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第14話 小金持ち

 「おい、お前ら、どこか怪我は無いか?」

 

 俺はバッファローの周りでキャッキャ言っている冒険者の子供達に確認した。

 子供らは各自思い出したかのように体中を確認する。

 

 ぱっと見で、2人ひざ小僧をすりむいているので、土魔法をOFFにし回復魔法をONにしてヒールをかけてやる。

 これで魔法は完全に打ち止めだ。

 MPを回復するアイテムを持っていない現在、少なくとも、フィールド回復で一時間は待たないといけない。

 MP回復アイテムは効果の割に馬鹿高いので、現在の金欠気味の俺様の懐事情では買えないのだ。 


 「ありがとうございます」


 綺麗に傷跡が無くなり、

 弓職であろう女の子がお礼をいい。

 更に盾職であろう男の子が、

 

 「兄ちゃんすげぇな、魔法も使えんのか!」


 と更に驚いた様子でキラキラした目で見上げてくる。

 

 「使えるのは超初級の魔法だがな。あと、これで1時間は打ち止めだ。だからもう逆さにしても何も出んぞ」

 

 はじめて魔法を使って盛大に気絶したときに比べれば多少回数は増えたが、初級の土魔法2回と回復魔法2回でガス欠することを考えると、たいして成長していない。

 正直、もうちょっと何とかならんものかなぁと思っていたら、


 「いやすげぇよ、俺昔魔術師になろうと思って勉強したからわかるけど、ロッドもワンドも無しで、更に無詠唱で4発も使えるっていうのはかなり才能があるぜ」


 弓職であろう男の子が俺にそう言ってきた。

 むむっ、なにか聞き捨てならないことをこのお子様が言ったぞ。

 これはちょっと詳しく知る必要があるな。


 「どういうことだ?」

 「なに言ってんだよ。杖なし詠唱なしだと通常よりかなり精神を削るだろ」

 「えっ、そうなの?」

 「えっ、マジしらねぇの。こんなの最初に習うじゃんか。基本中の基本だろ」

 「えぇぇっと、・・・俺様は天才だから全部我流なのだ。だから知らないんだ・・・もん」

 

 基本中の基本だと言われてなぜか恥ずかしくなり、最後のあたりはキャラが変わってごまかそうとした。


 「はぁ~っ、マジで知らないの?我流?我流で魔法なんか使えんの?オレちょっとショックだよ。5年ねばって勉強して才能無いから最近やっとあきらめたのに!!」


 彼は遠くを見つめて、世の中の理不尽さを痛感したようだ。

 何か若い子の夢を無残に摘み取ったみたいで、チクリと胸が痛んだ。

 ボタンのON・OFFのチートだからしょうがないじゃないか。

 俺は自分にそう言い聞かせた。


 

 ちなみに、助けた子達は、やはりまだ子供の冒険者だった。

 とりあえず、ねほりはほり聞くと怪しいおじさんになってしまうので、こういう時はステータス表示スキルをONにして、メンバー構成を盗み見る。

 

 頭の上に浮かんだラベルを見ると、メンバーは

 盾職 カイン 男 人族 14才 LV3 ランクF リーダー

 盾職 ダン 男 猫族 13才 LV2 ランクF

 盾職 ミシェル 女 人族 14才 LV3 ランクF

 弓職 ムーイ 男 人族 14才 LV3 ランクF

 弓職 キュィ 女 犬族 13才 LV2 ランクF

 となっている。

 残念ながら、各種容姿は美男子・美少女とは行かず、まあ普通という感じだ。


 盾職と弓職のみで少し歪に見えるパーティだが、低レベル冒険者は皆こんな感じだ。

 基本的に魔法職や回復職は才能が必要なため数がもともと少ない。

 そのため、彼らはギルド登録した初心者でも多くのパーティから勧誘が殺到し、大体高レベル冒険者達のパーティに入ることになる。

 結果、余った子達でパーティを組むことになるのでこのようなパーティが低レベル層ではたくさんいるのだ。

 まあ、そもそも相手をする敵も弱いので、必要ないといえば必要ない。

 ガル達のパーティのように低レベルから回復職のナリアや魔法職のキラがいるほうがかなり珍しいといえるのである。


 とはいえ、非常に有用な情報を得ることが出来た。

 詠唱はともかく、いわゆる魔術師の杖的なものを使えば消費魔法量が減ると言うのは、バレスに帰ったら実験・研究する必要性がある。

 俺は一人でブツブツ考えながら独り言を言っていると、


 「なぁなぁ兄ちゃん、このバッファローどうすんだ」


 パーティのリーダーのカインが擦り寄った少し甘えた感じで俺に聞いてきた。

 

 「どうするとはどういうことだ?」

 「とぼけるなよぉ。バッファローは解体屋に持っていって皮とこの大量の肉を売れば結構な金になるじゃんか!」

 「えっ!?そうなの」

 「えっ!?それも知らなかったのかよ。あー、しくった。言わなきゃよかった。くっ、損したーー」

 「おいおい、助けてもらった分際でそんなことをのたまうのかぁ!」

 「おおっと、いけねぇ。心の声を聞かれちまったようだ。ごめんよ。兄ちゃん」

 「しょうがないやつだな。・・・じゃぁな、こうしよう。これからお前らはバレスに戻って荷馬車を借りてきて、バッファローを運べ。そうしたら売り上げの1割を出してやる」

 「えっ!マジでいいの。もう取り消しできねぇからな。約束だぞ。よしみんなすぐにバレスに戻るぞ」


 そう言ってカインは俺に反論の余地を与えないかのように、他の仲間を連れて走り始めた。


 「早く帰ってこいよ~」


 俺は走っていく子らに大声で叫んだ。



 二時間して彼らはかなり大きめの馬車を持ってきた。

 魔法量が回復した俺が補助魔法のレビテーションをバッファローにかけて真上に浮かし何とかバッファローを荷台にのせることが出来た。

 そして、そこから1時間かけてバレスに戻った。


 戻る最中俺はカインに何でお前らがバッファローに追い掛け回されることになったのか聞いた。

 彼らが言うには、昼ちょっとすぎに平原に着き、本当は街道沿いにいるゴブリンを数体倒してすぐに帰る予定だったが、なぜか今日はいつもと違ってゴブリンがいなかったということだ。

 しょうがないので平原の中にどんどん入っていき、遠目にバッファローが見えたのでヤバイと思って走って逃げ出したら追いかけてきたと言うことだった。

 牛さんは逃げる奴を追いかける習性があるからなぁと一人考えていると、

 

「んん?」


 ええっと、正午ごろと言えば、俺が街道近くのゴブリンやオークを狩り尽して、休憩をとろうと思っていたところのような気がする。

 あれ?こいつらが襲われたのは、間接的に俺のせいなのか?

 それ以上聞くと、やぶ蛇になりそうなので、このことについては心にそっとしまいこんで、あえてこれ以上言及することは避けることにした。

 


 バレスに到着し、そのまま商業地区の解体専門におこなう店に到着した。

 店の主はバッファローを見て


 「こりゃ、えれぇでかい奴を持ってきたな。これお前たちで倒したのか?」

 「いいや、倒したのはこの兄ちゃん1人だ」

 「そりゃすげぇな。この大きさだと中級の冒険者パーティでもてこずるサイズだぞ。あとなんで前足が無いんだ?」

 「前足も兄ちゃんが取っちまったんだ」

 「なんかよく言っていることがわからんが、とりあえずまあいい。これからすぐに解体に入り査定をするよ」


 そう言って解体屋の親父は、店から仲間を呼び。4人がかりで解体し始めた。

 

 査定の結果約15万ゼニーで売れた。

 キロ単価の値段は安かったが、4トン近く体重があり、安値を肉の量が思った以上にカバーした。

 カインたちに約束どおり一割の15000ゼニー渡した。

 5人は大喜びして飛び上がっていた。

 店の主から運んだだけで一割は多すぎると言われ、今度は俺が運んでやるよと皮肉られた。

 ただ、俺の心にそっとしまった先ほどの罪悪が、損をしたという感情に大きな歯止めをかけた。

 それにしても、15万ゼニーといえば日本円で150万円くらいということになる。

 簡単な方法で倒して、こんな大金を簡単に得て大丈夫だろうか?と小心者の俺は今後の自分の金銭感覚のズレが心配になるのであった。

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