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第一の話 ボクらにとっての日常

導入部みたいなものです。だから短めです。



 世界中の人々が、ボクを見ていた。


 行く先々では、ボクはいつも様々な人達に取り囲まれ、期待と希望に満ち溢れた目で見られていた。


 誰もが羨む力を、ボクは持っていた。


 けれど。




 誰も、“ボク”を見てくれてはいなかった。










 私は、生まれた時からすでに高い地位にいた。


 物心ついた時から、皆が、一族だけじゃなくて、人間も皆が笑って暮らせるような世界を作りたいと思った。


 それを成し得る力を、私は持っていた。


 でも。




 誰も“私”を理解してくれなかった。









 ある世界。科学が発達せず、魔法の力によって文明が成り立っていた世界。幻想が生き、精霊が世界を見守っている世界。


 人間が住まう大地は、緑溢れ、様々な生物が住まう平和の地。


 人ならざる者が住まう大地は、炎が荒れ狂い、凶悪な魔物が蔓延る魔の地。


 人間より遥かに強大な魔力を有した“魔族”なる者達は、遥か昔より人間達と敵対する間柄として、長きに渡る戦争を繰り返してきた。だが、人間達はある存在が現れたことにより、以降、悉く敗れ去ってきた。

 魔族を総べる存在。魔族にとっては偉大なる王、人間達にとっては恐怖の対象。



 魔王。



 魔力を多く保有している魔族の中でも一際強大な魔力を有し、それを難なく行使する者。その手を振るえば、並み居る人間の一個大隊を吹き飛ばし、全力を出せば一つの国が滅ぶとされる。

 誰もが思った。勝てるはずがない。魔王は正真正銘の化け物。たかが人間が、そんな存在に敵うはずもなかった。



 そう、ただの人間では決して勝てない。



 同じ人間でありながら、その身には魔王に引けを取らない多くの魔力を持った、神に愛され、選ばれた人間がいる。



 勇者。



 いわば、魔王と対となる者。光の加護を受けた魔法と剣で、魔を断ち切り、光を照らし、人々の希望となって、この世界に平和をもたらす。

 勇者は、生れ落ちた時から決まる。その力が覚醒した時、勇者は神に選ばれた人間として、訓練を受け、人々の期待と希望を背負い、旅に出る。





 全ては、魔王を討ち、世界に平和をもたらすため。






 勇者に選ばれた少女は、旅の中で得た仲間達と共に魔王の城を目指し。






 魔王として玉座に着く少女は、側近である双子の魔族と共に一族を統率し。






 やがて二つの存在は、互いの抱えた様々な物………期待、希望、怒り…そして悲しみをぶつけ合う。






 魔王の強大な力の前に敗北を喫した勇者達。その仲間の一人の咄嗟に唱えた魔法により、二人は、仲間達共々その世界から姿を消した。






 そして……………………。












 空は快晴。雲一つなく、遮る物が何一つないゆえに、爽やかな朝日が地上にある全てを明るく照らし、眠る人々に朝を迎えたことを告げる。

 電信柱に張られた電線の上に、小鳥達が囀りながらとまっていく。ちゅんちゅんと朝のコーラスを奏でる鳥達にとって、まだ起きてる者が少ない今の時間帯は、まさに至福の時間



「起ーきーろーこのバカどもぉぉぉぉぉぉっ!!!」



――――ガンガンガンガンガン!!



「「「むぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」」」




 でもなく、いきなり響き渡った怒鳴り声と騒音と悲鳴によって散り散りに飛んでいく。


 騒音の源の二階建ての家。そこの一階にある和室で、右手にお玉、左手にフライパンを持った黒髪の青年が、両手に持った物を激しく叩き合わせていた。

 首にシルバーメッキのヘッドフォン。ところどころはねたクセのある黒い髪。半開きの目。それ以外特徴といった特徴がなく、平々凡々な容姿といった表現が似合う青年は、額に血管を浮かべながら、目の前で眠っている者達に向けて怒声を飛ばす。


「うぅぅあぁぁぁぁぁぁ………!」

「あ、頭に響く…」

「ちょっとぉ、もう少し優しく起こしてよぉ…」


 青年が怒鳴った先にいるのは、和室の畳に二枚の布団を敷いて眠っていた二人。 片や翡翠と呼べる鮮やかな緑の耳元が隠れる程度のショートカットをした髪をした、あどけなさを残しつつもどこか凛々しさを感じさせる、髪と同じ瞳の色をした少女。


 片や肩までの長さがあるウェーブがかった日に照らされて光るブロンドの髪をした、先の少女と比べると幼さが目立つ、深紅の瞳をした少女。


 そして、二人の間に置かれた小さな枕。その枕の上には、小さな少女が眠っていた。比喩表現ではない、本当に小さな小さな少女。掌に乗る程度でしかない、背中に薄い昆虫のような四枚の羽を生やした、所謂“妖精”と呼ぶに相応しい大きさの、銀色の髪をした少女だった。取り分け目立つのは、左右の目の色がそれぞれ鮮やかな空色と薄い桃色をしている、所謂オッドアイというもの。


 三人ともが、髪や瞳の色、体格も違うが、見た目麗しいその顔を眠気と驚きで歪ませる。原因である青年は、そんな三人の様子にお構いなしに再び怒鳴った。


「優しくもへったくれもあるか。今何時だと思ってんだ」

「ふぇ? えぇっと…」


 言われ、ブロンドの少女が壁にかけられた時計をみやる。


「…えぇっと、10時?」


 お玉が少女の頭に炸裂した。いい音がした。


「あいたぁ!?」

「11時だダァホ。一時間もズレてんじゃねぇか。休日だからって寝過ぎだ」

『たるんでる証拠だな。まったく、そんなことではいざという時に動けんぞ?』


 プンスコ怒る青年の背後、台所から声がする。だが台所には誰もいない。しいて言うなら、調理台の上にあるまな板の上に置かれた、青い一振りの剣。台所という日常生活に欠かせない場所にそぐわない、武器という存在が違和感を覚える。


「包丁今いいこと言った」

『だから包丁ではないと言っている』

「まな板の上に乗っかってる奴が何ぬかすか」

『むむむ……』


 だが、青年の声に応じる声は紛れもなく剣から聞こえた。にも関わらず、何の疑問も抱かなかった翡翠の髪の少女が「え、もうそんな時間!?」と慌てて目を覚まし、小さな少女がまだ眠いのか欠伸をし、ブロンドの少女が布団の上で痛みに身悶えていた。傍から見たら結構カオスな光景。だがこの光景は、もはや見慣れたものだ。ゆえに剣が喋っても誰も疑問に思わない。

 青年はやがて小さくため息をつくと、三人に背を向けた。


「ほれ、さっさと顔洗ってこい。飯はできてっからよ」

「は、はい!」

「はーいはいっと」

「うぁみゃぁぁぁぁぁぁぁ…」


 返事をする二人と頭の痛みが若干やわらいだ一人は、今日という一日が始まったことを実感しつつ、布団から立ち上がった。




 翡翠の髪の少女―――アルス・フィートは、顔を洗ってからカジュアルな服装に袖を通し、青年の用意した朝食が置かれたテーブルの席に座る。




 ブロンドの髪の少女―――クルル・バスティは、頭に受けた衝撃で目を覚ましたものの、まだ痛みが残るのかゴシック調の服を着てからも若干目を回しつつ同じようにテーブルの席につく。




 銀色のオッドアイの小さな少女―――フィレイド・フィアラも、先に座った二人の間のテーブルの上まで滑るように飛んできて、正座をして座る。




 青い剣―――エルフィアンは、青年が台所で刃を丁寧に洗ってから白い革の鞘に収め、テーブルに立て掛ける。




 青年―――荒木龍二あらきりゅうじが最後に席につくと、両手を合わせた。




「はい、そんじゃ手ぇ合わせて………いただきまーす」

「「「いただきまーす」」」

『食えん』









 アルス・フィート。元は世界を救うため、仲間達と共に強大な力を持つ魔王に戦いを挑んだ『勇者』。





 クルル・バスティ。元は人類の敵とみなされ、根城である城の玉座にて勇者を迎え撃った『魔王』。





 荒木龍二。そんな魔王と勇者をも上回る圧倒的な力を持ち、居候させて家庭内の頂点トップとして二人をこき使ったり世話したりする『高校生』。





 普段は敵同士であるはずの勇者と魔王。普通では到底ありえない、けれども三人と一匹(?)と一本にとってはごくありふれた日常が、今日も始まる。





「あ、そういやお前らちょっと聞きたいことがあるんだけどよ」

「「「んー?」」」

「…冷蔵庫ん中にあった蒸しパン、うまかったか?」

「うん、おいしかったー!」

「はい、おいしかったです」

「ほほぉ……そうかそうか、昨日俺が買ってきて後で食おうと思って冷蔵庫の前に『食うな』という張り紙しといたにも関わらずに食った季節限定マロン蒸しパンはそんなにうまかったか」

「「えっ」」

「……うまかったんだな、あの蒸しパン」

「……アルス」

「ちょっと魔王、なんでボクに非難の目向けるの? 食べるって聞いてきたの魔王からだったじゃん。何でボクだけ悪人に仕立てあげようとしてるの? ねぇ?」

「アルス、飯食う前だけどちょっとこっち来い」

「え、えっと…救いは、ないんですか?」

「あ? ねぇよんなもん」

「ダメ元で謝りますごめんなさい!!」

「だが断る」

「ですよねー?」

「ホッ……助かったにゃー」

「そこでホッとしてるバカは後でな」

「脱走!!」

「フィフィ、魔法でそのアホ捕まえとけ」

「アイアイサー!」

「ぬぁぁぁぁぁぁはーなーしぇー!!」

『自業自得だろう』










 ある所に勇者と魔王がいました。



 二人はそれぞれの仲間と共に戦っていました。



 しかし、何故かいきなり異世界に飛ばされました。



 そこで一人の青年に出会いました。



 そして何だかんだゴチャゴチャになって結局この世界で定住する羽目に…。



 このお話は、勇者と魔王が自分達以上に強すぎるラーメン好きな青年に振り回されるお話です。






「そうりゃあああああああ!!」

「ほ、ホントに振り回さないでくださああああああああああい!!!」






 ………因みに振り回されているのは勇者です




 ドーモ、ミナ=サン。作者のコロコロです。最近ちょっとニンジャが好きです。イヤーッ!

 今回、改めて自分で読み直してみてみたりして、ふと気づいたりすることがあります。昔と比べて文章が固く感じたりしなかったり。それで読みやすさをウリにしてた気がしなかった気がしないでもないのですが、はてさてどれが本物の私なのでしょうか。記憶喪失すごく恐い。

 で、とりあえず今回の話は最後の文を、というか前作のあらすじの文を入れたくて書きました。無理矢理すぎる? こまけぇこたぁいいんです。

 まぁ大体こんなノリで書いていきます。読者の皆様もお付き合いしてくだされば幸いです。

 それでは次回の投稿まで。


 また見てコロコロ

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