二章~記憶~ 間話 「夕食の時間」
「席に着いたかの?」
「おう!」
「はい!」
バンダナを頭に巻いた厳正さんに問われ、元気よく返事をする。
「よろしい!それでは、夕食にするかの」
そう言い、厳正さんは台所から片手鍋を持ってきた。
今、私達の目の前にはお椀と箸と小皿が置いてある。
家が洋風だったのには転けたが、さすがに厳正さんの身なりからして、和を少なくとも意識しているのは確か。
それに、目の前に置かれている食器は見るからに、我が国日本で「和食」の時に使われる食器。
それに厳正さんが洋食を作る所など想像出来ない。
大丈夫、私の故郷の味「和食」のどれかを厳正さんは作ってくれたはずだ。
このお椀からして麺類?
いや、茶碗は後から来るとして、やっぱり無難に味噌汁かな?
ちょっと捻って湯豆腐とか?
いや、もしかして「和食」と思わせて「中華」?
まあ、どちらにしても「洋食」に転ぶ事は……。
「さて、入れるぞ」
様々な思惑を頭の中で巡らせている中、お椀に並々と注がれたその汁物は
赤だった。
どうみても紅……だった。
朱だったぁぁぁぁ~!?
「げ、厳正さん……これは?」
顔がひきつりながらも、一応質問してみる。
「ん? 知らないかの? ミネストローネじゃ。美味しいぞ?」
そう言い、厳正さんは中央にパンの入った籠を置く。
はい、美味しそうです。
ですが……何というかその……
「大地の恵みに感謝。頂きます」
「頂くぜ!」
「い、頂きます……」
何も言えず、取りあえずアウルへ視線を送った。
「ん? ……なんだ?」
当然のように、アウルは口一杯に頬張りながら、二つ目のパンに手を伸ばしている。
「お代わりも用意しているから沢山食べるのじゃぞ」
「厳正! お代わり!」
「早いの……」
和食を期待していた私が間違っていたのね……。
そして、私もミネストローネを一口飲んだ。
口当たりが優しく、溶けかけの大豆がまろやかで美味しかった。
今思うと、ミネストローネは小学校給食以外で食べたことがありませんね……。
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