04
PVとユニーク数を見て笑っちゃいました。
膝が。
続きを出来るだけ早めにお届けできるよう努力いたします、えぇ。
今後残酷描写になるかもな流れで、さてどうしたものかというのもあり。
後書きと言う名の本編というかあちらも続けたものかと悩んでみたり…。
「随分とまぁ…慌てて駆け出したが、何があったのか聞いたら答えて貰えるのだろうか?」
瞬時に変わった空気にぽかーんとなるが、それでも足元に転がっている何かを視界に入れるとそんな声を呆れたような、驚いたような表情でティラミスは口を開いた。
しかし、話しかけられても依然動かぬそれに、おや? と思い「大丈夫か? リーお兄ちゃん」と声をかけてみるとあら不思議。驚く速さで平時の余裕ある態度を取り戻していた。
「実は私達はメインクエストでここを訪れていたのだがね。二人ほど戦闘に不慣れというか、この先を考えて『この世界での戦闘』に早く慣れて貰うべく、ある程度技能規制を付けて送り出したんだが…城内のモンスターが出てきているというのは、何分知らなかったのでね」
ふーん、と興味なさそうな相槌に、興味が向く方向が判り易いなと苦笑する。
「てことは……リーお兄ちゃんを捨てて消えるということは無いんだね? あれ、何そのドキィって顔? もしかして追いかけたほうがいいのか? 山田殿には逃げられたくないんだが」
「追いかける、というのは賛成ですが隠れてこっそりと、という条件を付けても?」
何とも無いように頷くと同時、即座に駆けた其の姿は、あっという間に遠のいて行き。
お兄ちゃん、か。結構いい、グッと来るねぇ、等と頬を緩めつつ。
ならば頼れるお兄さんも頑張らないといけないな、と迫り始めたデュラハンに顔を向けた。
真っ黒に塗りたくられたキャンパスに、一人ポツンと放り込まれたように。
視界に映る全てが黒く暗く光の無い世界に在って、自分の姿だけがくっきりと認識できる。
闇魔法技能 『ダークネス』
捉われた対象を二十秒間視界遮断の状態異常にさせる。
この状態になるまで思い出せなかった。
ここまで追い込まれてようやく思い出した。
足をつき立っている場所は先程の場所だろう。
視界が変わっただけであり、二十秒経過すればその場に立ち尽くすだけの自分に戻る。
だが、このまま立ち尽くすだけでいれば、レイジーの攻撃により死ぬだけなのは目に見えている。
ならば、と逃げ動くにしてもカーリンが何処に居るかわからない。
下手に動きそちらに誘導するハメになるのだけは絶対に避けたい。
ここまで来て自分の失態を考え続けるわけにはいかない。
これから出来ることを考えないといけない。
手は無いか、打てる、打つべき手段は何かないか?
何も浮かばない、何も浮かばない、何をすべきかわからない。
―ガチャン
聞こえるレイジーの足音も、方向が全く分らない為、どちらに動けば避けられるのか分らない。
避けられる? いや、そればかり考えるべきではない、と手に持つ双剣『双竜・天地』を装備解除し、幅広の重量感を感じさせる両手剣『ディフェンダー』を取り出す。
装備者の移動速度を半減させる代わりに防御力を大幅に引き上げるという変わった武器である。
攻撃力も低い物では無いが、HPの高い人物意外は所持している人など居ないだろう。
二十秒。
ディフェンダーを取り出した所で気休めにしかならないだろう。
『閃武』発動前なら耐えられたかもしれない。
思考が巡る。カラカラと空を切る音と共に。
―ガチャン
何か、耐えるための一手ではなく、打開するための一手は―――
「破棄、シャイニング・ショット!」
聞こえた声に微かな安堵を覚え、今自分は何を考えたと自分を激しく罵倒した。
『まぁ、ルナ・ボウもあるし、光魔法はー、本当は禁止のがいいだろうけど一応三回まで使っていいってことで。つってもウサミが居るしそこまで心配ないだろうけど、まぁそんな感じで慣らしていこう』
信頼を受けている。
妹からも、彼からも。それが何だこの無様な姿は!
向かわせない。決して妹の方には向かわせてやらない。
逃げろと言ってもそれを聞かず、こんな姉を救おうとする大切な大切な私の妹の下へだけは。
『ディフェンダー』を再びアイテムポーチに収納すると、特殊武器の一つを取り出す。
多節根 『白蛇』 六節からなる中距離対応武器。火力は低いもののその攻撃範囲は広い。
「円舞!」
多節根技能の一つ『円舞』を、腹の其処からの大音声で使用選択を告げると同時、手に持つ『白蛇』は意思を持ち始めたかのようにヒュン、と風を切り周囲の全てに踊りかからんと伸長した後円を描く。
それは長鞭を振り回すように素早く、綺麗な円運動を二度行い、その範囲内に在る存在へと牙を向けた。
未だ暗闇の世界の中、後どれくらいと考えるのももどかしく、次の一手へ思考を巡らせる。
ゲーム時代、こんな時どうしていた?
あの時代は死んでも大聖堂で復活していた。
ならばそんなことは考えても無駄だ。手持ちの武器で考えるべきだ。
多節根を継続使用? 距離伸張攻撃は技能のみだ。相手の居る場所が解らないなら打つ手はない。
まだもう一度が残っているカーリンの魔法使用を考えると――妹が今から逃げてくれるとは考えられない。きっとまた同じ行動にでるだろう――再び妹が魔法を使い、レイジーのターゲットが移ったとき、再びその対象を奪う為に『円舞』を使う為のSPは残しておかなければならない。
ここに来るまでに技能の使用感をと試した回数が多すぎたんだと、残存SPを思い悔やむ。
ごめんねカーリン、こんな頼りない姉で。
それでも私は姉としてこれからも――
―ガチャン
そう、これからもだ。
この先のことも考えての二人だけでなのだ。
たとえ『今』を乗り越えても、この『先』を生き抜けなければならない。
何が在る?
私の手には何がある?
「破棄、シャイニング・ショット!」
っ!
先程の『円舞』からややの時間経過を持って。再びカーリンから援護が入る。
『シャイニング・ショット』のクールタイムが終了したから? いやそれにしては間があった。
つまり、レイジーの射程に私が捉えられたのだろう。
ならば、一拍おいた後に
「円舞!」
助けられている、という自覚はある。これ以上ない程に。
だが、それもこれまでだ。
未だ動かぬ私の姿に、カーリンも異変を感じて居るんだろう。何が? と。大丈夫なのか? と。
体感ではとっくに二十秒どころか数分の経過を感じるのに、未だ開けない視界に自分の未熟ぶりを悔やむ。これが信士だったなら、と。
いや、それは考えるな、考えるべきは先のことだ。
これから、メインクエストを進めるに当たり、いやこの世界で生きていく限り避けることの出来ないだろう、ハルムーンの騒動に……対人をも視野に入れて。
そう、そうだ。その為に試したいと考えていたものがあったのを忘れていた。
デュラハンと遭遇したら試してみたい、と持ってきたものを。
―ガチャン
すっと思考が落ち着くのを感じる。
こうしてみると今はまだ十八秒くらいかな? とどこか冷静に考える自分がいる。
ならば、もうすぐだ。それからが自分の仕事だと。
多節根をアイテムポーチに戻すと、二振りの小ぶりな短剣を取り出す。
特殊武器でもなく、短剣の二刀流でもない。特殊な部類ではあるが、その双剣を。
―ガチャン
もう、そろそろ視界は明ける。
その時目の前にはレイジーの姿があるだろう。もしかしたら背後だろうか?
先程までの自分はなんだったんだろうな、と自嘲気味に苦笑しつつ、きっとそれが本当の自分だったのかもしれないと、少し情けない気持ちになりはじめ。
すぅっと視界に光が戻り始めるのを認識しながら、さて始めよう、と探すべき姿を求め視線を巡らせた。
遠めに見え始めたその鎧騎士の姿に、浮かぶ深紅の色彩を視認しクソッと悪態をつきながら、間に合ってくれと祈り、速度を落とすことなく駆け続けた。
レイジーだ。間違いなくあそこにいるのはレイジーだ。
何処に現れた?
ウサミの側か? それならまだ大丈夫か? 楽観的に考えるな! カーリンの背後から? クソッ!
レイジーだ。『ダークネス』を使われた時点できっと詰む。
こんな場所に居ると考えて居なかった。
対策など一つもしていない。
唯一対抗手段として、カーリンの『キュア・サークル』くらいか?
あれだとて使用術者が移動不可になるうえ発動までも待機時間がある。
其の上効果範囲も考えれば、むしろ其の状況になっている時点でアウトだ。
間に合え! 間に合え!
逸る気持ちを抑えることも出来ずにただただ現状がどうなっているのかの最悪な結末だけが脳裏をよぎる。
そうして見えた光景に、動きを見せる姿は三つあり。
間に合ったことに安堵を覚えつつも、ならば早く駆けつけなければと速度の落ちていた足を振り上げ。
「まぁまぁそんなに慌てなくてもいいじゃないか。どうしたんだいそんなに慌てて? 漸く追いついたと思ってみても、また走り出そうとするのは酷いんじゃないかい?」
力強く肩を摑まれ、空を切る足に体勢を崩し、寸での所で持ち直した体を其の声の主の居るほうへと振り向ける。
「おや? ずいぶんと怖い顔をしてるね? 何をそんなに怯えているんだい? そんなに私が怖いのか?これでも結構可愛い容姿だと自負してるのだがね?」
何を言ってと掴みかかろうとした手は、向けられた視線のどこか真剣さにぴたりと止まった。
止まって、しまった。
「落ち着いたかい? まぁそのまま掴みかかってくれてもそれはそれで僥倖、此方の望み通りでもあったのだが……まぁ、待ちたまえよ」
そういい、ついと視線を移した先には、ウサミへと歩み寄るレイジーの姿。
絵図的に見ても、そんなレイジーに対し微動だにしていないウサミからは『ダークネス』に捉われているのが伺える。
「やはり、捨ててないね。何かやる気だ……何を? 短剣? いやあれは双剣か? ……珍妙な、この場面で『ブレイカー』を? 狙いは何を? そのままの意味で? 何のために……」
微かに聞こえる其の声は、思考そのままの漏れ出しただけの声なのだろう。
ウサミの姿から目を放せないだけに、其の表情までは窺えないが、きっと何かを探るような、それでいてあの嫌な雰囲気を感じさせる笑顔を浮かべているのだろう。
「頼みたい。俺もあいつが何を考えて居るかはわからん。だが、もしその考えが通りそうになかったら……」
即座に助けてください、と。
「わかっている。それを考えた上でご主人様を止めた。間に合う距離で、この場所で」
これ以上無いであろう人物に、助勢の願いを聞きいれて貰い、安堵に息を吐こうとして。
な、なんといったこいつぅ?! とうっかり視線を移してしまった其の先には。
あぁ、やっぱりあの目を背けたくなるほど嫌になる、極上の笑みを浮かべていた。
左!
視界に捉えると同時振り下ろされ始めているクレイモアを見、僅かに体をずらすとそのリーチの無い武器をクレイモアと深紅の鎧へと導く。
双剣 『ブレイカー』 正式にはソード&メイル・ブレイカー
低確率で対象の武器と防具を破壊する。
武器破壊確率は攻撃命中時七%の確率で、防具破壊確率は攻撃命中時八%の確率で。
三度の『シャイニング・ショット』と、これまでに自分の攻撃により蓄積されたダメージで、移動速度こそ衰えてはいるが、『閃武』によって増している攻撃速度は依然変わらず。
振り下ろされたクレイモアがギャリっと鳴ると、そのまま横に切り払われる。
その流れる方向から逃げるように先へと動き、振り切られたクレイモアへと再び一撃当てる。
そのままに飛び、一度距離を開けると、着地と同時また飛び込む。
振りぬかれたクレイモアが引き戻され、そのまま突き出されたそれを着地後身を捻ってかわすと同時、その動きに合わせて弧を描く軌道に乗せて振られる双剣をクレイモアへと叩き込む。
ギャリンという音と共に、その凶暴な顎が漸くその本性をようやく曝し出した。
それを確認するや即座に『ブレイカー』をポーチに戻すと、再び愛用武器の一つ『双竜・天地』を取り出した。
これから必要なことは簡単だ。確認したいことは確認できた。
後はレイジーに残されたHPを淡々と削りつくすだけの作業。
根元から消失したクレイモアを、オモチャに喜ぶ赤子のようにただ振り回すだけの存在などに、これ以上何ができるというのか。
予期せぬ展開にはなったけれど、出会えて良かったと今は思う。
――ギャリン
ゲーム時代と同じだと考え、緩んでいた頭のねじに気づかせてくれてありがとう。
――ギャリン
常識が変わってしまったことを、ここまで明確に体験させてくれてありがとう。
――ギャリン
自分に出来ることを、これからの自分に出来る事を教えてくれてありがとう。
――ギャギャン!
終わった、と思うと同時、意識が切り替わるような空気を感じ、それによって運び込まれた走り寄る小さな、それでいて明確なその音に、どんな言葉で謝ればいいかな、と視線の先で泣きそうに顔を歪める妹の姿に、双剣を腰の鞘に戻して軽く両手を広げてみると、ぼすん、という暖かな衝撃に、小さく、感慨深く、それでいてはっきりと心配かけてごめんなさい、とつぶやいた。
終わってみると、二人共に無傷であった。
―カリカリカリ
「あー、疲れた~。そろそろ晩御飯の時間かな。ねぇリヴィ――何作ろうかな」
―カリカリカリ
「あれ?この書類間違ってるような…ねぇここ――もう一回見直すか」
―カリカリカリ
「………」
―カリカリ
「……グスッ」
「もうすぐ、二週間か。はは、なんだろうなぁ、この空虚さは」
―ガチャ スタスタスタ ガラガラガラ スタスタスタ
「――あ、御気にせずに続けてください。すこし盗さ――機材の電池の交換しに来ただけですで」
―スタスタ ガチャ
「………え? いやいや何? あれ? 今の…え? ズーだよね? …え?」
―ガチャ
「あ、先ほど言い忘れました。強く、逞しく生きてください。影ながら応援いたします」
「いや、あの……え? 何盗撮? え、どういうこと? 何これドッキリ?」
「いやまぁ、ドッキリというよりは『ドキッ☆魔王様の生態観測』と申しましょうか」
「いや、いやいや、いやいやいやいやいや。え? それ誰が得するの?」
「え? それはもう、魔王城にて皆さん大爆笑でご覧になられていますが?」
「うへぇぇぇ!? え?! 何なんで?! あっこれ今も撮られてんの!?」
「はい、バッチリです」
「何で得意顔なんだよ!! やめようよ! ほんともうやめてよ!!」
「まぁ、期限は一ヶ月ですので、頑張ってください」
「嫌だよ! 何、え、全部? 今までの……え、何? あの、全部? 音も?」
「完備です。 抜かり在りません。これでも私先生等と呼ばれてまして」
「そんな名称捨ててしまえ! うわぁぁん! あ、見られて、あっ声も! ぎゃぁあぁぁ!」
「それではこれで失礼します。まぁ、頑張れ?(笑)」