一・五章 「アウルム」
森の一本道、両隣にはどこまで続くか分からない木々が連なる。
時々風が吹き、木々が生きているようだ。
何だか不気味……。
自分から着いてきて言うのもおかしな話だけど、正直、目の前を歩いているにいる金髪少年の口車に乗せられたら感がある……。
それに歩きだしてから必要最低限しか話さないし、それにさっきの狼男達のこともあってこの少年が怖い。
それに名前もあまり呼びたくない。
理由は……
「ア、アウ…ルム?」
呼びにくい! 詰まる! 噛む!
さっきから数えて何回舌を噛んだか。
「ん? なんだ?」
少年は振り向く。
「……いや、何でもない」
「何だよ楓? さっきから名前を呼ぶだけ呼んで? 言いたいことがあれば、はっきりと言えよ?」
あなたの名前が、はっきり言えなくて困ってるんですけど……。
でも、私は日本人。それに女子だ。
相手に不快感を与えないように、謙虚でいないと……。
「いや、何でもないよ」
「本当か? 何か言いたそうだが?」
そう言い、アウルムは近づいてくる。
何でそんなに知りたがるのよ……。いっそ言おうか?
いや、誇りが……。日本女子の誇りが……。
「だから、何でもないよ」
「いや、その目は絶対何かある。言ってみろよ?」
アウルはしつこく聞いてきた。
あぁ、もう! 鬱陶しい!
もう謙虚な日本女子の誇りなんて知るもんか!
「名前が呼びにくいのよ! アウル…ムって名前が。」
「何だそんなことかよ」
アウルムはしらけた顔で言った。
そんなことって……。 誇りが……。
「呼びにくいなら、お前の好きなように呼んでいいぞ?」
「お前らの世界での……え~とあれだ。ニコン……」
「……ニックネーム?」
「あぁそれだ。いいぞ付けて。俺もアウルムって呼ばれることあんまりないしな」
アウルムは当然のように言った。
こんなに、すんなり承諾してくれるとは思わなかった。
噛んだ舌が痛い……。
もっと早く言えばよかった……。
それより、アウルムって呼ばれてないってことは何て呼ばれてたんだろ?
アウちゃんかな? それともウルム君?
……予算が少ないゆるキャラじゃあるまいし、そんなことはないか。
それよりニックネームか……。
私は、楓って名前が呼びやすかったおかげか知らないけど、なかったからな…ニックネーム。
それに、人に付けたこともあんまりないし……どうしよう。
少し考える。
アウルムが先をまた歩き出したので、歩きながら考える。
アウルム…、アウ…ルム、ア…ウルム……。
「……アウル、アウルがいいよ!」
アウルは振り返る。
「アウル……か。いいじゃないか」
アウルはそう言いながら少し笑う。
……バカにされてる?
「何かおかしい?」
「いや、別に?」
そう言いながらも、笑っている。
何かある、これは。
「本当? 絶対何か隠してるでしょ?」
「何もないって」
アウルへと詰め寄る。
「いいや、その目は絶対何か隠してる」
「何もないって言ってるだろ! それより先行くぞ! こんなことしてたら日が暮れる」
そして、アウルは走り出した。
「あっ! 待って! 走るな~!」
こうして、アウ…ルムという呼びにくい名に変わり、この金髪少年をアウル呼ぶことにした。
皆さんは自分の名前関連でニックネームとかありますか?
ちなみに作者は、名前がらみではニックネームを付けられた事がありません……。
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