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魔王が居る世界  作者: GT
2章 商業都市 ハルムーン
16/25

01

 2章、開始します…が、まだ着地点が未定です……。どんな結果にどうもって行こうか定まってませんので、少しそのぅ、更新頻度というか……。


 そのような理由で、章タイトルは今後変えるかもしれません。

 

 お気に入り登録ありがとうございます! コンゴトモ ヨロシク


 商業都市 ハルムーン

 巨大な中央大陸に措いて二大都市とも言われる其処は、人に溢れ、活気に溢れ、富に、商品に、色彩に、雑多さに、それはもう語りつくせぬほどに特異な街を形成している。

 外海に面したその場所には、そこから吐き出し迎え入れられる数々の交易船、観光船によって様々は文化や思想、人種に特産品を受け入れていた。

 そうして膨れ上がった街の全容はには、まるで住み分けるように区画が出来上がり始め。

 

 貧と富の差が明確に見える世界となった。



 それが今や。

 只の設定だけではなく。


 日が昇れば影が出来、闇が深まれば月が映えるように。

 力と数による暴虐の宴を催した後――


 弱者は貧者へ強者は富者へ。

 

「てめぇ! 俺が誰だがわかってんのか! 俺の武器を知ってて歯向かってんのかっ!!」

「はっ! 威勢だけは褒めてやんよ。それがどうしたよ? びびってんならケツ撒くっていいんだぜ?」

「ぶっ殺す!!!」


 街には暴力が溢れ。


「クソッ! 裏切りやがったな!」

「ん? あははは、裏切っただなんて。よくもまぁそんな甘い考えを。最初からですよ最初から。そんな考えしか出来ないからそんな無様な格好になるんですよ」

「クソッ!クソッ!」


 喧騒は怨嗟に溢れ。


「これはこれは、懐かしい顔だ。お元気でぇすかぁ? 楽しんでますかぁ?」

「それはこちらのセリフだが……。成程、これはこれで…。さて、ならば君に楽しませて貰おうか?」


 新たに街に足を踏み入れる者があれば、その姿を隠すことなく衆目に曝し。

 視線が絡み、欲望がまた更なる暴力を生み、絶え間なく終わりを見せず。


 商業都市 ハルムーン 

 死と生の重さを量るその天秤は、力に因ってのみ傾けられる弱肉強食の街となった。



 




 

 眼下に眺める街の風景は、街そのものが何かに怯えているようにひっそりとしていた。

 闇を嫌うように灯された明かりにすらも、何処か弱々しい雰囲気を感じてしまう。

 

「隊ちょーう、どうしたんすか? 柄にもなく緊張してんですかい?」


 からかう様な軽い声に、それをどんな表情で放ったのか想像でき、振り返って応えてやる気がこれっぽっちも起こらず、そのまま眼下の光景を眺め続ける。

 やれやれとでも言いたげな溜息が聞こえたが、次いで聞こえた足音は、自分の隣で止まると「よっこらしょ」という声の後、周囲は再び心地よい静寂を取り戻す。


「いよいよ明日。始まったらもう戻れないんですぜ? 隊長。俺は正直、どっちでもよかった。

 でも、やるってんならとことんやってやるっては考えてる。それは、俺だけじゃなく、他の皆もそうだろう。

 隊長、別にあんたに全責任背負わしたい訳じゃないってのは、わかってくれてるとは思う。

 だが、俺らにとってはもうあんたが隊長だ。その上で、聞きたいだけだ。

 覚悟は、出来てんだよな?」


 隣に座り込まれ、より近くで聞こえたその声に。

 覚悟は出来てるかと聞かれたところでそんなご大層なものははじめからない。

 俺に在るのは何だろうかと考えてみても、相応しく思える物が思い浮かばない。

 


 力に驕った奴らへの復讐? 

 ガキみたいな英雄願望?

 震えるだけの過去との決別?



 どれでも無いようでいて、その全てのように思う自分に、相変わらずどうしようもない屑だなと嘆息する。


 こんなんだから俺はその標的に選ばれるんだと。

 やり返す事もできず、逃げることも出来ず、ただひたすらに耐えて黙して、相手がそれに飽きるのを待つだけか、こそこそ人目を避けるだけの自分。


 家が貧乏だったから?

 背が小さかったから?

 駆け足が遅かったから?

 引っ込み思案で暗そうなやつに見えたから?


 其の全てが理由に思え、それ以外の何かが理由な気もして。

 自分より弱そうだと認められただけで、その優越感の為に、そのストレスの捌け口の為に。

 その行為は年々、体と頭脳の成長と共に陰湿さを増して

 人目を避け、自身より上位の者の影を避け、執拗に、陰険に、より劣悪に自身を蝕み。


 気がついてみると、自分は一人、孤立していた。

 縋るべき姿は手の届かないところに、助けを求めるべき相手は声の届かない距離に。

 そうして逃げるように噛り付いた世界。


 一人で全てをこなした。力も、知識も、技能も装備も揃えられる何もかもを。

 自分の力と知識を羨み、取り込もうと擦り寄って来た奴も現れ始めた。

 それを見るたびに現実の自分を思い出し、そんなことをする人物がどんな奴かを考えては突き放していた。

 そして、その世界は。



 自分の暮らす世界と化した。








 だからこそ自分よりも弱い阿呆が我が物顔でのさばるのを見て怒りを覚えた。

 弱者が! と告げる視線を受け、それが数を背景に自分の強さを示すだけの其の態度に。

 それに憤りを覚え、この世界の法則となった『力の強さが全て』というルールを

 目の前の阿呆に教えてやりたいと拳を握り。



 それ以上動けなくなった自分に、呆然とした。

 足が竦み、動悸が激しさを増し、瞳は怯えるように揺れ、握られた拳も力を無くし始める。




 力の強さは、心の強さに比例しない。





 悔しかった。惨めだった。無様だった。

 それでも、これ以上逃げ場は無いことは悟っていた。


 一人、隙を見てはその後をつけ、闇に乗じて禍根を断つ。

 そうして過ごし始めて数日、同じことをする奴に出くわした。

 一人、二人、五人、十人。

 そうして集まった奴らの全てが、自分を隊長、リーダーと呼び出しはじめた。

 それを苦々しく思う傍ら、嫌だと思わない自分がいた。




 だから




「ここまで来て止められるかよ。これ以上あの阿呆共の好きにさせてたまるか」


「そうだ……そう、我慢するのはここまでだ。そうだよな、カシミア隊長。

 じゃぁ、俺はあっちから街に入る。朝には潜り込みたいから、もう行くよ」


「あぁ、早く行けよマル。俺も明日に備えてそろそろ寝るわ」


 それじゃあまた明日、と。

 それ以上は何も告げず、遠ざかり始める足音を聞きながら、眼下に映る景色を眺める。

 日付が変わり、朝日が昇る時。


 はじめよう、反逆の為の行動を

 取り戻そう、平穏と安寧を


 決別しよう、孤独とそれを受け入れ続けた過去の自分と


 狼煙が上がる、日の光と共に。

 それを合図に、ひとつの影が街へと消えた。 






「さて、始めるか」








「いやぁ、お祭りってのは楽しいものだねぇ」

「はぁ、そうですね」

「出店も多かったし、人も活気も凄かったね」

「はぁ、そうですね」

「それに、あの花火は綺麗だったね。数もあそこまでってなれば、中々ないんじゃないかな」

「はぁ、そうですね」

「……あの、リヴィアさん? その、テンション低いっすよ? どうし、されました?」

「はぁ、そうですね」

「えっと、因みにその~、そのお手元の熱心に記入なされている書類は、あの、どのような物なのでしょうか?」

「『ズー先生の通信講座 一発合格! マーダーライセンス』ですが?」

「マーダー? どこかで聞いたことがあるよ……だめだよ! え? 何でそんな物騒な資格あるのっ!?

 え、ズー先生何してくれちゃってんの?! 誰が発行してるのその殺人許可証って?!」

「もちろんズー先生ですよ、何をわかりきったことを」

「わかりたくないよ!! いやそもそもどうしてそんな物に興味もっちゃったの?」

「はぁ、昨日のあの男をこう、キュッっと殺りたくて。あの男さえ来なければ……」

「え? あ、彼? いやいやだめだよそんなの! それにお祭りは花火で終わりだったじゃない。後は帰るだけだったんだし、そこまで気にしなくても、許してあげようよ」

「サタン様。遠足はおうちに帰るまでが戦争だと教えて貰いませんでしたか?」

「いや、確かに聞いたことは……無いよ! 戦争って初耳だよ! 誰がそんな事教えるのさ!」

「ズー先生です」

「あんちくしょぉぉぉぉおぉぉーーーーーー!!!!!!」


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