#2「日常から消えた者」
#1の続きです。
プロローグ「消えた記憶」
12月1日 午後5時。
花蓮が僕に聞いてくる。
「兄さん!冗談やめてよ……え?本当に忘れたの?あの頃の思い出を……」
「すまん、花蓮……」
今から約1年前、僕が中学2年生の頃。
僕にとって大切な人がいた。――そんな気がする。
でも、それを思い出そうとする度に何かが止めてくる。
人には物忘れというものもあるが、これは少し違うような感じがする。
一体僕は何を思い出そうとして、何をしたいのだろう。
――思い出せない。
その一言で、僕はそれ以上踏み込まなかった。
人はなぜ、些細なことほど、触れないままにしてしまえるのだろう。
それが例え、自分の生きる意味だったとしても……。
第1章「何かが欠けた[いつも通り]」
僕がそう考えていると、花蓮が口を開く。
「そっかぁ……忘れちゃったんだ……。でも、いつか思い出せるよね!」
花蓮がそう言った時の顔は、どこか悲しそうだった。当然だ、花蓮が大切だと思った出来事を、肝心の僕が忘れてるんだもの。
「……兄さん、いつものイオンに行かない?二年生の頃一緒に行った場所があるの、そこに行けば何か思い出せるんじゃない?」
「うん、行こうか。」
花蓮の提案を受けて、ついていく。
その時、ふと壁に貼ってあった張り紙が僕の目に留まった。そこにはでかでかと「探しています」の文字。
どうやら、中学2年生の「大久保真莉愛」さんが11月3日に連絡が取れなくなり、不審に思った親が捜索願を出し今現在でも見つかっていないらしい。最終目撃場所は11月4日の「イオンモール猫好き学園店西出入口」……。
それを見ていると花蓮が言う。
「大久保さん、今も見つかってないみたいだね。一体どこに行っちゃったんだろう……」
「その大久保さんと花蓮は同級生か、仲が良かった子なのかい?」
「まぁそれなりには仲良くしてたよ、そういえば行方不明になる前の時に、「最近彼氏ができたけど、束縛系になってきて困ってる」って言ってたなぁ」
今もなお見つかっていない、しかも無事かもわからない……さすがに事件性ありすぎて調査したいが……。
僕は仮にもただの学生だ、探偵じゃない。今は見つかることを願うことだけ。
――本当にそれでいいのか?
花蓮の大切にしている友人の一人が困っている。それを花蓮は心配しているんだ。
花蓮の悩みは解決したい。
ならやることは1つだ、この行方不明事件を解決して、花蓮の不安を1つ消しておきたい。
第2章「行方不明事件?」
11月3日 大久保真莉愛さんの親は捜索願を提出。
11月4日 「イオンモール猫好き学園店西出入口」にて、大久保真莉愛さんが監視カメラ映像により猫好き学園に訪れていることが判明。
――そして現在まで目撃情報も無く、今だ見つかっていない。
現在の疑問点は2点。
1、なぜ大久保真莉愛さんは捜索願を出された翌日、猫好き学園に訪れたのか。
2、なぜ猫好き学園から出たという情報がないのか。
1つ目の疑問に関しては、2つ可能性がある。
「誰かから逃げている最中に訪れた」か「誰かの指示に従って訪れた」
2つ目の疑問に関しては本当に謎だ。
仮に大久保真莉愛さんが学園から出ていたとして、どこへ行ったのかという手掛かりがなさすぎてわからない。
さて、こうやってずっと情報整理するだけではなくて調査をしないと。
そう思っていると、水蓮が走ってくる。どうやらミーティングが終わったらしい。
水連に今の状況を説明し、三人でまずは学園内を調査することにした。
水連は小学校区、花蓮はここ中学校区、僕は高校区を調査することになり、午後6時には学園入口に集合することとなった。
さて、時刻は午後6時。学園入口に行くと花蓮と水蓮はすでに調査が終わっていたらしい。
「小学校区中学校区に何か手掛かりはあった?」
「小学校区の方は手掛かりなしだったよ〜」
「中学校区の方は1つだけ、最近妙なやつが学園周辺をうろついているらしいわ。何かの役に立てればいいんだけど……兄さんの方は?」
「とくにないね。これ以上の調査は出来ないから明日にしようか。家に帰ろう。」
そういって二人と一緒に帰宅途中、僕の目に謎の人影が暗い路地に入るのが見えた。
「花蓮、水蓮。僕ちょっと学園に忘れ物したみたい。ちょっと行ってくるね。二人は先に家に帰ってくれ~!」
そう言って僕はその人影を追う。
第2.5章「過去のトラウマ」
2035年(物語が始まる約5年前)7月16日 午前11時。
花蓮が当時小学三年生の頃、塾の帰り道で誘拐された。
その犯人は連続誘拐事件を引き起こす凶悪犯だった。
花蓮はその連続誘拐事件に巻き込まれた。
花蓮が誘拐されてから一週間後の23日、犯人は逮捕され、花蓮は無事だった。
しかし誘拐された一週間の間の出来事がトラウマになり、今でもあの事件の犯人と周りの大人の男性の姿を重ねてしまい、それ以来大人の男性を怖がるようになってしまった。
当然、学園の教師も例外ではなかったが、一年経つとさすがに安心できるようになったようだ。
しかし時々無理な笑顔を見せるのはやはり……。
エピローグ「失踪」
現在 12月1日午後8時。
僕が家に帰ると、花蓮がいない。
水連に聞くと、「帰る途中に、お姉ちゃんが、お兄ちゃんを追いかけて……どこかに行ったきり帰ってこないの!」
「僕を追いかけた……?」
まさかと思い花蓮に電話をかけてみる。
――応答なし。
嫌な予感がする。花蓮は何故僕を追いかけた……?どこへ行った?どこまで僕を追った……?!
いつも冷静な僕でも、この状況はさすがに焦ってしまう。こういう時に冷静さが大切なのだろう。だがそんなことは気にしてられない!一刻も早く見つけなければ!
「水蓮!花蓮が僕を追いかけたのは何時だ!」
「え?!た、確かお兄ちゃんが忘れ物を取りに走っていってから大体30分?かな」
つまり花蓮は学園に向かったのか……しかし戻ってこないのは何故だ、さすがに連絡の1つや2つ……。
その時僕は思い出した、路地で話していた時にかすかにスマホが震えていたが気にしてなかった……!いつもマナーモードにしているのがあだとなってしまった!
「水蓮!すまんが家にいてくれ!僕は花蓮を探してくる!」
「え?!ちょっと待っ……」
水連が呼び止めようとしていた気がするが関係ない!花蓮……!頼むから無事でいてくれ!
#3をお楽しみに…




