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第41話 辞書作り

 次の日から久々の勉強が始まった。

 初日はカインがやってきた。

 

 「兄ちゃん、今日からみっちり読み書きを教えてやるぜ。」


 「おう、よろしくお願いします。」


 「へへ、なんか照れるな。」


 「先生だからな、その辺はある程度きっちりしないとな。」


 「よし、でははじめるよ。」


 それから、朝9時ごろから昼の3時ごろまで書籍の読み聞かせからはじめた。

 本の内容は冒険者が魔人にさらわれたお姫様を助け出すというありふれた内容だ。

 文字はアルファベットのように単語がスペースで区切られ、子音が27あり母音が5つである。

 漢字のような表意文字は無く、すべて全32文字を使った単語からなる表音文字で出来ている。

 名詞には男性名詞と女性名詞と中性名詞があり、更に単数形と複数形に分かれている。

 動詞も主語によって形が異なり、更に未来、現在、過去、各種完了形と変化形式は英語に近い。

 正直、俺自身はそのあたりがごちゃごちゃでかなり間違って使っていることがわかった。

 よく、俺の言葉を聞いて変な顔をする人がいたが、そのあたりの違いだったのだろう。

 ただ、意味は通じるので意外にスルーしてくれていたみたいだ。

 文字の並びは日本語の語順と同じであるが、見た目の感じは英語に近い。

 パッと見はミミズがのたくったようにも見える。

 また、文語体と口語体の違いがあり、話言葉をそのまま書き留めるという感じではない。

 本の内容については1日でわかったが、正直細かくやり始めるとかなり時間がかかる。

 取り敢えず、1つ1つ単語を抜き出して読み方や意味や活用変化や別の文例などを日本語を使いながら書き留めていく。

 カイン達、先生がいる間は1つ1つの文字を聞いて書き留め、そのあとは書き留めた内容を文字索引順にまとめて辞書形式にしていく。

 おかげで大量の羊皮紙を使うことになった。

 この羊皮紙がまた結構高い。

 一番安いものを使っているが、A4サイズに切りそろえられたものが一枚30ゼニーもする。

 本1冊が高いのも素材の値段が結構するからだと思われる。

 単語の暗記は取り敢えずストップし、5冊の文字に対する辞書作りに専念した。

 結局5冊終えるのに3ヶ月かかった。

 


 5冊すべて辞書化できたので借りた本を返しに本屋に来た。


 「ほぅ、もういいのか?」

 

 おやじはえらく早いなという顔をしている。

 俺は3ヶ月分の借り本の代金を払いながら、


 「まだ、全然暗記できていませんが、辞書を作って後から調べられるようにしているので。」


 「ほぅ、辞書とはまた面倒なことをしているな。」


 「まあ、後から使えるようにしたほうがいろいろ便利ですから。」


 「お前がいいなら好きにするがいい。次のレベルの本はいるか?」

 

 「お願いします。」


 「よし、ちょっと待ってろ。」


 俺は本屋のおやじが俺の次のレベルにあった本を探し始めた。

 その間、俺は本屋のなかで何か面白そうなものは無いか1冊1冊手に取りパラパラめくって中を見る。

 

 (う~ん、よくわからん本ばかりだな。)


 なかに挿絵はあるものが結構あり、勉強した知識の断片から推測するに個人の伝記物が多いみたいだ。

 

 (使えねぇ。こんなの誰が買うんだ?)


 ほとんど趣味以外なにものでもないようなものばかり並んでいる。

 そのなかで一冊分厚い大きな本を手に取って中身をめくってみる。

 

 (おっ、これは!?)


 本の中は手書きの絵が大量に描いてあり、左右に注釈らしきものが書き込まれている。


 そして、なんとその絵はすべて魔物である。


 更に、体の解体図もある。

 

 (おおおおおお、これは当たりだ!これ絶対使えるぞ。)


 俺は本を持つ手が感動で震えた。

 パラパラめくるとバッファローの絵があり、その解体図は俺の知識のものと寸分のくるいも無かった。


 (こ、これ、絶対ほしい!)


 よく見ると、本が置いてあった場所には同じデザインの本が後3冊あり、番号が振られている。

 残念ながら、数字は飛び飛びでそろっているわけではない。

 

 (ええっと、これが1で、あと2、11、37)


 1つ1つ手に取って中身を見る。

 どうやらシリーズ物になっていて、今あるのは37巻のようだ。

 作者はエルド・ミラーと書かれている。

 

 「いや、マジか!この人すげぇ。」


 俺は歓喜の声が出ていた。


 「どうした?」


 おやじは急に俺が声を上げて叫んだので、びっくりして俺を見る。


 「あっ、すみません。」


 「なんだ。」


 「あの、この本のシリーズは今あるのはこれだけですか?」


 「ん、どれ、ああ、エルド子爵様の魔物本か。今はそれだけだ。なんだ、ほしいのか?」


 「ええ、ぜひ!!」

 

 「珍しいやつだな。そういった本は完全に趣味の世界で、ほとんど売れないんだ。安くして売ってやるぞ。」

 

 (なんと、アホな!こんな使える本が埋もれてるなんて!)

 俺は心のなかで鋭い突っ込みを入れつつ、

 

 「おお、ありがとうございます。い、いくらですか。」


 「4冊で120550ゼニーだ。」

 

 「うっ!? 高い。しかし、か、買います。」

  

 「本気か!借りるんじゃねぇのか?」


 「ええ、大丈夫です。買います。出来れば、他の巻もあればほしいんですが。探せますか?」


 「・・ん、まあ、伝手を使って調べることはできるが、結構時間がかかる。それにもう無いかもしれん。」


 「無いものは仕方ないですが、時間はかかってかまわないので探してください。お願いします。」


 「おぉおぅ、わかった、わかった。やってみよう。」


 おやじは俺のらんらんとした目を見てちょっと引き気味だったが、探すことを了承してくれた。

 俺は取られないようにすぐにギルドに行って金を下ろして、その日のうちに4冊すべて購入し意気揚々と上機嫌で宿に戻った。 

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