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第34話 その後・・・

 「ただいま帰りました。」


 俺は、現在我が家になりつつある宿に帰ってきた。


 「おお、お帰り。無事だったか。予定より遅かったなぁ。」


 宿屋の主人のエルバンがカウンター越しに俺を迎えてくれた。


 「ええ、いろいろありまして、予定より一週間余分にかかりました。」

 「そうか、でも見たところ怪我も無く上々上々。これで俺も安泰だ。」


 どうやら二週間たったが、まだ客は俺一人だけらしい。


 「それでどうする。夕飯には少し早いがお前なら特別に出せるぞ。」

 「あぁ、じゃお願いします。あとその後、風呂にも入りたいので用意をしてもらえますか?」

 「おお、わかったじゃあ、飯を食っている間に風呂の準備をしておくよ。」

 「ありがとうございます。」


 俺は一度部屋に戻って装備を脱ぎ、着替えを持って1Fの食堂に下りてきた。

 テーブルにはすでに夕食が用意されており、具の大きいシチューとやわらかいパンとコンソメスープだった。


 「旨い旨い、やっぱりおやじさんの料理は最高だ。」

 「そうか、そうか。」


 この旅のほとんどは、牢屋の中のうっすい塩味スープと固いパンだったので、久々に食べたエルバンの料理は体に染み渡るように感じて、あっという間にすべて平らげてしまった。


 「じゃあ、風呂に入ります。」

 「おう、用意は出来てる。」

 

 俺は、そのまま風呂場にむかい、まず全身を洗い浴槽にゆっくりとつかる。

 いつの間にか外は暗くなり、浴室の窓の外には大きな月が見える。


 「ふぅ~、良い景色だ。なんか落ち着くなぁ。」


 旅の緊張が完全に抜けた感じがした。


 「それにしても、アレスで助けたあの女の子がお姫様かぁ。確かにかわいかったなぁ。」

 

 俺は、袋から顔を出した赤毛の色白の女の子を思い出していた。

 あの日の夕方、ギルドの3通の手紙の仕事を片付けたあと酒場で酒を飲み、良い気分で別荘に戻ろうとしたときの出来事について思い出していた。


 「ちょっと、もったいないことをしたかなぁ。いやいや、かわいいと言っても相手は王侯貴族。エルスタットと同じ側の人間だ。当分は面倒ごとはごめんこうむる。」


 ちょっとした後悔を感じたが、そのあと今回の旅の反省点などをいろいろ考えて風呂から上がるとそのまま部屋に戻りぐっすり眠った。







 場所はアレスの街のシャルロッテが滞在している豪華な屋敷の一室。 


 「そう、アレスの冒険者ギルドにはいらっしゃいませんか。はぁ~。」


 シャルロッテは大きなため息をついた。

 先日誘拐時に助けてもらった冒険者風の男性を、付き添いの従者達を使ってあれこれ探させていた。


 ・冒険者風の身なり

 ・珍しい形の短い魔法の杖

 ・ちょっと違和感のある喋り方

 ・もらったナイフ


 手がかりは4つしかない。

 そしてその相手は名も名乗らず、恩賞も受けず去っていった。


 「ああ、なんてすばらしい方でしょう。でもなぜ?」


 普通は王女を助けたといえば、かなりの恩賞をもらえる功績だ。

 それを一切受けようとしなかった。

 

 「何か、深いご事情があるのでしょうね。」

 

 シャルロッテは考える。

 付き添いの侍女がシャルロッテの近くに来て諭すように言う。


 「姫さま、もうよいのではないですか?お探し始めて3日がたちます。これ以上やっても見つからないと思われます。」

 「ダメです!断じてダメです!これは私の将来がかかっています。」


 侍女はシャルロッテの目をみて、こりゃダメだという感じで見ている。

 完全に恋する乙女状態だ。


 「そうですわ。このナイフをよく調べなさい。市販のものとは異なり特殊な修繕の跡があります。これが必ず手がかりになるはずです。それにこの街にいらっしゃらないのであれば周辺の街を探しなさい。」


 シャルロッテは手に持ったナイフを侍女に渡し指示をする。

 

 「絶対に、見つけ出してみせますわ。」


 シャルロッテは強く心に誓うのだった。







 シャルロッテが滞在している屋敷の一室で、エルスタットと貴族風の男性がテーブルを囲んで話をしている。


 「ムスファ国王陛下は今回のブノーブル伯爵の行動についてどのようにお考えですか?」


 エルスタットは対面にいる男に単刀直入に聞く。


 「え~、陛下はこのたびのブノーブル様の行動については、遺憾に考えておられます。」


 イマイチ歯切れの悪い感じで、男は答える。


 「その辺りをはっきりして頂きたい。私は遊びで来ているのではございません。現在わが国とムスファ国とでは休戦状態です。貴国はこれを破るおつもりか?」

 

 エルスタットは強く相手に問い詰める。


 「え~、そのように申されても、私の考えでは・・・あの・・・その・・・。」

 

 なんとも歯がゆい感じで、相手はのらりくらりといい逃れようとする。


 「わがアルバニアは五年前の内戦のときとは異なりますぞ。復興も順調に進み、着実に力を取り戻しつつある。五年前のように休戦で終わるような安易な考えはお持ちにならないほうがよろしいと思います。」


 エルスタットは脅すような態度で相手の男に強く言い放つ。


 「私とてそれはわかっております。だからこのような席を持ったのです。わが国とて戦争は避けたい。」

 「だったら、ブノーブル伯爵をなんとかすればよろしいでしょう!」

 「そういわれましても、いろいろありまして・・・。」


 2人はその後も延々と同じようなことを繰り返しながら、朝方まで討議を重ねるのであった。

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