第3話 ゴブリン駆除
村から少し離れた場所の少し盛り上がったところに立ち、鷹の目のスキルを使ってあたりを見回すと近くに一匹でいる、アホな顔をしたゴブリンがあたりをキョロキョロしながら歩いている。
鷹の目のスキルをOFFにして、器用さにボーナス値を振りなおす。
近くに他のゴブリンはいない。
ゴブリンの背後に回り10mの距離で、石をスリングにセットしてくるくる回す。
ひゅんひゅんと音が強くなり、ゴブリンがその音に気づいてこちらを向いた瞬間!?
ヒュッという音とともに石が飛んでいき、ゴブリンの顔面の真ん中にヒットしてパッと赤いものが飛び散る。
そのままゴブリンは仰向けにドサッと倒れこむ。
とりあえず、次の石をセットして、2撃目の準備をして石をくるくる回すが、ゴブリンは立ち上がらない。
5分くらい待つが、一向に立ち上がらないので、丸太の棒を右手に持ち替えて、近づく。
丸太の棒で足をつんつん突くが、反応が無い。
上から顔をのぞくと、顔面がぐちゃぐちゃになっており、即死していた。
「あっけな!」
率直に思った感想である。
とりあえず、ゴブリンが手に持ってたショートソードを使って右耳を切り取り、一部穴を開けてスリング製作時にあまった紐に通した。
その後同様にしてゴブリンを狩っていき、午後だけで、10体のゴブリンを退治し、10本のショートソードを持って村に帰った。
村の門が見えるところまでくると、シスターが門の近くで心配そうな表情でうろうろしていた。
自分がテクテク歩いてくる様子を見るなり走って近づいてきて、心配したといってすごく怒られた。
どうやら、村の一人が自分が門から出て行く様子を見ていたらしい。
上下スエット姿(これしか持っていない)で防具も無しで木の棒をもって村の外に出て行くので心配になって教会に連絡したそうである。
とりあえず、シスターには
「ごめんなさい」
と謝った。
そして、腰にぶら下げたゴブリンの耳の束をみせたら、シスターの顔が真っ白になりバッタリ倒れそうになった。
あわててシスターの体を支えることになった。
すぐに、他の村人が近づいてきて、シスターを背負って教会に連れて行ってくれた。
教会に戻る途中で、村長の家に行きゴブリンの耳を渡すと、かなりびっくりした様子で1000ゼニーをくれた。
また道具屋でぼろいショートソードを売るとこれも1000ゼニーで買い取ってくれた。
結構チョロイな。
アッという間に、2000ゼニーを稼いだ。
感覚的には3時間で2万円近く稼いだことになる。
とりあえず、そのまま教会に戻り、気絶したシスターを子供たちと一緒に介抱した。
その夜、神父さまには2時間近く説教を受けたが、村の安全のためであり、10体簡単に退治できているので問題ないと話し説得して、今後もゴブリン駆除を行う許可をしぶしぶ得ることが出来た。
それから1ヶ月、午前中は教会で掃除や食事の準備をして、午後から村の周りのゴブリン駆除を開始した。
結論から言うと大成功である。
かなり稼げた。
鷹の目のスキルは非常に有効で1体のみのゴブリンを探して背後から忍び寄り、スリングショットでほぼ一撃である。
毎日午後の4時間程度で10体前後のゴブリンを確実に駆除してくるので、村長以下みんな驚きそして喜んだ。
金もたまり、村唯一の道具屋で皮の装備一式を購入し、スモールシールドと短槍と弓矢を購入して、全体的な防御値と攻撃値を上げた。
装備が充実したら、集団のゴブリンも余裕で倒せるようになった。
LVも1→4になりスキルボーナスも10になった。
スキルボーナスが増加したことで、いろいろなスキルが解放された。
まずなんといっても魔法である。
火の魔法である、ファイアーアロー
水の魔法のウォーターショット
風の魔法のウインドカッター
土の魔法のアースウォール
回復魔法のライトヒール
ただ大きな問題が生じた。
自分のMPが少なすぎた。
斜面の上の森の中でファイアーアローを2発目を唱えた瞬間それは起きた。
急に意識が無くなりぶっ倒れた。
幸い魔物はいなかったので問題なかったが、かなりやばかった。
その後もう一度2発唱えて、気絶している時間を計測すると約15分程度気絶していたようである。
これではほとんど実戦に使えない。
まぁ、そもそも何でもかんでも簡単にうまくいくわけはないのである。
もともとスキルボーナスが無ければ、LV4の俺なのにLV1村人Bのジョニーさん20歳より能力が劣っているのだ。
ちなみに神父さまに聞いたところ、通常魔術が使えるようになるには、才能のある人が10年近く一生懸命勉強してやっとそれなりに使えるようになるもんらしい。
窓際サラリーマンの俺が、そう簡単に華麗な魔術師になれるはずは無いのである。
まあ結局実戦で使えるようにするには、LVをもっと上げるか、個人的に能力を鍛えるか、金を集めて何らかの道具に頼るしかないのである。
そんなこんなで、ゴブリン駆除を始めて2ヶ月、村の周りのゴブリンはほとんど駆除していなくなった。
ゴブリンがいなくなって村人全員が喜んでいたところで、ゴブリンとは別の悲劇が起きた。