法の杖くらいのものである。

 

 シャルロッテが手紙を書き終え周りを片付けているところに、


 トントン。


 「はい、どちら様ですか?」


 「バスターです。お時間よろしいでしょうか?」


 「ちょっとお待ちください。・・・どうぞ、お入りください。」


 部屋に入ってきたのは、頭の髪の毛が少し薄い中年太りしためがねをかけた男性だった。


 「バスター様、どのようなご用件でしょう。」


 バスターと呼ばれた男性は、現在王宮が行っている王室のためのイメージ戦略のボスである子爵様だ。

 シャルロッテが王宮で日陰の人生を歩んでいたときに、外に連れ出してくれたある意味ありがたい人である。


 「新しい、視察先が決まりました。次の街は王都から近いケルムでございます。」


 「今回は近いですね。」


 「ええ、最近あちこち遠征していてお疲れでしょうから、今回は近場といたしました。」


 「ありがとうございます。」


 「いえいえ、それより先日お渡し致しました、お見合いの内容は見ていただけましたでしょうか?」


 「えっ、ええ、あの~、・・・私はまだ結婚は早いのではないでしょうか?まだ、あちこち視察していない場所もあることですし・・・。」


 「う~ん、ガルム侯爵様のご子息アレン様は次期当主。家柄的にも申し分なく、お似合いだと思われるですが?」


 「えっ、えええ、アレン様は、す、素晴らしい方だと伺っておりますが、王女と言ってもなにぶん私は世間知らずですので、まだ早いのではないかと思ったのです。」


 「そうですか・・・。まあ、今度の視察先のケルムはガルム様の領地から近いですのでそこで一度お会いするというのはどうですか?それからお決めになればよろしいのでは?」


 (会ったら、お終いではありませんか!!!)


 シャルロッテはバスターの言葉に内心イラッとするが、顔には出さず話を続ける。


 「・・・ええ、まあ、そうですわね。」


 「では、その方向でお話を進めておきますのでよろしくお願いします。」


 (はぁ~。どういたしましょう。)


 バスターが話を終えるとすぐに部屋から出て行く。

 その出て行く様子を見送った後、シャルロッテは先ほどの手紙を再度取り出し追記する。


◇◆◇◆◇


 追伸

 ついにその日が来ました。

 次の視察先のケルムで、ガルム侯爵様のご子息であるアレン様とお見合いとなりました。


◇◆◇◆◇


 シャルロッテは手紙を書き終えると、メイドを呼んで母に届けるように命じるのであった。

 

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