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第16話 鍛冶屋のガフィ

 俺は昨日と同じように朝の4時に目が覚めた。

 大金が入ったので夕食の後、本当は夜の街で遊ぼうかと考えたがやめた。

 俺の性格からしたら、よくある宝くじで億万長者になった人が、最終的に破産するような状況になりそうで怖い。

 確実に同じ額だけ稼げるようになり、身の丈が合うまで使い道を模索しようと思った。

 ちなみに現在の所持金は17万ゼニー近くあり、日本円だと約170万円である。

 1日の宿代と食事代を考えると400ゼニーくらいなので、一年間は余裕だ。

 ただ、こんな大金を持ち歩くわけには行かないので、昨日セリーヌちゃんとのお話の後で冒険者ギルドのサービスである銀行に16万ゼニー預けた。

 冒険者ギルドには冒険者が日ごろ困る可能性のあることについていろいろ補助してくれる。

 預金サービスもその1つだ。

 フィールドに出れば何が起きるかわからない、アウトローな職業である。

 怪しい奴らに狙われないためにも、大金は持ち歩かない方が安全なのだ。

 金は冒険者ギルドが完全に保証してくれるので絶対に大丈夫である。

 冒険者ギルドは大陸全土にわたって巨大なネットワークになっており、条件によっては王侯貴族でも簡単に口出しできない。

 まあ、他にもさまざまなサービスがあるが、それはおいおい使っていこうと思う。

 そういうわけで昨日は疲れもあったのでさっさと寝た。


 部屋でごろごろしながら時間をつぶし、朝の7時ごろに1Fの食堂に下りてきた。

 

 「おはよう、おやじさん、朝食をたのむよ」

 「あいよ、ちょっとテーブルにすわってまってな。すぐに用意するからよ。」


 俺は通りが見える席に座り、朝早くから仕事始めている商人やすぐ隣の区にある工場区で働く職人たちの通勤を眺めていた。

 

 「おう、エルバン、今日も朝食たのまぁ」


 そんな中、背の低いひげがもじゃもじゃのがっちりした体格の男が入ってきた。

 俗に言うドワーフっていう種族だろう。

 あれ?ここは通常昼と夜しか食堂はやってなかったはずだった気がするが?

 俺は入ってきた男を遠めからみながらそんな風に考えていた。


 「おう、ガフィ、おはようさん。ちょっくらまってなすぐに用意するからよ。」

 

 宿屋のおやじはいつものことのように受け答えをしていた。

 そうして、その男は俺を見て、近づいてきた。


 「おう、お前さんが、奇特な冒険者か!」

 「ええっと、どちらさまでしょう?」

 「おう、わしはガフィていうものじゃ。隣の工場で主に武器や防具の職人をしている。」

 「はぁ、あっ、俺はこの宿を使っているヨージです。よろしく。」

 

 なんか、馴れ馴れしい感じがするが、あまり嫌な感じがしないのでとりあえず挨拶を返す。


 「お前さん、よくこんな不便な安宿に泊まっとるなぁ。」

 「おぃ! おまえそれ以上言ったら追い出すぞ!」

 

 エルバンは2人分の朝食を持って、ちょっとムッとした感じでその男に言った。


 「おう、すまんすまん。ちょっと本音が出てしまった。かんべんかんべん」

 

 俺は、本音かよ!、と心の中で突っ込みを入れた。

 

 「こいつはな、俺が昔冒険者をやっていたときの仲間なんだ。俺が宿屋を始めるとこいつも冒険者をやめて職人になったんだ。」

 「へぇー、エルバンさんは元冒険者だったんですか?」

 「そうよ。こいつとこいつの奥さんとわしと、他2人の5人で冒険者をやっとったんだが、急に結婚して宿屋を始めるって言い始めて、俺も丁度良いから職人になったんじゃ。」

 「ただよ、ガフィはまだこの風貌でまだ独り身なんだ。家はこの近所でな。だから朝昼晩毎日うちに飯を食いに来ているということさ。」

 

 2人ともいつの間にか同じテーブルに座り、俺に説明をし始めた。


 「まぁ、ここの宿の食事は旨いですからね。毎日来るのはわかります。」

 「おっ、兄ちゃんうれしいこと言ってくれるね。そうだろ!そうだろ!」

 「俺的には困るんですが、正直2Fも全部食堂にすればもっと儲かるんじゃないかと思うんですけどね!」

 「おっ!おまえさんもそう思うか。わしもそうせいといっとるんだが、全然聞こうとしないんじゃ。」

 「これだけは、ゆずれないな。誰がなんと言おうとも、俺は宿屋のおやじで飯屋じゃねぇ!あくまで料理は趣味だ趣味!」

 「まぁ、お前さんがそういうのならそれでいいさ」


 2人はあれこれ悪態をつきながらも、お互いが気に入っている様子で話していた。


 「しかしな、ここ最近はずーっと泊り客がおらんで、かなりしょげとったんだがな。奇特なお前さんが長期滞在するって言うんで絶対ににがさねぇっていってたんだぞ。」

 「おまえぇ、ばかやろう!大切な客になんてこというんだ。逃げられたらどうするんだよ!」

 「大丈夫ですよ。俺はとりあえず3ヶ月は滞在することに決めましたから。」

 「おっ、まじか。まいどあり!」

 「こんな不便な安宿のなにが気に入ったのやら・・・奇特だの。」


 そう言ってドワーフのガフィはかわいそうなものを見るような目で俺を見ていた。

 その後、3人で話しながら楽しく朝食をとった。


 「それで、ガフィさんは職人さんなんですよね。」

 「そうじゃが。」

 「武器や防具の修繕や調整とかは頼めるんですか?」

 「おう、問題ないと言いたいところじゃが、通常は店を通してもらわんと駄目じゃ。一応わしも雇われじゃからな。」

 「ああそうですか。」

 「なんだなんだ、やってやれよ。兄ちゃんは俺のお得意さんなんだから、ちょっとは融通しろよ。」

 「わかったわかった。ただし、他の奴には言うなよ。これでもわしは直接名指しで指名がくる腕なんだから、店を通さず予約を無視すると困るんでな。」

 「そんな有名な人だったんですか。なんかすみません。」

 「まあ、エルバンの頼みだし、わしもお前さんが気に入ったので、やってやるよ。とりあえず持ってきな。」

 「わかりました。ちょっと待っててください。」


 そう言って、俺は部屋に戻り武器と防具をすべて持って降りてきた。

 

 「お前さん、えらいたくさんの武器を持っとるなぁ。これ全部使うのか?」

 「ええ、俺はソロでやっているんで、相手によってその都度武器を変更するんですよ。」

 「ほお、面白い方法でやっとるな。ただそんな方法じゃと、器用貧乏になりそうじゃがなぁ。」

 「この先パーティを組むようになれば考えますよ。」

 「まぁ、お前さんの好きにすればいいんじゃが。」


 そういいながら、ガフィはナイフやショートソードと短槍をチェックしていき、だんだん険しい顔をし始めた。

 俺は、あれ?という感じでそれを見ている。


 「これ、本当にお前さんが使っておるのか?」

 「ええ、そうですよ。」

 「うーん。」

 「どうした、ガフィ。」

 「手入れは素人じゃが、それなりにちゃんとやっておる。すべて安い武器じゃがの」

 「なんだどうした」

 「この使い込みを見ると、お前さん相当魔物を倒しておるのぉ。100や200の数じゃないぞ、この使い込みは。パッと見、冒険者を始めたばかりにみえるがの。」


 おいおい、ここでも俺はひ弱に見えるのか。

 なんか前にも何度か同じようなことを言われたような気がするが。

 まぁいいや。

 それはおいといて、俺はガフィの話を聞いて、このおっさんちょっと見ただけで討伐した魔物の数がわかるのかと驚いた。

 実際、タレス村では500近いゴブリンを倒し、護送の際にも俺一人で無双していたから、数だけなら600程度は屠っている。


 「へぇすごいですね。見ただけで討伐数がわかるんですか。まあ弱い魔物ばかりですけどね。合わせると結構な数になると思います。」

 「よしわかった。とりあえず代金は3000ゼニーでどうじゃ。」

 「えっ?そんなに安くていいですか?」

 「まぁの、元が安いしちょちょいと手直しする程度じゃからな。かまわん。」


 正直、提示した三倍の値段を予想していたが非常にラッキーだ。


 「じゃ、よろしくお願いします。」

 「よし、わかった。他の仕事の調整もあるのでな。3日預かることになるがいいか。」

 「ええかまいません。ちょうど数日休もうと思っていたところですから。」

 「よし、交渉成立じゃ。」


 俺はガフィさんに3000ゼニー渡して装備一式修繕してもらうことにした。

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