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第19話 魔法の杖

 俺は一度店を出て、冒険者ギルドで金を下ろし、再度魔法屋のばあさんから短い魔法の杖を買った。


 「それにしても、なんでこんなに安値で売ろうとするんだ。」


 まだ騙されているんじゃないかと思って聞く。


 「疑り深いねぇ、性能は絶対に保証するよ。ただね、それを見ていると自分の先見の明のあまりの無さに、手に取るたびにイライラしてくるんだよ。それは試作だが、すぐに売れる予定だったんだ。そして大量生産し大金持ちになると思っていたのが完全に当てが外れたからね。」

 「ふ~ん、まあいい。本当に使えないと思ったら返品にくるからな!」

 「いいよ、約束したからね。ただ絶対に後悔はしないと思うさ。」

 

 ばあさんは自信に満ちた表情で言ってきた。

 

 「そういえば、この店の名前をみてなかったなぁ」

 「魔法屋レリーズだよ、私の名前がレリーズなのさ。」


 名前からくる美的なイメージと魔女のような皺くちゃな容姿のギャップに少し噴出しそうになるが、グッとこらえた。

 ついでに杖を収納するために腰に吊り下げることが出来る皮製の鞘のようなもの一緒に購入し店を出た。

 店を出たら夕方になっていた。

 まだ見たい店がたくさんあったが、昨日持ち帰ったバッファロー肉を使った夕飯が用意されているはずなので、とりあえず宿に帰ることにした。


 宿屋に帰ると夜の9時を回っていた。

 1Fの食堂は本日も満席で、おやじと女将さんとパートのおばさんがせわしなく働いていた。

 

 「おう、お帰り。例のものは作っておいた。席が無いから、部屋で食べてくれ。すぐに部屋にもって行く。」

 「ありがとうございます。部屋で待っています。」


 そういうと俺はそのまま階段を登り部屋で楽しみにしていたバッファロー定食を待った。


 「ん~ん、うめぇ」


 食器代わりの小さなフライパンの上にサイコロステーキのようになったお肉が山のように乗っかっている。

 付け合せには胡椒がきいたマッシュポテトと茹でたブロッコリーが添えられていて、鶏がらの中華っぽいスープがついている。

 肉には醤油とニンニクと生姜の下味がしっかり浸み込んでいて、別皿にある辛味を抑えたマスタードをちょんちょんとつけて食べるともうサイコー。

 あっという間に平らげてしまった。

 正直、西洋っぽい世界なのに、洋食に中華的な要素と全体が和風な感じになっているのでココはどこ?っていう感覚でいろいろな意味???な感じだが、旨けりゃモウマンタイ!


 お腹が一杯なったら急に眠くなってきた。まだ夜の10時だが、最近寝るのが早かったからか、ふかふかのベッドの上で横になったらあっという間に寝てしまった。

 朝の7時ごろに目が覚めて、1Fで朝食をとった後今部屋の中にいる。


 とりあえず、昨日魔法屋のばばあから購入した杖をあちこち見てみる。正直店の薄暗いちょっと不気味な雰囲気と、魔女そのもののようなばばあの容姿もあいまって、完全に呑み込まれてノリ感覚で買ってしまった小さな杖がそこにある。


 「こんなちんちくりんな棒が、80万円か・・・」


 正直ヤッチマッタ感がありありとする。

 ただ、一応クーリングオフの約束は取り付けているので、まぁよしとしよう。

 性能を体感的に理解するために、簡単な魔法を杖を持って唱えてみる。


 「ん・・・・ん、あれ?ちょう楽じゃねぇ!?」


 ウオーターショットで作り出した水のボールがふよふよ空中に浮かんでいる。

 水のボールをそのまま、すーっと、ゆっくり顔を洗うために部屋においてある木桶に入れる。


 「パシャッ」 

 

 魔法を止めると、木桶の中で水が飛び散る。

 同じ作業を1回2回3回とやっていき、いつもなら気絶するであろう5回目の魔法を唱えると気絶しなかった。

 一応ステータス画面でMPの消費から平均化すると、以前の5割に消費が抑えられていた。


 「ちょっ!、まじ、すげぇ。これちょー使えるじゃん。」


 ちょっとキャラが変わったような気がするが、自分の想像以上の性能にびっくりして、あのばばあが嘘を言っていなかったことを確信した。


 「ごめんね。レリーズさん。もうばばあなんで言いません!」


 俺は思った以上の性能を持つこの杖を両手で握り締めて、バックに大量のバラの花束でキラキラして美化された魔女のようなばばあが振り向いたポーズのイメージに感謝の祈りを行った。


 冗談はさておき、他の別系統の低レベル魔法も同じような方法で消費魔法量を算定すると大体同じような感じになった。

 ただ、火の魔法が少し他より消費量が少なく、土の魔法の消費量が平均より少し多かった。

 たぶん、杖にも得手不得手があるのだと自分なりに勝手に解釈した。

 これからの戦闘では通常は剣や槍をメインにし、必要なときに拳銃のような感じで腰のケースから颯爽と杖を取り出し、バンバンと銃を撃つような感じでかっこよく使う自分の姿を想像するのであった。

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