第21話 喧嘩
外でわいわい人が言っているのを傍目で見ながら、俺は会計を済ました。
店先ではちょっとした人だかりが出来ている。
俺は面白そうだと思い、輪になってみている人たちの隙間を縫って人垣の先に出た。
そこには2人の男が取っ組み合いの喧嘩をしていた。
「やれやれーー!」
「そこだ、いけーぃ!」
外野がはやしを入れて、2人をけしかける。
そんな中、一人の少女が周りの人に泣きながら止めてくれるように頼んでいた。
「かわいい。」
不謹慎にもそう思い女の子を見ていると、ふと目が合った。
女の子はじーっと俺をみて、一気に走り寄ってくる。
「お願いします。兄を止めてください!」
泣きながら懇願し、すがり付いてくる少女がそこにいた。
周りの外野が俺の顔を見る。
俺はいたたまれない感じがし、少女のしがみついてくる手に手を重ねてはがし、そのまま喧嘩をしている2人の方へ近づいていった。
後から考えるといつもの俺ならありえない行動だが、そのときはほろ酔い気分で気持ちよくなっており大きな気分になっていた。
近づきながら、俺はステータスの筋力にスキルボーナスを極振りする。
殴り合いをしていた2人は、近づいてくる俺に気づく。
「なんだ、てめぇ、関係ねぇ奴は引っ込んでろ!」
殴り合いをしていた一人が俺に怒鳴った。
外野は「やれー」「やっちまえ」「三人で殴り合え」などちゃちゃを入れている。
2人の身長は俺より少し大きく175cm程度で、がっちりしており年齢は20歳前後と若い。
俺は組み合っていた2人のそれぞれの胸倉を一気に思いっきり掴み、そのまま真っ直ぐ垂直に持ち上げた。
「「ぐぇっ」」
2人とも声にならない音を出し、地面から20cm浮いたところでプラプラしている。
「てぇ・・めぇ・・はなしやがれ」
2人はそれぞれ俺がつかんでいる胸倉の拳や腕を叩いたりしてはがそうとする。
しかし、トロールの背中の上で利き手で無いほうの腕一本で、装備を背負った状態での全体重を支えた腕力に対抗できるはずも無い。
その後俺は気分がよくなり、そのまま2人をユサユサ揺らした。
「てめぇえ、やめろ・・・・やめてくれ」
2人はだんだん顔色から血の気がなくなり、全身の力が徐々に抜けてきた。
たぶん服で首が絞まって血流が悪くなっているのだろう。
殺すわけにもいかないので俺はそのまま「ポイ」と前に投げ捨てると、2人は尻餅をついて倒れた。
「「ごほ、ごほ、ごほっ」」
2人は徐々に気力を取り戻し、俺を下からにらんでいる。
そこで俺は今日性能がわかった魔法の杖を腰のケースから取り出して、ファイヤーアローを唱え通常より5倍の魔力を込めて2人の頭上に人の大きさぐらいの火の玉を作り出して静止させた。
「お前ら、まだやるか!」
かなり強い口調で脅し、2人は頭上の火の玉を見て、戦意を喪失し
「わかった、わかったよ、もうやらねぇから、それをやめてくれ」
俺は最後に、
「今後こんな場所で人様に迷惑かけることはするな!あとあんな、かわい・・、おっと、あんな小さな子に心配かけさせるな。わかったか!」
俺は2人にそういうと、
「「わかったよ、わかりました。悪かった」」
俺が魔力を止めると、火の玉はフッときえた。
その後、二人は俺の前で二手に分かれていき、先ほどの少女は俺の前でぺこぺこ頭を下げた後、片方が歩いていった方向に駆け足で走っていった。
周りの外野は俺が火の玉を出した瞬間に一気に黙り、すぐに3歩下がっていた。
そして、今は俺を注視し静かになっていた。
俺は何食わぬ顔でそのまま人ごみを掻き分け人気の無い方へ足早にその場を去った。
そして、建物と建物の間の隙間を見つけると、あたりを見回しサッと間に入り、
「やっちまったぁーーーーーーーっ」
映画プ○トーンの有名なシーンのような体勢で、小さく叫び後悔して座り込んだ。
実は、火の玉を出した時には急速に酔いが醒めて冷静になっており、自分がやったことを後悔し始めていたのだった。
何とか最後まで取り繕って、その場を去ることが出来たが、恥ずかしさとやり過ぎた気持ちが一杯になっていたのだった。
その後、かなりその場で凹んでいたが何とか立ち直り、素早さのスキルにボーナスを極振りし宿屋までダッシュで逃げ帰ったのである。
その俺の様子を最初から一部始終、建物の影から一人の男がずーっと見ていた。




