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第六の話 将来の夢、それはきっと思い出の宝箱(笑)

久しぶりにコロコロです。最近思ったことについて考えてたらネタになったので投稿することにしますた。最初は真剣に考えていたのに書き出すと真剣さが9割ほどなくなったお話をどうぞ。



「で、ここの部分は作者が何を伝えようとしていたかを示していたわけで……」


 そう言いながら、黒板にチョークで書かれた言葉を説明する茶髪のロングストレートの女性、国語教師の神楽真弓(現在実家から「はよ彼氏見つけろ」と催促されてる28歳)。それを見て真面目にノートを取っていく生徒達と、一部の寝ている生徒達。寝ている生徒には教鞭を振りながら空いた手で神楽お得意のチョークスナイプが発射されて眉間に炸裂。悶絶する生徒達、余裕で寝ながら回避または防御する生徒約一名。言わずもがな龍二。

 そんなことが一時間続き、やがて授業を終えるチャイムが鳴り響いた。





【キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンごぶぇあっ!?】

【教頭先生ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??】

【おい誰か救急車呼べ! 教頭先生が舌噛んで血ぃ吹き出しながら倒れた! 教頭先生が舌噛んで血ぃ吹き出しながら倒れたぁぁぁっ!!】





「「アンタがチャイムやっとったんかぁぁぁぁぁぁい!!??」」

「はい今日の授業終わりー。部活ない奴とかさっさと帰れよー」

「「少しは取り乱せよっ!!??」」


 チャイムもとい惨劇の音に教室にいる生徒のほとんどがツッコミ入れたが担任教師の神楽はさっさと教材まとめて出て行った。教頭の人格がないのか、あるいはどーでもいいのか。後者に一票。


 神楽が去ってしばらくスピーカーの向こうの惨劇について色々話していた生徒達だったが、やがて部活があるからという理由で次々と人がいなくなっていく。やがて教室には数える程度の人間しかいなくなっていた。


「さて、ちょっと早いが部活に行くか」

「あーあー、生徒会嫌だなー」

「いや生徒会長がそれ言っちゃおしまいでしょ……?」


 クセのない金髪のショートヘアーをした少女、立花・久美・アンドリューが大き目のスポーツバッグを担ぎあげ、その傍らで流れるような長くて黒い髪を揺らしながら伸びをする少女、斉藤香苗は気だるげに呟き、それにツッコミを入れるのは同じような長い黒髪を一本にまとめて頭の後ろに垂らした高橋花鈴。


「さて、んじゃ俺らも行くかな」

「あー疲れたっと」


 教室の後ろの席では、茶色に輝く短い髪をした楠田雅と、毛染め剤で金色に染めた髪をツンツンにして立たせている佐久間恭田も、疲労した体をほぐすように伸ばしながら席を立った。


「…………」


 そんな彼らを余所に、一人窓際の席でぼーっとしている青年がいる。


「あれ? リュウジさんどうしたんですか?」

「帰らないの?」


 一人動かない彼、龍二を見て、アルスとクルルが訝しげに問う。声に反応したのか、龍二はなんとなしにその場にいる全員に向かって声をかけた。




「あんさぁ、お前ら夢ってあんの?」

「「…………」」




 止まった。さっきまで動いていた時が、その時ばかりは止まっていた。


「んあ? どしたお前ら?」


 急に止まってこっちを凝視する彼らを見て、龍二は首を傾げた。


「……龍二、お前……なんか変なもん食ったのか?」

「え、え、ホントに龍二……なの?」

「さてはお前……偽物!?」


―――ドォンッ


「ひでぶっ!?」

「「「すんませんでしたっ!!」」」


 突然の龍二の発言に戸惑う雅と花鈴と久美に向かって龍二が手元にあった机を彼らの横を通り過ぎる形で投げつけて強制的に土下座させて黙らせた。

 余談だが、机の主は次の日に黒板にめり込んだ己の机を見てちょっともらした。

 あとツンツンの金髪が机をモロに食らって壁にめり込ませているのもどうでもいい話だ。


「ったく、人が珍しく真面目に話そうとしてんのにテメェらときたら……」

「あ、自覚はあったんだね」

「あぁ?」

「ごめんなさい椅子は勘弁してください」


 理不尽にダメージを食らいかけるも難を逃れた香苗にも土下座させた。


「……で、何でそんな話を急に?」


 アルスが冷や汗を流しながらなんとか穏便に済ませようと龍二の話題に乗った。


「いやほら、さっきの神楽さんの授業、将来の夢に関するエッセイだったじゃん。そんでなんとなく、な」

「おお、リュウくんがなんかすごいまともに見える」

「貴様にだけは言われたかねぇなこのクソ不真面目魔王」

「クソはいらないー!」


 ギャーギャー騒ぐクルルは無視された。


「ふーん、でも確かに将来の夢っていうのはよく話題にされるよな」

「あーわかる。なんか漠然としてるの多いもんね」


 龍二の話に興味が湧いたのか、雅と花鈴が同調して龍二の周りの席にある椅子に座る。それに続いて香苗と久美、アルスとクルルも同じように龍二を囲むように座った。頭から血をダラダラ垂れ流してる恭田っぽい何かも復活して座った。


「まぁ、アタシは大体決まってるけど」

「ああ、オメェは確か技術職になるんだったな」


 花鈴の言葉に龍二は思い出したように頷いた。


「何でお前が知ってんだ?」

「伊達に幼馴染やってねぇべ。こいつのことは何でも知ってるからな」

「え……?」


 雅の疑問に応える龍二に、花鈴が呆けたように言う。同時に四つの席がガタッと音をたててる。


「ちょ、あ、アンタなんでも知ってるって、そういうこと……」

「体重2キロくらいで一時間落ち込んでたら世話ねぇけどな。タイヤキ食い過ぎたバ花鈴」

「そーゆー『何でも』は忘れなさいっっ!!!」

「マジか。テキトー言ったら当たったか」

「アンタのテキトーの正確さが怖すぎるわ!!」

「そういやお前、べったら漬けどんだけ食ってんだ。そら太りもするわ。いや確かにあれご飯に合うけどよ」

「いやああああああああああそれ言わないでええええええええ!!!」

「つーかオメェ犯罪じゃねぇか。自重しろ」

「断る」

「0.2秒で返すとは恐れ入った。死んで来い」


 顔を真っ赤(照)にした花鈴に事もなげに言う龍二に顔を真っ赤(怒)にした花鈴の絶叫と雅に静かなツッコミが炸裂した。

 因みに龍二の名誉のために補足しておくと、偶然一階の窓から花鈴が食事してる光景を目撃したということであって、犯罪的なことはない。が、気心の通じた仲だから言えることであって、よい子は女の子の前でこんなこと言わないように。


(花鈴ちゃんずるい……私だってリュウちゃんにあんなとこやこんなところを!)


 よい子は間違ってもこんな生徒会長にならないように。


「……幼馴染……侮れないな……」

「何が侮れないんですかクミさん……」


 何が侮れないのかわからないのでこんな空手部主将にもなってはいけない。とゆーよりこの小説の登場人物のようにだけはならないように。コロコロとの約束。



花鈴の混乱が収まるまで数分。



「で、花鈴は技術職になりたいんだよな?」

「え、ええまぁね……昔から手先は器用だったし、こういう職に就きたいとは思ってたからね。具体的にどんなものを作るとかは決めてないんだけど」

「俺のヘッドフォン改造してくれたのも花鈴だったからな。腕は俺が保障する」


 龍二はそう言って首にかけてある彼のトレードマークでもあるシルバーメッキのヘッドフォンを指先でトントンとたたいた。


「え、マジでか? じゃあもうすでにレベルすごい高いんじゃねぇか?」

「いやいや、まだまだよ。これからどんどん伸ばさないと、そういう業界じゃ通用しないし」

「ついでに体重の記録も伸ばそうぜ?」

「あ゛?」

「あ、冗談じゃないからな」

「冗談って言っとけそこは」


 龍二の余計な一言で花鈴の顔がなんか女として色々ヤヴァイ感じになっている。わかりやすく言うと北○の拳になってる。


「そんで雅は?」

「俺? 俺は……そうだな」


 花鈴の怒りのオーラを煙を払うようにあしらう龍二に問われ、雅は少し考え込んだ。


「……弁護士、かな?」

「へぇ、すごいじゃない。立派な職業よ弁護士って」

「ああ、響きが弁当食い放題みたいな感じだしな」

「お前は全国の弁護士の皆様に向かって全力でアクロバティック土下座しろ」


 なんか色々間違えている龍二に雅がツッコんだ。


「……まぁ、あれだな。弁護士っつってもまだそうと決めたわけじゃないけど、やっぱ法律関係の仕事には就こうと中学の頃から考えてたし」

「でもやはり難しいだろう? 尋常じゃない程勉強しなければならないだろうし」

「そこはまぁ、根性だろ」


 心配そうに言う久美に、雅は笑って返した。


「そうだな、頑張って勘で行け。それでうまくいく」

「お前は全国の弁護士の皆様の目の前で火山口に向かってミサイル抱えて飛び込んで来い」


 だんだん龍二に対するツッコミが過激になっていく雅であった。


「それで、久美ちゃんはどうよ?」

「あたしか? あたしは刑事になるつもりでいる」

「うわ、これまた立派ね……」

「クミちゃんかっこいー!」


 花鈴に聞かれ、即答する久美に周りが驚く。


「そ、そんなことないさ。小さい頃から男より強くあれって、父さんから教わってきたからそれに倣ってるだけのことだ」


 照れ隠しのつもりか、久美はそっぽ向きながら言う。


「でも男であるリュウくんには勝てないよね?」

「魔王、シッ!」

「…………」

「ほらぁ魔王がそんなこと言うから落ち込んじゃったじゃないですか!?」

「ああ、ごめんなさいクミちゃん!?」


 キョトンとした感じのクルルの発言に一転してガクーンと机に突っ伏した久美をアルスとクルルは慰めるのであった。


「で、香苗は?」


 そしてそれをスルーする龍二マジ鬼畜。


「私かー。私はパティシエかなー」

「ぱてぃしえ?」


 久美を慰めていたクルルが反応する。


「うん、簡単に言うとお菓子を作ることを仕事にしている人かな。ほら、町のケーキ屋さんとかあるでしょ? ああいうところで働いている人達のこと」

「お菓子!? わぁ、私お菓子大好き!!」

「てか結構意外だな。パティシエになるなんて、お前そんな素振り見せなかったじゃん」


 そう言う龍二に、香苗は少し照れた表情で返した。


「家に美香と美紀、それとカルマとケルマがいるでしょ? 元々趣味で作って皆に作ってあげてたんだけど、ホントにおいそうに食べるからなんだか嬉しくなっちゃって。それで目指してみようかなーって」


 えへへ、と笑う香苗に龍二はヒューっと口笛を吹いて感嘆の意を示した。


「スゲェじゃねぇか。最近の菓子ってやたら見た目派手な奴ばっかで中身スッカスカな奴が増えてっから、俺お前に期待しちまうな。店開いたら行くから、食わしてくれよな?」

「り、リュウちゃん……!」


 何気なしに言う龍二に、香苗は感動する。

 目指してはいるが、それが実現するとは限らない。それでも、龍二に期待していると言われて喜ばないはずがない。香苗は少し泣きそうになった。


「まぁまずかったら店ごとぶん殴り飛ばすけど。マジで」

「全力全開で精進します本気で」


 別の意味で泣きそうになった。


「んで、お前はどうなんだよ?」

「え、俺?」


 皆が話してる間、ずっと黙り込んでいた恭田に龍二は顔を向けた。


「いやお前以外いねぇべ。なんか無いのか夢とか?」

「……いや、まぁ、夢ってほどでもないかもしんねぇけどよ」


 どこか気恥ずかしそうに恭田が言う。男がもじもじするのは結構気持ち悪いという典型である。


「んあ? そんな周りかしてみれば変なもんか?」

「いや、そういうわけじゃない、と思うけど……」

「何よハッキリしないわね。大丈夫よアタシ達は笑わないから」

「そうだな。少なくとも他人の夢をどうこう言う権利は俺らにはないな」

「………」


 花鈴と雅にフォローされ、恭田は再び黙り込む。

 それが数秒続いて、バッと顔を上げて決意の表情を皆に向けた。


「……そうだな。じゃあ、俺の夢は……」


 一泊置き、言った。




「俺の作中の扱いの悪さの改善」

「「「あ、それ無理だわ絶対」」」

「チキショウめぇぇぇぇぇぇぇ!!!」




 笑われなかったが即否定されて机をガンッ! と殴りつけて叫ぶ恭田の背後にどこぞの総統閣下が見えた気がしないでもなかった。


『ついでに言うと私は』

「オメェは永遠に包丁だ」

『チキショウめぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


 龍二の机の脇に立て掛けられたスポーツバッグ(エル入り)からもそんな叫びが聞こえてきた。


「で、アルスは……勇者だよな? それともなんかあるか?」

「ボ、ボク……ですか?」


そして急にアルスに話を振る龍二。いきなりのことに戸惑うも、しばし目を閉じて考え込む。


「……ボクは、まぁ、勇者ではありますけど、それ以外の道はないかなーって考えてる途中でして……えーっと」

「ああ、無理に言わんでもいいって。勝手に脳内補完しとくから」

「え、それすっごく嫌な予感しかしないんですけど……」

「失礼な奴だな。すでに俺の頭の中ではお前はマグロ一本釣りの達人だぞ?」

「ボク漁師になってる!?」


 龍二の中でアルスはどういう経緯でマグロ漁師になったのか。それはこの世の中においてニンジャの存在並に謎となっている。


「で、クルルは?」

「私? 私はねー」


 アルスと違い、話を振られてすぐに答える姿勢に入るクルル。すでに彼女の頭の中では将来のビジョンが浮かび上がっているようだった。


「私は将来、立派な魔王になって世界を征服!」

「猫に負けてる奴が生言ってんじゃねぇべ」

「猫に負けてるじゃないですか」

「猫に負けてる時点で終わってるわよ」

「猫に負けてるんじゃねぇ……」

「猫に負けてるんじゃなぁ……」

「猫に負けてるのではな……」

「猫に負けてるんじゃダメよクルルちゃん?」

「ちきしょーめー!!!」


 龍二、アルス、フィフィ、花鈴、雅、久美、香苗の順に総攻撃をモロに食らい、恭田とエルよりかたどたどしくも閣下となったクルルは机に頭をガンとぶつけてうつ伏せになった。


「じゃあ私は」

「安心しろ、今度からちゃんと蚊取り線香は外で焚くからよ」

「おい、誰がそんなこと言ったよ」


 フィフィの夢は虫ポジションからの脱出と決定された(強制)が遠回しに却下された。因みにフィフィは蚊取り線香の臭いは苦手である。普通に虫っぽかった。


「ふむ……やっぱ皆結構考えてんだなぁ、将来のこととか」


 龍二はどこか納得したような、それでいて感心したかのように呟き、椅子の背もたれにもたれた。一部なんか違う気もするけど。


「まぁな。まだどうなるかわからないけど、やっぱ目標とか持ってたらそこ目掛けて頑張ろうって思えるし」

「そう考えたらやっぱ将来の夢というのは大事だな」


 雅に追従するように久美がその場にいた全員の気持ちを表す。が、花鈴が「あ」と思い出したような声を上げた。


「そういや、言いだしっぺのアンタの夢とか聞いてないわよね?」

「あ、そうそう! リュウちゃんの夢は何なの?」


 香苗が身を乗り出し、目を輝かせながら問う。ズイっと至近距離まで顔を寄せるものだから、花鈴達が引き離すより先に龍二の目つぶしが炸裂。


「まぁ、なんだかんだでお前の夢って大体わかりきってるけどなー」

「あー、わかるわかる……」

「そうですね……ボクもなんとなくですけど、わかります」


 傍らで香苗が奇声上げながら目を抑えてゴロゴロ転げまわってるのは視界に入れずに、雅と花鈴、アルスはなんとなくといった風に言う。


「ったく、失礼な奴らだなオメェら」

「いやお前にゃ負けるわ」


 むっと眉をしかめる龍二に雅がすかさず返す。ガクーっと項垂れている恭田とクルル以外が全員一斉に頷いた。


「……この際、オメェらをボコにするのは後回しにして、とりあえず聞くぞ。どーゆーこった」

「うわぁ、サラリと死刑宣告しやがったよこの外道……いや、さ。お前のことだから全てにおいて“あれ”だと思ってよ」

「“あれ”?」


 そういった雅の脳裏には、柄付きのざるを手にどこかの厨房で汗水垂らして働いている龍二の姿があった。

 というより、雅だけじゃなくてその場にいる全員がそれをイメージした。


「……まぁ、一応聞いてみるけどさ……お前の夢、何なんだよ?」


 それでも全員将来を語ったのだから、龍二のも聞いておかないと不公平であるという事で、雅はこの後出てくる言葉を予測しながら聞く。


「ああ、俺の夢はな」

(……まぁ、十中八九ラーメン屋だろうな)


 なんせ、世界中をラーメンに染め上げようと公言して憚らない男であるがゆえ、そんな奴がラーメン屋以外に夢などあるはずがない。


「教師」


 それみたことか、と雅達は自分達の予想が外れて…………。






「「はっ?」」





 耳が悪くなったのかと思って聞き返す雅達。


「だから教師。俺、将来教師になる」


 …………。


 …………。


 …………。







 ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、チーン☆







「「ファーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!???」」


 龍二を除く全員が大絶叫。その絶叫は街全体に響き渡った。


「……んだよ、なんか問題でもあんのか?」

「問題あるわ! いや、問題ねぇとは思うけど、問題しかねぇよ!!」


 あまりの衝撃に雅のツッコミもよくわからないものになってしまった。


「ななななな何で? 何で教師? って言うか教師? 狂死じゃなくて教師? あ、KYOUSIか」

「カリンさん落ち着いてください!! ボクも落ち着いてください!! ていうかみんな落ち着いてください!!!」

「いやアンタも何言ってんのか全然わかんないわよ落ち着いて深呼吸しなさい!!」

「あの龍二が、全てにおいてラーメンを優先する龍二が、教師、だと……!? もしやこれは、宇宙の果てに存在しているという邪神の策略か……!?」

「久美ちゃんそれなんてクトゥルフ? 私はダブルクロス!!」


 もはや収拾がつかない状況の中、龍二は一人頬杖をついてそっぽ向いた。


「……どーせ似合わねぇよ。俺みてぇな奴には」


 ぶすっとした表情をする龍二。それを見て、アルス達は面食らった。普段から傍若無人で堂々としていて、マイペースを絵に描いたような性格をしている龍二が、自分の夢を信じてくれないという理由で拗ねている。普段の龍二からすればあり得ないことだった。


「……ちょっと可愛い」


 生徒会長は黙っててください。


「えっと、ごめん龍二。いや、正直意外だったからさ、アンタが教師になりたいっていうの。アタシも全然知らなかったし」


 拗ねる龍二に花鈴がフォローを入れる。それに対してうんうん頷く周囲に、龍二はジト目で睨みつけた。


「だからっつってそこまで動揺するこたねぇだろが……ったく」

「いや、ホントにごめんって。で、でさ? 何で教師になろうって思ったわけ? そこ知りたいなーって」


 普段なら鉄拳制裁でしばき倒す龍二のいつもと違う様子に、少しへっぴり腰で尋ねる花鈴。それを咎めることもなく、龍二は答えた。


「……まぁ、別に大した理由はねぇよ。未来ある若者がどうたら~とか、俺が教育を変えるんだ~とかいうもんじゃない」


 いつもと同じようなボーッとした表情。しかし、そこに込められた気持ちが並々ならぬことは、龍二の瞳からうかがい知ることができた。


「あ~……例えるなら信号とかよ。軽い気持ちで無視するのって多いだろ? そういう軽はずみな気持ちとかが後になって取り返しのつかないこととかになるっていうこととかを、ガキんちょ達に教えてやりたくてよ」

「「…………」」


 そう話す龍二に対し、一同はふと思い返す。龍二は過去、かけがえのない親友を自分の力の過信と浅はかな思考によって失ってしまっている。その件については龍二の中ではすでに決着はついてはいるが、だからといって忘れていい事件なはずがない。

 自分にできることは何か? それが龍二の中では、教師という立場となって、軽はずみな行為が時には取返しのつかない、一生物の傷を作ってしまうような人間を作らないように導いていくという考えに至ったのだろう。

 無論、教師以外の道もあるかもしれないが、誰かに教えるという手段で、教師という職業は最善の手の一つであることには違いなかった。


「……ごめん、龍二。からかったりして」

「俺も。そこまで真剣に考えてたなんて思ってなかった」

「気ニシナーイ」


 花鈴と雅の謝罪を、龍二はいつも通りのおどけた外国人風に返した。


「そうだな。あたしとしては龍二がラーメン屋の店長か何かかと思っていた」

「うんうん、ラーメン魔神と呼ばれているリュウちゃんだからねー」


 香苗の言葉に、一同はアハハハハと笑い声をあげた。そんな彼らに、龍二はきょとんとした顔をして一言。





「いや、ラーメン屋も目指すぞ?」





「「……ふぁ?」」





 一同、フリーズ。





「まず教師になって定年なったら退職してラーメン屋開く。んで改めて世界を全てラーメンで塗りつぶす。あ、いっそのこと教師でラーメンの素晴らしさも教え込んでやるか。そうすりゃ『世界ラーメン計画』もまた一歩前進するしな。うん、我ながらナイスアイディア」


 うんうんと納得したように頷く龍二。そんな龍二を見てしばらくフリーズしていた雅達だったが、いち早く復帰した雅が手拍子で「さん、はい」してから








「「結局ラーメンに行きつくんかあああああああああああああああああああああ!!!!!」」








 沈みゆく夕日に照らされる校舎。その中からすでに日常になりつつあるツッコミの絶叫が響き渡った。





 嗚呼、世界中のラーメンに幸あれ。







因みに私の子供の頃の将来の夢なのですが、将来について書いていた小学校の頃のプリントを見た結果、『3位 宇宙船のパイロット 2位 刀鍛冶師 1位 潮干狩り』でした。何考えてこんなんなったのか思い返しても思い出せません。


作中の「ちきしょうめええええ!!」の元ネタは『総統閣下 ちくしょうめ』で検索したら出てきます。結構古いネタですが、古い物にも魅力はあるということを知っていただければと思った次第。


次回、大長編になりそうでならない、そんなちょっと長めの連話。次の投稿はいつになるのかわかりませんが、頑張ってのんびりします。

また見てコロコロ~。この挨拶も自分の中で定着しちゃった。

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