表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/72

第24話 エルスタット

 肩を叩かれ、俺はびっくりして後ろを振り向く。

 そこには、紳士な感じの立派な格好をした20代後半の男性が立っていた。


 「ヨージ様、とお見受けいたします。」


 俺は即座に、

 

 「違います。では!」


 と何事も無かったかのように、宿の方に向きなおして歩き出そうとした。


 「先日、バルの酒場で乱闘した。ヨージ様ですよね?」


 俺は、ビクッとして立ち止まり振り返る。


 「えーっと、何か人違いをされているのでは・・・(汗) では!」


 俺自身は乱闘はしていないので、俺は更にごまかそうと答える。


 「その後、建物の壁の間で小さく呻き、思いっきり凹んでいた、ヨージ様ですよね!!」


 俺はもう観念した。


 「・・・そうです。ヨージです。・・・どちら様でしょうか?」


 男はにっこり笑って、答えた。


 「私はエルスタットと申します。ちょっとお時間を頂きたいと思います。」

 「わかりました。」

 「ここではなんですので、ついてきてください。」


 そのまま、俺はしょんぼりしながらエルスタットの後をついていった。


 着いた先は想像した場所ではなく、高級そうな喫茶店であった。

 正直捕まったと思い、拘留所にでも連れて行かれるのだろうと考えていたのだが。


 「こちらのお店で少しお話を聞かせて頂きたいと思います。」

 「・・・わかりました。」

 「どうぞ、好きなものを注文してください。」

 「では、コーヒーを1つ。」

 「それだけで、よろしいですか?」

 「いいです。」

 

 俺は何も食べる気がせず、内心ビクビクしていた。


 「まず、何か誤解をされているようですのでそのあたりを解消するほうがよろしいかと思います。」

 「・・・俺は、捕まるのではないのですか?」

 「やはりそのことを気にされていたのですか。私はあなたを警備兵に突き出そうと思っているわけではありません。ただ、街中で火の玉を出すのは今後おやめになったほうがトラブルはおきにくいかと存じます。」

 「・・・ご忠告、心にしっかり刻みました。」

 「本日お呼び止めしたのはご挨拶したかったのと、ちょっと直接お話をしたいと思ったからです。」


 エルスタットは非常に丁寧な態度で接してくる。


 「いえね、先日の2人は実は結構の荒くれ者で、あの界隈でも腕力にものを言わせてしょっちゅうトラブルを起こしていたのです。ただ、先日の乱闘騒ぎを一部始終見ておりましたが、あなた様の多才な能力を見てちょっとお近づきになりたいと思いました。」

 「はぁぁ、そんなにたいしたことはしていないんですが?」

 「いえいえ、冒険者G級の初心者なのに荒くれ者の2人を両手でつるし上げ、更に魔法を使って脅し、最後は猛スピードで走っていかれたのを拝見しておりますので。」


 なぜ俺の名前と冒険者レベルをしっているのか疑問に思い、俺はそれが顔に出た。

 

 「えーっと、ヨージ様の個人情報はたいしてわかっておりません。旅の護衛を終えて冒険者ギルドに登録したというところくらいです。」

 「えっと、私はあなたに会ったことはないんですがね。」


 俺は少し皮肉めいた感じで言うと、エルスタットはニヤッと笑い、


 「私は、そういうところに少し伝手がありまして、そういう立場にいるものです。」

 「ああ、そうですか。それでどういった目的で。」

 

 俺はそれ以上突っ込むのはやめて、本題に入るように聞いた。


 「いえいえ、先ほども申したとおり今後のことを考えて、お近づきになりたいと思っただけです。少し身体的に恵まれているように見受けられませんが、それに似合わず多才な能力を持っている方だと見受けました。それでお話が聞きたかったのです。」

 「それで、わかりましたか?」


 俺はストレートに聞いてみた。


 「ええ、よくわかりました。非常に思慮深くいろいろ考えておられるようで、私が一番好きな方です。」

 「いや、男に好きといわれても、全然うれしくないんですが。」

 「おっと失礼、そのような趣味は私にもありませんので、失礼しました。」


 ちょっと引いて聞いていた俺は安心した。


 「私は、ある方に御仕えしていまして、その方のご命令の際に少しお手伝いをお願いするかもしれません。もちろんそれに見合ったお金はお支払いします。」


 俺は少しキナ臭くなってきたので一応一言確認した。


 「断ることは出来るんでしょうか?」


 エルスタットはにっこり笑って、


 「えーっと、断ると、ヨージ様が少し困ったことになる可能性が生じるかもしれません。私はそういった方面の伝手もありますので・・・。」


 俺は観念した。


 「とりあえずは本日はご挨拶ということのみですので、気楽に構えてください。手伝ってもらう際は、こちらからお話に伺いますので特に気にされる必要はありません。」


 正直何をさせるのか、嫌な予感しか感じないが、数日隠れていたのに名前から経歴まで調べ上げられているので、なるようになれと思った。

 その後、コーヒーを飲みエルスタットのことについていくつか聞いてみたが、すべてうまくはぐらかされて結局何もわからず店を出ることになった。


 「そうそう、先日の乱闘については、私がすでに手を回しておりますので、ご心配なさらずお仕事に邁進してくださいませ。あと、私とのこの会合は秘密ということでお願いします。」


 最後にそう言ってエルスタットは颯爽と貴族の屋敷の門の方へ歩いていった。

 俺はぐったりして宿に帰った。






 その夜、ガーレン城の一室の前でエルスタットが立ち、二回ノックをすると、


 「入れ。」

 「失礼いたします。」

 

 大きな部屋の窓際に高級な机があり、若い男がいすに座って窓を見ていた。

 

 「では街の報告を聞こうか。」

 

 深夜遅くまで、若い男に報告するエルスタットの姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ