第33話 シャルロッテ誘拐
暗闇のなか人気の無い裏路地を3人の男が隠れるように急ぎ足で移動する。
1人の男の肩には袋が乗っている。
「私の名前は、シャルロッテ。
ムスファ新王国の第11王女です。
今現在、私は目隠しと猿轡をされ、縄で後手に縛られて更に体をぐるぐる巻きにされて袋の中に入れられ移動中。
はぁ~、今回で私の誘拐も6度目です。
初めてのときは6才の誕生日の日の夜。
花壇でお花を見ていたら、さらわれました。
幸い騎士団の活躍で助け出されました。
そのときは一週間恐くて部屋の隅で泣いてました。
しかし、今回で6回目。
何度もあると、慣れてきます。
最近、私思うんです。
これって、単なるイベントなんでは?
なぜなら、さらわれても乱暴なことはされませんし、
お金が支払われれば、即解放。
これって、人さらいの名目で悪い人たちへのお金の横流しなんじゃないかと・・・。
国の王女といっても11番目の娘。
妾の子供なので継承権もないし、大して価値も無い。
国民の人気取りのために日々あちこち地方に飛ばされる毎日です。
あぁ~、私って不憫な子。
歳も歳ですし、この先人気がかげれば顔も知らない誰かと結婚するくらいしかありません。
はぁ~。
なんか疲れました。
身を守るために多少の魔術の知識がありますので、いざとなったら大丈夫ですが、
こんなことがこの先続くかと思うと憂鬱です。」
男が立ち止まり、
「おい、ブツブツなに言ってんだ。黙ってろ!」
シャルロッテはわかりましたと袋の中からわかるように大きく合図をするように頷く。
「おとなしくしてりゃ、危害はくわえねぇ。そういう約束だ。わかったな。」
シャルロッテは再度わかりましたというように頷く。
「あにきぃ、前から人がきやすぜ。」
「なにぃ、こんな時間に面倒な奴だ。」
「このままだと、見られますぜ。」
「ちっ、始末するぞ。」
肩に乗せていた袋を地面に置いて、三人とも剣を抜く。
そして、誘拐犯の子分と思われる二人が前にでて、前から来る冒険者風の男に対峙する。
「あ、私見てません。関係ないですから、そのままそのまま、じゃあ失礼!」
前から歩いてきた男は三人に向かってそういうと、そのまま何も見ていないというしぐさをし通り過ぎようとした。
「ちょっとまて!おまえら囲め。」
誘拐犯の兄貴は、子分に指図する。
「見たからには、死んでもらう!」
「いや、だから、見てないって言ってんでしょ。そのまま通してよ。面倒ごとは嫌いなの。」
男は、さもめんどくさそうに誘拐犯に伝える。
「お前ら殺・・・・。(どーん)」
誘拐犯の3人はフッと消えたかと思うと、男の前からいなくなった。
「だから、言ったのに。あぁあ、面倒なことになった。」
男の周りには3mくらいの深さの3つの大きな穴があり、三人ともその底でのびていた。
「フー、フー、フー。」
麻の大きな袋の中から、何か強い息のような音が聞こえる。
男は袋の口をナイフで切ると、赤毛で十代後半のかわいい女の子が縄で猿轡と目隠しをされて全身ぐるぐる巻きで縛られていた。
「はいはい、今助けますよ。」
男は、目隠しと猿轡をとる。
シャルロッテの前には、冒険者風で珍しい短い魔法の杖を持った男がいた。
「ありがとうございます。助けていただいて。」
「いえ、どういたしまして。」
「私、シャルロッテと申します。お名前を教えていただけませんか?」
「いえ、名乗るほどのものではありません。あと、このナイフを差し上げますので、後はご自分で何とかしてください。では、さようなら。」
男はそういうと、シャルロッテの後手にされた縄を切った後ナイフを手に渡してあっという間に走っていなくなった。
「ああ、なんとすばらしい方でしょう!まさに私にぴったりの方。」
変な勘違いをしているシャルロッテの姿がそこにあった。
次の日の昼。
俺は昼食を別荘の食堂で食べていた。
そこに、エルスタットが来た。
「昨日の夜中、シャルロッテ様が誘拐されたそうです。」
エルスタットは俺に話しかける。
「へぇ~、それは大変なことで。」
「でも、街の裏路地で無事に発見されたそうです。」
「ほぉ~、それは良かった。」
「何でも、短い魔法の杖を持った冒険者風の男が通りすがりに助けてくれたそうです。」
「まぁ、運がよかったんですね。」
エルスタットは俺をじぃーっと見る。
「ヨージ様は冒険者ですよね。」
「そうですね。」
「短い魔法の杖をお持ちですよね。」
「まあ、そうですね。」
「昨日は夜遅く帰られたそうですよね。」
「まあ、そうですね。」
エルスタットは更に俺をじーっと見る。
俺は、それを振り払うかのように、
「俺はこの街でやることをやったので、夕方の馬車でバレスに戻ります。」
一言そうエルスタットに伝えると、俺は自室に戻り帰る準備を始めた。
そして、そのまま夕方の馬車に乗って、逃げるようにアレスの街をでた。
3日後、俺は2週間ぶりに宿屋エルバンに帰った。




