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第10話 冒険者登録

 ぎぃぃぃ


 西部劇映画でよくある酒場のぎっこんばったんする通り抜けドアをくぐると、頑丈で重そうなテーブルが並んでいる。

 そのテーブルにはいかにも冒険者という格好の人たちが座っている。

 俺たちが、建物に入ると一斉にこちらを見る。

 というか、正確には俺を見る。

 みなさん俺を値踏みするような感じで一通り見ると、「使えネェ」というような表情のあとまたお互いの話に戻っている。

 

 「ガル、これってなに?」


 俺はその様子を隣に立っているガルに聞く。


 「ああ、みんな見慣れないヨージさんの値踏みをしているんですよ」

 「なんで?」

 「そりゃ、使える人材ならパーティに引き込もうと考えるのが普通ですから」

 「そういうもんなの?」

 「そりゃそうですよ。冒険者はなんだかんだいっても命をかけてますからね、パーティメンバーに少しでも強い仲間がいれば生存率はあがりますから」

 「ふーん。で使えネェというような表情に見えるのはぼくだけですかい?」


 ちょっとふてくされた感じで話を返すと、


 「前にも言ったっすけど、ヨージさんパッと見弱そうっすからね」


 ミルがある意味止めの一撃を俺に加える。


 「ふーん。いいんだもん!俺様はこれから華麗なる冒険者生活が始まるんだから。あとで後悔して泣きついてもパーティには入ってやんないんだもん」

 「ヨージさん、なんか気持ち悪いんでその変な言い回しやめてください」


 ナリアからちょっと引いた感じで言われてしまった。


 「ほら、馬鹿言ってないでさっさと受付に行くぞ!」


 マーレさんに押されて俺はギルドのカウンターの前に来た。


 「あのー、冒険者登録をしたいんですが?」


 俺は受付のかわいらしい女性にもじもじしながら話す。


 「ギルド参加ですね、えっと見習いですね」


 後ろからマーレさんが会話に入る。


 「いや違うんだ、ダレン商会のこのマーレが身元引受人になるから、そのことを考慮に入れてほしい」


 受付嬢はちょっと困った顔をして、後ろの先輩らしき女性に確認に行った。

 先輩らしき女性はすぐに奥の部屋に行き、部屋からちょっとごっつい男性の職員さんが歩いてきた。


 「これはこれは、マーレ様、いつもいろいろお世話になっています。このたびはこちらの方の身元引受人になられるとか?」

 「そうだ、そのあたりを考えてもらいたい」

 「わかりました。いつもお世話になっているマーレ様の紹介であれば問題ありません。正式採用にさせて頂きます」

 「そうか、悪いな」


 あっという間に、正式採用決定しました。

 ちなみに見習いからはじめると正式採用には早くて半年はかかるらしい。

 やっぱり、世の中コネですよコネ。

 俺はこのやり取りを見てどこの世界も人間やること基本はたいして変わらないなと実感した。

 

 その後は、ほんとにスムーズに手続きは完了した。

 マーレさん最高!

 あとから聞いたが、マーレさんは冒険者ギルドに商品をいろいろ融通したり、相場より高めの護衛の依頼を行う大得意様らしい。

 その人が、お願いするのだから断ることは出来ないみたいだ。

 あっという間に登録が終わり、バレス冒険者ギルド発行の冒険者証をもらった。

 冒険者証には、名前、年齢、性別、出身地、冒険者ランクが書かれており、出身地はタレス村となっていて、冒険者ランクはG級の最低ランクが記載されている。

 よくあるRPGゲームのようなレベルや職業やこれまでの戦歴などそのつど自動的に更新されるようなスペシャルな機能は無く、金属製のカバーで覆われた手帳のような物の中に手書きであれこれ書かれていた。


 「これは、初回は無料で提供しますが、紛失して再発効する場合は罰金として10000ゼニー支払うことになるので大切に扱ってください。あと細かいギルドの約束事はその中にすべて書いてあるので必ず一度は全部に目を通すようにしてください。以上で登録は完了です」


 最初のかわいい受付嬢はにっこり笑って手続きを終えた。

 案外チョロイなと率直に思った。


 ガル達は俺が登録している間に、護衛の依頼の報告を済ませていて待ってくれていた。

 すべての登録が終わったあとみんなで建物をでた。


 「これで晴れてお前も正式な冒険者になったな!よかったよかった」

 「ありがとうございます。みんなマーレさんのおかげです」


 俺は素直にマーレさんに感謝の言葉をつげた。


 「いや、たいしたことじゃない。今回の旅はお前がいてくれて非常に楽だった。こっちがありがとうというよ」

 「俺はもう商会に戻らなければならない。ここでお別れだ。まあ当分は商会にいるからなんかあればきてくれ。あとガル達も今回も護衛ご苦労さん。また次の護衛のときはよろしくな。じゃあな」


 そう言ってマーレさんと別れた。


 「それじゃ俺たちもこれで任務完了ですから、ここでお別れです。これから数日は休息を取ることになります」

 「そうか。いろいろ世話になったな」

 「いえいえ、またなんかあれば一緒に旅をしましょう。それじゃあ」


 そう言ってガル達とも別れて、俺は冒険者ギルドの建物の前でいきなりボッチになってしまった。

 あれ?みんなあっさりしてますね。

 こういう別れでは、「行かないで!」的なお涙頂戴ではなの?

 イマイチ釈然としない感覚におちいった27歳元営業マンから冒険者ランクG級になった俺がそこにいた。

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