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第18話 バレス観光その2

 ギルドを出ると、ちょうど正午になっていた。

 腹が減ったので、目に入った屋台に近づいていく。


 「おねえさん、これはなんだい。」

 「いらっしゃいませ。これはホーンラビットと各種野菜の串焼きです。一本10ゼニーで~す。」

 「味付けは、こちらのタレが入ったつぼに串を丸ごと入れてください。ただし、二度付けは出来ませんので注意してください。」


 ここ最近兎のエンカウント率が高い気がするが、串に刺さった肉の塊がコブシの半分ほどのサイズと大きく、非常に香ばしい良いにおいがするので、我慢できず2本購入した。

 甘辛タレをたっぷりつけてほおばると、肉汁とタレがよくあいそれに少しこげた部分が絶妙な味と香りを出している。

 

 「うまい!」

 「ありがとうございまーす。」


 串売りのおねえさんは、とびきりの笑顔を俺に返してくれた。

 行儀が悪いと思いながらも、2本の串を歩きながら食べ俺はダレン商会に向かった。


 商会本部手前ですべて食べ終わり、2本の木串を束ねた。

 そして、小さめのファイアーアローをその場で出して串を燃やして処分した。

 そのまま店に入る。


 「いらっしゃいませー。」


 明るい大きな声で出迎えてくれたのは、商隊で一緒だった商人見習いのガッシュである。

 

 「あっ、ヨージさんいらっしゃい。本日はどのようなご用件でしょうか?」

 「いや、今日は1日観光をしてあちこち見て回っていてね。近くにきたから寄ったんだ。ガッシュは店番かい?」

 「ええ、マーレさんは大事な用があるってことで、当分は店番です。マーレさんの仕事が片付くまで行商は休止です。」

 「ふーん、そうかい。マーレさんに挨拶しようと思ってきたんだが、忙しいんならまた今度にするよ。」


 そう言って店の外に出ようとしたところ、奥からマーレさんが出てきた。


 「おっ、ヨージじゃないか。どうしたんだ。なんか相談ごとか?」

 「いえ、今日は1日休日にして今はバレス内の観光のためにあちこち見て回っているんですよ。それでお店の近くに来たんでちょっと寄ってみたんです。」

 「おうそうか、遊びに来てくれたのか。今ちょうど俺も作業が一段落終わって手が空いたんで休憩にするからちょっと上がれや。おいガッシュ、適当に飲み物を2つ俺の部屋にもってこい。」

 「はい、わかりました。」

 「じゃぁ、こっちが俺の執務室だ。」


 そう言って、俺を部屋へと案内してくれた。

 部屋はかなり広く、壁には棚がびっしり並んでおり、そこには羊皮紙の束が綺麗に整頓されている。

 たぶん、所属している商隊の決算報告書とか収支報告書とかなのだろう。

 部屋の真ん中にはいかにも高そうな机があり、その前にはこれまた高級そうな長いテーブルと椅子がある。

 俺はいすの1つに促されて座り、正面にマーレさんが座ると、ガッシュがノックして入ってきてレモンティを置いていった。


 「バレスに来て数日になるが、どうだうまくやれているか。」

 「ええ、おかげさまで。安くてサービスの良い宿屋を見つけました。昨日はバレス平原で魔物狩りをして、そこそこ儲かりました。」

 「おう、そうかそうか。別れた後気づいたんだが、お前はこの街がはじめてだったのをすっかり忘れていてな、そのあたりが抜けていて悪いことをしたなと思っていたんだが上手くやっているようで良かった。」

 

 俺をボッチにした時は少し酷いと思ったが、そのことについて実は考えてくれていたというのは少しうれしかった。

 まあもう過ぎたことだからどうでもいいことだ。


 「そういえば忙しいみたいですね。行商から帰って間もないのに休みは無いんですか?」

 「うん、まぁ、それがな・・・、現在な、ココのすぐ隣の隣国のアレスという都市で大規模な小麦の買取があるんだが、その対応に皆おわれているんだ。かなり高値で買ってくれるんで商人として儲けれる絶好のチャンスだからな、休み返上で対応している。」

 「へぇ、そりゃ大変ですねぇ。」

 「こればかりはしょうがない。商機は急に来るからな。それをみすみす見逃すわけにはいかん。これも商人の性だな。」

 「でも、なんでそんなに小麦が必要なんでしょうかねぇ。隣国は飢饉でも起きてるんですか?」

 「いや、そうじゃないんだ。これはまだうわさの段階でほんとかどうかわからんが、小麦と同時に裏で武器の売買があるらしい。」

 「えっ、そんなこと俺に話してもいいんですか?」

 「はっ!お前に話してもお前がこれで何か出来るわけでもないだろ。それにうわさの段階で何もはっきりしていないからな。」

 「そうですか。」

 「ただ、何かが起きる可能性はあるんでな。それの心積もりでもしておけばいいんじゃないか?」


 話がー段落したところで、ドアのノック音がしてガッシュが入ってきた。

 そして、マーレさんに何か耳打ちし出て行った。

 

 「悪いが、大切な客がきたみたいだ。今日はここまでだ。」

 「いえ、面白い話を聞かせてもらいありがとうございました。俺はこれでおいとまします。」

 「おう、じゃまた遊びに来い。」

 

 そう言って俺はダレン商会を後にした。

 その後、俺は商業区で武器店やら防具店など冷やかし半分に見て回った。

 何も買わずただ見ているだけなので、店主達には嫌な顔をされた。

 そんななか、ある一軒の店に入った。


 「いらっしゃい。」

 

 年をとったばぁさんが、低い声で俺を値踏みするように見ながら挨拶する。


 「魔法道具屋で何か入りようかい。あんたに売れそうなものはなさそうだがね。」


 入っていきなり出て行けと言わんばかりの態度に正直ムッとしするが、そこは紳士の対応、


 「えーっと、ロッドかワンドはあるかい。」

 「へっ、あんた魔術師かい。そんなようには見えなかったよ。そりゃ悪かった。ちょっとまってな。」


 ばぁさんは席を立ち、奥に入って大小10本の杖を持ってきた。


 「さぁどれがいいかね。」

 「ああ、じゃぁ、この中で一番良いのはどれだ。」

 「それは、この一番大きなやつさ。値段は100万ゼニーだ。」


 高っ。俺はあまりの値段の高さに驚いた。


 「高いかい。今あるうちの品では一番高いが、世の中にある杖のなかじゃ中くらいのもんだがね。」

 「じゃ、この1つだけ極端に短いのは。」


 手首から肘の半分くらいの長さの木の棒で、先端に半透明な水晶のようなものがはまっている。


 「おっ、なかなか良いものを選択するね。ただこれは主に子供用だがね。」

 「子供用を大人が使ったら問題でもあるのか。」

 「いいや無いさ。ただ武器としては使えないというだけで、詠唱道具としては関係ないさ。」

 「ふ~ん、じゃあ幾らだ。」

 「まぁこのタイプはなかなか売れないからね。大まけにまけて、20万ゼニーだね。」

 「高いな。」

 「これでも6割引きにしてるんだよ。」

 「じゃ、なんでそんなに安いんだ。」

 「うーん、じゃあすべてを話すよ。通常は魔術師が勉強を始めるときは、練習のときのみ師匠から杖を借りて練習するんだ。そうしてある程度見込みがあれば杖を買うことになる。ただ、魔法道具は通常よりかなり割高だ。だから一生使えるものを買おうとするからどうしても武器としても使える大きな杖になるって寸法さ。」

 「じゃあこれはなんだよ。」

 「これは、あたしが個人的に趣味で作ったやつさ。貴族様たちなら子供に買い与えると思ってかなり金をかけて精巧に作ったんだが、結局おんなじ理由で売れなかったのさ。まったく当てが外れちまった。だが、性能は私が保証するよ。絶対に損はしないよ。駄目なら返却にも応じる。」

 「う~ん、そうだなぁ・・・・」

 「よぉーし、わかった、15万・・・10万・・・それじゃあ8万ゼニーでどうだ。」

 「よし、買った!」


 俺はばぁさんの巧みな話術に騙されたような気がするが、その場のノリで全財産の半分を使うことになった。

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