第27話 金稼ぎ 後編
「すごいですね!」
ダンは荷馬車の御者をしながら、俺に向かってそういった。
ケンもそれに続けて、
「本当に1人で倒しているとは思いませんでした。道中嫌なイメージしか浮かばなかったです。」
俺はえっへんと言う感じで、
「だぁ~から、大丈夫だと言っただろ。ただし、絶対にまねをするなよ。後、すべて秘密なのを忘れるなよ!」
「わかってますよ。と、いうより俺たちでは逆立ちしても倒せません。見つけるのも一苦労なんですから!」
ダンはそう答える。
「わかればよろしい!」
俺はかなり上から目線で2人に言って聞かせた。
バレスに戻り、解体屋のおやじのところに行くと驚いた様子で、
「おう、またお前さんか。短期間に2頭目か。すごいな!バレス平原では遭遇するのもレアなのに倒してもってかえってくるなんてな。」
「まあ、ちょっとしたコツがあるんで、これからもちょくちょく持ってくるかもしれないんで、よろしく。」
「おう、わかった。」
そういうと解体屋のおやじは前回と同様に仲間を呼び、あっという間に解体査定をした。
結果、8万ゼニーの金になった。
前回の値よりかなり安いが、個体が小さいので仕方がない。
しかし、俺としては許容範囲だ。
「よ~し、2人とも明日からもがんばるぞ!」
「「わかりました。」」
そう言って二人と別れた。
しかし、それから思ったより見つけることが困難で、結果1ヵ月近くで5頭しか狩れなかった。
ただ、2人の雇い賃や遠征雑費などの必要経費を除いて金額的には40万ゼニーに手にすることが出来た。
そうして6頭目の狩りにはいるところで、いつものように平原前に8時に行くと、見慣れない少し小柄で戦士や盾職には向きそうに無い感じの男がダンとケンと一緒にいた。
「ダン、ケン、そいつはだれだ!」
俺はそう2人に問う。
ダンが答える。
「こいつは俺のパーティのメンバーの1人でバモフって言うんです。で、ちょっと一緒に手伝いたいといいまして・・・」
「俺は、秘密だといったはずだが。」
「わかっています。わかっています。すみません。ただ、割りのいい仕事なのでちょっと興味があったみたいでついてきちまったんです。」
「ついてきたって・・・。俺は2人しか必要ない。3人分は払わんぞ!」
俺はちょっと強い口調で苛立った態度をワザとわかるようにバモフに言った。
「すみません。2人があまりに割りのいい仕事をするんで興味があったんです。今はパーティがそれぞればらばらの仕事をして、金を持ち寄ってやりくりしているんです。俺自身がやっていた仕事が昨日終わって、次の仕事が無いので2人を手伝いたいと思ったんです。」
「本当に2人分しか払わないぞ。」
「ええ、それで結構です。」
俺はちょっと釈然としなかったが、タダで手伝うというので渋々了承した。
しかし、これがその後大きな後悔を生むことになる。
それから、6頭目を見つけるまでに10日もかかった。
いつもと同じようにダンたちに荷馬車を持ってくるように言い、俺一人で狩る。
「そろそろ限界かな?」
俺は目の前に横たわるバッファローの亡骸をみてふと思った。
バッファローは単独で行動し、その行動範囲は非常にひろい。
そしてその巨体に似合わず短距離は速く、長距離もなんのそのだ。
1ヵ月バッファローの生態にかなり詳しくなった俺は、バレス平原のバッファローはかなり少ないことを実感していた。
3人が荷馬車を持ってきて、バッファローをいつものように積み込みバレスに戻った。
次の日ダン達は朝早く宿屋に来て、俺に謝りながら今回で仕事を打ち切らせてほしいといってきた。
理由を尋ねると、パーティでやる大きな仕事が決まり、それに2人も参加することになったからだというのだ。
それに、最初の契約では1ヵ月前後との取り決めなので期限だからと強引に契約を打ち切られた。
俺は渋々その話を了承し、新たに冒険者ギルドに依頼を出しなおして別の二人を雇い、翌日からバレス平原に向かった。
それから3日して、今日も空振りであったため道中遭遇したゴブリンを換金するために、冒険者ギルドに戻ると最悪のものを見た。
冒険者ギルドの建物の横に人だかりがあり、なんだろうと思って近づいてみる。
人だかりの真ん中に、わんわん泣いているダンがいて荷馬車には4人の遺体が乗っていた。
その瞬間、俺は何が起きたのか理解した。
「馬鹿野郎。お前たちだけでいったのか!」
俺はダンを見ながら、呻くように苦々しく小さくつぶやいた。
たぶん、バモフは盗賊職で俺がどのように戦っているのか調べるために来て、俺にわからないように隠れていたのだろう。
低級の土魔法をつかい、ショートソードの一発で息の根を止める方法を見て簡単に出来ると錯覚したのだ。
周りの奴に状況を聞くと、F級パーティなのに何をとち狂ったのかバッファローと戦ったということだ。
ただ、1人は荷馬車を取りに街に戻っていて結果的に助かり、殺された仲間の遺体を荷馬車にのせて持ち帰ったということだった。
俺はダンに話しかける気にはならず、新しい二人に向かって話す。
「今回の契約は申し訳ないが今日で終わりだ。」
2人は不満な顔をしたが、あらかじめ割りの良い日当はもらえていたので文句を言うことはなかった。
俺たち3人は冒険者ギルドでいつものようにゴブリン換金を行ったところ、なんと俺はF級に昇格した。
しかし、俺はその昇格にまったく喜べず、反対に非常に気分が悪く、なんともいえない後味の悪い感情と強い苛立ちを感じながら宿に戻った。




