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第37話 おいてけぼり その3

 (う~ん、どうするべきか?)


 俺はダンジョン内の地図を見ながら考える。

 地図には少し先の場所に安全地帯が表記されている。


 (やはり、このままここにいてもゲイル達は戻ってきそうも無いな。)


 俺はそう判断すると召喚魔法にボーナススキル値を+15振って、すぐにねずみを召喚した。

 大とかげに遭遇すると今の自分の力では危ないので、安全地帯までの道をねずみを使って偵察することにした。

 幸いMPはまだ十分にある。

 俺は壁づたいに身を隠しながら、ねずみを先行させる。

 やはり10階層は大とかげがダンジョン内を巡回するかのようにいる。

 うまく、やりすごしながら慎重に進むとワンルームサイズの空間があった。

 

 (よし、着いた!)


 その中は明らかに雰囲気が異なり、結界が張られていることがわかる。

 更にありがたいことに、壁からは湧き水が出ている。

 緊張と不安で一杯だったが、取り敢えず一段落だ。

 俺は、湧き水の安全性を確かめるため少量手にとって舐めてみる。

 変な味はまったくせず、完全にミネラルウォーターだ。

 すぐに残り少なくなった水筒に水を確保する。

 更に元気を出すために、携帯食料をだして食べる。

 そのまま休憩として1時間がたったが、周囲では何もおきない。

 その間、魔物は一切この場所には近づいてはこなかった。

 休憩中いろいろ思案したが、取り敢えずこの場所から地図上では目的の薬草まですぐそこなのでねずみを再度召喚して偵察に出す。

 大とかげはあちこちにいるがタイミングさえ間違えなければ、薬草を取ってダッシュでこの部屋に戻れば大丈夫だ。

 俺は壁にへばりつきながら大とかげに隠れるように薬草が生えている場所に着いた。

 10株の薬草が生えており、今後のこともあり5株の薬草を回収し5株は次の回収の人のためと増殖のために残した。


 「ぎぃぃぃ。」


 後ろから叫び声が聞こえ振り向くと5m先に大とかげがいて、走って近づいてくる。

 それをみるやいなや、俺はスキルボーナス値を素早さに+21すべて振って、全力で駆け出す。

 ダッシュで逃げる俺の後ろをものすごい速さで大とかげが近づいてくる。

 どんどん近づいてくる。

 ジャンプ。

 頭からスライディングして先ほどの安全地帯の場所に転げるように入る。


 バァシュン。


 大とかげが入ろうとすると、入り口には電流のような網が出現し、大とかげが侵入することを妨害する。

 追っかけてきた大とかげは鼻先を焦がし押し戻される。

 そいつは部屋の入り口で俺を見ながらうろうろしていたが、やがてあきらめていなくなった。


 (ふぅ~助かった。)


 大とかげが入ってこれない事とあきらめたことで、俺は安堵した。

 

 (さて、どうするか?)


 俺は薬草を取って部屋に戻ってくる間にゲイル達が安全地帯に来るのではないかと淡い期待をしていたが、結局やつらは部屋にはいなかった。

 完全に俺を囮にして4人だけで逃げたのは確定した。


 (もう、大とかげ達に食われたと思っているだろう。くそ!)


 これまでにも、あれこれ騙されて痛い目を見たのに自分の甘さに腹が立つ。

 Cランクパーティでもギリギリな10階層をFランクが1人。

 

 (俺じゃなかったらもう死んでいるのは確実だな。)


 苛立ちからあきらめの気持ちになってくる。

 

 (だめだ!まだ俺は五体満足で生きている。7階層まで抜けれれば俺一人でも何とかなる。)


 そう心を奮い立たせるようにしてマイナスの考えを振り払う。

 それからMPのフィールド回復のために3時間その場所で休憩をして、完全にMPは回復した。

 その間に携帯食を再度食べて体力も万全な状態にした。


 俺は覚悟を決めた。


 この部屋に入った時からわかっていたことだが、大とかげ1匹だと俺一人でもなんとかなる。

 しかし、戦闘中の音と血のにおいで近場にいる大とかげが近づいて、2匹以上になるともうお手上げだ。

 時間がたてばたつほど敵は増えると予測される。

 ここはねずみを使って奴らの死角をついて、ダッシュで逃げることが一番だ。

 

 作戦は決まった。

 意を決してダンジョンからの脱出が始まった。

 安全部屋からねずみを先行させ、壁に身を隠しながら慎重に大とかげをやり過ごし前進する。

 1つ目の角を抜け2つ目、3つ目と順調に進んでいく。

 そしてあと3つの角を抜ければ9階層への道にたどり着く場所まで来た。


 希望の光が見えて、安堵した瞬間!


 ドーン。


 真後ろから大きな重い物体が落ちた音がした。

 

 「ぎぃぃぃ。」


 俺の目と鼻の先に、鼻先が焦げた大とかげがいた。


 「くそ、天井で待ち伏せしてやがった。」


 俺はこの巨体で天井に張り付いて待ち伏せするとは夢にも思っていなかった。

 地面を這っている奴だけに注意していて、天井はまったく見ていなかった。

 瞬時に俺は9層目の道へダッシュを始め、召喚魔法を解除してスキルボーナス値を素早さに最大の+21を振る。

 素早さに振り終えると一気に逃げ足が加速する。

 後ろからは大とかげも猛烈な速さで追いかけてくる。

 俺の瞬時の判断が良かったためスタートダッシュでかなり距離が稼げた。

 残りの角の1つ目を右に曲がり、最後の角に入った瞬間。


 ドン。


 俺は右から大きな衝撃をまともに受けて3mほど吹っ飛び、そのまま壁にぶつかる。

 幸い背負った盾が壁と体の間で衝撃を緩和して大ダメージにはならなかったが、一瞬前後がわからなくなりふらついた。


 ガブリ。


 右足に熱いものが当たったような感じの後、激痛が走る。

 大とかげが右足に完全にかぶりついていた。

 俺はショートソードを抜いてそいつの目を突く。

 痛みで大とかげは口を離して後ずさる。

 右足を見ると、ズタズタにされていた。

 これではもう走れない。

 それでも俺は右足を引きずりながら移動する。

 

 (あと1つ角を抜ければ・・・)


 その希望を打ち砕くかのように前の角からニュッと3匹目の大とかげが顔を出した。

 

 「くそぉ!」

 

 俺は大声を出して呻く。

 後ろから1匹、右から1匹、前から1匹、合計3匹の大とかげがじりじり間合いを詰めてくる。

 右足がズタズタになって、走れないことを理解しているかのように急には襲ってこない。

 俺は覚悟を決めて、背中の盾をかまえて戦闘態勢に入り、スキルボーナス値を素早さから筋力へ+21に変更し少しでも逃げれる可能を高めるため9階層の道に移動する。

 大とかげはそれを見透かすように、真ん中の大とかげが出口側に回りこみ逃げ道を塞ぐ。

 俺は3匹に追い詰められ壁を背にして対峙する。

 ショートソードを地面に突き刺し、ナイフを取り出し3匹に交互に投げて少しでも近づけさせないようにする。

 ナイフが無くなると俺は魔法の杖を出し、ウィンドカッターを大とかげの鼻先にブチ当てる。

 大きなダメージは与えられないが、鼻先を切り刻まれ大とかげは後ろに下がる。

 何発もウィンドカッターを唱えて、大とかげが嫌がることをする。

 しかし、それもつかの間とうとう魔力が切れた。

 本当はヒールで右足を治したかったが1人ではその余裕が無い。

 大とかげどもは、じりじり間合いを詰めてくる。

 俺は背中の短槍を右手で持ち、前後左右に振り回して追い払う。


 バクン。


 意味も無く振り回していたために軌道を読まれて槍を口でつかまれそのまま奪い取られる。

 仕方なく俺は地面に突き刺した最後の武器のショートソードを手に取り、タダでは死なんぞと心に決めて最後の足掻きをする。

 しかし、足をかまれてかなりの時間がたっており、大量の血液を失い徐々に意識を保っていることも難しくなってきた。


 (くっ、これまでか!)


 俺はあきらめの気持ちが出る。


 (まだだっ!せめて1匹は道連れにしてやる。)


 最後の気力を振り絞り、朦朧とした状態でショートソードを振り回す。

 大とかげはそれを予期していたかのように少し下がって避ける。



 その瞬間。


 ごぉおお。


 徐々に薄れ行く意識の状態で、左側からはっきり目の前に巨大な紅蓮の炎が1匹の大とかげを丸焼きにした。

 残りの2匹はなんだ!という表情で一斉に左を向く。

 俺もそちらを向くと今度は黒い大きな影がものすごい勢いで近づき、5m近くで大きく跳んでそのまま大とかげにぶち当たるように見えた瞬間。

 

 ドシュ。


 ものすごい音がしたかと思ったら、1匹の大とかげの胴が前後にまっぷたつに分離した。

 俺はそれを薄れゆく意識の中でとらえたところで力尽き、そのまま崩れるようにして倒れた。

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