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第15話 魔物研究と夕食

 解体屋のおやじ達の仕事を俺はまじまじと見ていた。

 ぱっぱ、ぱっぱと切り分けられていく。

 バッファローは一応魔物に分類されるらしいが、ぱっと見は筋肉が発達したちょっと角のでかい闘牛だ。

 つまり、所詮牛でしかない。

 内臓の解体を見てもそれが見て取れる。

 胃は4つに分かれていて、反芻できるのだろう。

 脳みそも体の割りに小さい。

 体全体は筋肉で覆われている。

 注意すべきは巨体を使った頭からの体当たりのみだ。

 つまりは所詮はその程度なのである。

 デカイ胴体に細い脚、タックルしか能が無い知能。

 解体して体の構造を見れば、牛でしかない。

 闇雲に怖がる必要は無いのだ。

 解体屋のおやじが言うにはこのように魔物を狩って解体することはまれにあるということだ。

 つまり、今後強敵に遭遇する前に解体屋で事前にあれこれ魔物の研究をすれば結構善処できるんじゃねぇかなと感じていた。

 こういった事前情報は今後の戦闘に対してかなりアドバンテージになるはずと思った。


 俺は子供冒険者達のカインと解体屋の前で別れて、冒険者ギルドに向かった。

 本日の本来のメインであるゴブリン共の換金があるからだ。

 15分歩いてギルドに到着し、朝居なかったセリーヌちゃんの前の行列に並んだ。

 やはりセリーヌ嬢は人気がある。

 男共の考えは皆一緒のようだ。

 つまり、並んでいる奴が野郎ばかりなのだ。

 15分してやっと俺の番になった。


 「あのー、魔物討伐で換金に来たんですが」

 

 俺は猫なで声で、セリーヌ嬢の前でもじもじしながら耳の束を差し出した。


 「ヨージ様、ご苦労さまです。これは大量ですね!ちょっとお待ちください」


 セリーヌ嬢は昨日会った俺の顔を覚えてくれていたようだ。

 心の中で俺は大きくガッツポーズをし、よし!第一段階成功!と叫んでいた。


 「では43体で、合計12800ゼニーになります」


 あれ、タレス村の討伐料金よりかなり高い。

 予想では6000ゼニーくらいだと思っていたから倍だ。

 やっぱりあの村長俺が相場を知らないことをいい事にちょろまかしてやがった。

 なんとふてぇやろうだ!

 

 「えっーと、お気に召しませんでしたか?」

 

 セリーヌ嬢は俺の顔を見て不安な感じだ。

 おおっといけねぇ、まったく関係ないセリーヌちゃんにいらぬ不安を与えたようだ。


 「すみません。ちょっと別のことを考えていまして、討伐料金に不満はまーったくありません」

 「そうですか」


 セリーヌちゃんはほっとした様子が顔にありありと出ていた。

 俺ってそんなに嫌な顔をしていたか?しまったマイナスポイント発生、何とか挽回せねば。


 「今日はちょっといろいろありまして少し疲れているみたいです。なんかごめんね」

 「そうですよね。これだけの量狩ってくる凄腕ですからいろいろあるんですね」


 ちょっといろいろな面で勘違いしているようだが、いつものかわいい笑顔に戻ったので良しとしよう。


 「それじゃ、また」

 「ご苦労様でした」


 あまり長居をしても、後ろから突き刺さる視線が痛いので、俺はスッとギルドをでて宿屋に帰った。


 「おう、無事にかえってこられたか!」


 宿屋のおやじのエルバンは陽気に迎えてくれた。

 俺はそのおやじに大きな包みを渡す。

 

 「なんだこれ」

 「ちょっとバッファローを狩りましてね。そのお土産です」

 「なにー!ちょいまて、意味わからんが」

 「いやいや、平原でバッタリあったのでちょちょっと倒したんですよ。それで美味しそうな部位を8kgほど持って帰ってきたので明日の夕飯にでも調理してくれれは、残りは差し上げます」

 「はぁ~、なんかよくわからんが。くれるんなら有難く頂くよ」

 「それで風呂に入れますか」

 「おう、すぐ沸かすからちょっと部屋で待っててくれ」

 「あと、そのあとで今日は夕食をここで頂くんで日替わり定食一人前よろしくお願いします」

 「おう、まいどあり」

 

 俺は、一度部屋に戻って装備を外して装備の汚れを綺麗に落とし、風呂に入って今日一日の戦いの汚れと疲れを綺麗さっぱり流した。

 風呂から上がると、上下スエットに着替えて、そのまま席に座って夕食がくるのを待った。


 「なんだ、珍しい服だな。どういう素材だ?」

 

 おやじは食事をテーブルに置くと俺が着ているねずみ色のスエットに興味を持ったようだった。

 俺は適当な感じで説明して、目の前にあるデッカイ白身魚のソテーのタルタルソース味を堪能した。

 白身魚にはしっかり下味がついているし、ちょっとピリッとしてちょっと甘酸っぱいタルタルソースが完全にマッチしている。

 マジ旨い、これでご飯があれば最高だ。

 この宿の宿泊客は現在俺一人でそれだけだと大赤字だが、それを1Fの食堂が完全にカバーしている。

 昨日もそうだが、夕方になると満員御礼で外で並んでいるくらいだ。

 まあ、この旨い飯にありつけるのならちょっとは並ぼうというものだ。

 おやじと女将さんが作る料理が絶品なのだ。

 いっそ全部食堂にすればいいじゃないかとふと思いながら、あっという間に綺麗に平らげたのだった。

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