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スイチュウカ
私はあの瞳に酔い恋に堕ちた。
その人は私の気持ちを知っていて宙に漂わせていた。
華は咲かずに生き地獄を味わっていた。
ゆらゆらと揺れたこの気持ちは水中花のように終着点を失った。
ゴボ
ゴボ ボ
水中に空気が吐き出される音が、頭の中でガンガン響く。
辺りが薄暗くて見えないが、水の中に居ることだけは身体の軽さと視界が揺らめくことでわかる。
(―…なんで、私は此処にいるんだろう。)
ただ、この光景にどこか懐かしさを感じる。
それを追求しようとしても、不思議と思考が固まって何も考えられない。
その時だった。
突如、グンッと右足に重みを感じた。
(なにかに引っ張られてる…!)
 ̄ ̄ ̄
そう気付くと同時に、微かに低い唸り音が聞こえた。
私はそれから逃げようと必死でもがいた。
ゴボゴボと空気が吐き出される音が激しくなる。
視界が徐々に白んでく。
全てが眩しいほどの白に染まった時。
私は全てを思い出した。
「…そう、ちゃん…―」