第23話 盾の購入
装備を受け取った日から宿にこもり始めた。
宿から一歩も出ず、1F食堂と部屋の行き来のみの生活になっている。
1Fの食堂は今日も満員御礼だ。
昼はサケのような魚のソテーにちょっと香ばしい刻みニンニクのオリーブオイル味だ。付け合せに、野菜サラダがついている。
「この宿の食事はいつもうまいなぁ」
俺はしみじみ感じている。
ちなみにすべてのメニューは宿屋のおやじであるエルバンが考えた料理とのことだ。
正直それに一番驚いたが、冒険者時代からあちこち旅している間に料理が趣味になり一人研究をしていたそうだ。
じゃあ食堂にすればいいのに、と思ったが、何やら理由があるらしく、
「俺は旨い飯を出す宿屋がやりたかったんだ。メインは宿屋。これ基本!!!」
一度そのあたりを聞いてみた。
しかし、なんか、えらい強い口調で言われてしまってこれ以上聞くのはやめた。
ちなみに現時点でも宿屋の客は、俺一人なんだが・・・。
ただ、俺が3ヶ月連泊するので先にまとめて払ったら非常に機嫌が良くなった。
「兄ちゃんは俺の救いの神だ!これでガフィのやつには何にもいわせねぇ」
そんなに、気にしていたんだ・・・。
そんな感じで、あっという間に数日がたった。
正直最悪、宿屋に警備兵が来て引っ張られるのでは?と思っていたが、杞憂だったようだ。
「まあ、歓楽街の喧嘩なんでそんなもんか」
ちょっと考えすぎのようだ。
俺は次の日、ちょっと外出することにした。
目的は盾の購入である。
ガフィの忠告でスモールシールドが壊れていることが判明したからだ。
そもそも、この盾はタレス村の道具屋に唯一あった盾で、購入当初から結構傷だらけだった。
小心物の俺としては大きな盾で隠れるようにしたかったのだが、これしかなかったのだ。
そこで、今盾を買いに商業地区の盾を専門に売っている防具屋に向かって歩いている。
お店に到着した。
店の前の看板には盾の大きなオブジェがドドーンと飾られており、盾専門です!という感じがありありとする。
そのままお店に入った。
店の中はやや狭く、物がぎっしり入っている感じだが、ただ非常に違和感ありありだ。
店を防御!!的な感じで、店のカウンターにつながる通路がトンネルのように盾で囲まれている。
「うわー、ひくな」
俺は心の声がちょっと出てしまった。
「すばらしいでしょう!!」
カウンター横の大きな盾の後ろから、ずんぐりむっくりとした体型のおやじがひょっこり顔を出した。
「うぉっ、びっくりした!」
「イヤーすみません。これ私のたのしみなんで!」
おいおい、客にそんなトリッキーなことすんなよ。と心で思いつつ、
「あのー、このスモールシールドを売って、自分に合う大きな盾がほしんですが・・・」
俺は壊れていると指摘された盾を何も言わずサラッと悪びれる様子も無くおやじに渡した。
「おっ!買取と新規の購入ですね。わかりました。ちょっとお見せください。」
俺からスモールシールドを受け取って、ぱぱっと全体を見て最後に表面を拳でかるく「コンコン」と叩いた。
「あー、これ駄目ですね。中が割れてるか、ヒビが入っていて使い物になりません。二束三文ね。」
「そうですか。じゃあ処分してください。」
俺は本音はビビッていたが、それは態度に出さないように努力した。
それにしてもこのおやじなかなかやるなと感心した。
ぱっと見て軽く叩いただけで中身を見抜きやがった。
これならいいものがそろっているだろうと思った。
そのあと、おやじは俺の頭からなめるように足先までをジーっとみて、
「ご予算はどのくらいですか?」
「1万ゼニー以内でお願いします。」
「じゃぁ、ちょっとお待ちください。合いそうな盾をいくつか見繕ってきますから!」
そう言って、店の奥に引っ込んだ。
おいおい、この店内のオブジェから探すんではないのかよ!と突っ込みを心の中で入れつつ、俺は15分ほど待った。
おやじは10個の大きな盾を持って戻ってきた。
そして一言
「この店内の盾は、単なる私の趣味ですので気にしないでください」
俺の疑問を先に解消するかのようにそう答えた。
たぶん、みなそう思い突っ込みを入れるのだろう。
俺は並べられた盾を一つ一つじっくり眺めた。
どれも実用的な感じで、ほとんど装飾はされておらず、あるのは形の違いと色の違いである。
「1万の上限で出せる品がこれになります。」
俺は装備について全然詳しくないので、盾のおやじのマニアックさを信じてそのまま聞いてみた。
「俺は正直あまり盾に詳しくないのでどれがいいのかわからないんですが・・・」
「そうですか、えっと、そもそも盾は常に相手の攻撃を受け止めるものなので基本は消耗品だと考えてください。磨耗も激しく修理・修繕が出来るのもかなり限界があります。先ほど買取しました盾のように、表面ではわからなくても中身は割れたり、ヒビがはいって、いざというときに致命的なダメージを受ける可能性も高いです。」
俺はその話をうんうんとうなずいて聞いていた。
「なので、基本は戦闘のたびにその状態を確認することが大切です。慣れれば私のように音で中身がわかるようになります。そこまで出来ない場合は定期的に店でチェックをするほうが良いです。」
俺は非常に納得しながら更に話を聞く。
「それで、お客様のご予算と体型、主に筋力的な面からご要望にあうラージシールドをいくつか用意しました。取り敢えず各種持ってみて、構えてもらってしっくりくるタイプをお選びください。コツは思っているより重めに感じるものがお勧めです。」
「えっ、軽いより重いほうですか?」
「ええそうです。盾は戦闘中常にもって行動します。なので、少々初めは重くてもだんだん慣れてきます。あと重いほうが相手の攻撃のショックをやわらげ易くなります。」
その話を聞いて、慣性の法則からなるべく重い方が盾の自重で力を逃がすんだろうと一人理屈を考えていた。
その後一つ一つ手に持って構えてみる。
やはり全体的にラージシールドはどれも重く感じた。
しかし、しゃがんで盾の後ろに隠れるとほとんどからだ全体を防御できる。
結局、スキルボーナスがあるので一番重い盾を選んだ。
「お客さん、本当にそれでいいですか?ちょっと重くありませんか?」
盾屋のおやじは俺が一番重いやつを選んだのでちょっとびっくりした様子だった。
たぶんここでも毎度な感じでひ弱に見られたんだろう。
「いや、これでいいです。」
俺はそれを購入し、通常は背負えるように内側をリュックの肩掛けベルトのような感じに調整してもらった。
気に入った盾を購入でき、満足した感じで店を出て、盾を背負って宿屋に向かって歩き始めた。
そうして商業区と宿屋の間に来たとき、後ろから肩をトントンと叩かれた。




