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引きこもり姉ちゃんの中の人、魔王です。だけどアイドル始めました。  作者: 風谷 華


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8/8

第8話 部活か?いや、アイドルじゃ!!

放課後、

教室の窓から射し込む夕焼けのオレンジ色が、机の上に影を長く落としていた。

俺―― 東雲 照人しののめ・てると ――は、下校の鐘が鳴り終わって片付けを始めたばかりだった。


「今日も無事に終わってくれ…」

そう呟きながら、ひとつずつ教科書を鞄に入れる。

でも、その穏やかな時間は――ぴたりと止まった。


「――照人、少しだけ付き合え」

隣に立っていたのは、制服姿の“姉ちゃん”――いや、中身は魔王・ ヴェルネス だった。

夕日を背に、その黒髪ロングが黄金色に輝いていた。


「な、なに急に!?」

「少し“部活動”を見に行くのじゃ」

ヴェルネスは無言のまま背を向け、教室を出て行こうとする。

俺は慌てて声をかけた。


「部活? 今日もう終わるだろ?俺、帰るし…」

「ふむ、帰るのか?それでは――支配は遅れるぞ」

「支配って言うな!!」


俺は鞄を少し強く握り直して、仕方なく後を追った。




廊下を歩きながら。

「演劇部」「軽音部」「放送部」と掲げられた部活紹介ポスターが、蛍光灯の下でゆらめいていた。

ヴェルネスはそれぞれの部室の前で足を止めた。


演劇部の部室の前では、台本を手にした部員たちがセリフを練習していた。

「次、私が王になる!」

「姫様を助けに来たんだぁ!」

そのセリフに、ヴェルネスは眉をひそめた。


「我の“真の王”たる姿を演じるには、これは少々物足りぬ」

「……あの、普通に楽しそうだけど、王が物足りないってどういうこと?」

俺のツッコミは届かず、彼女はすぐ軽音部へ移動。


軽音部ではギターを抱えた部員がジャカジャカとコードを弾いていた。

「ロックだ!」「熱いぜ!」

その熱気に、ヴェルネスの目がうっすら光った。


「この“音”というもの、剣と同じ刃を持つな」

「いや、だから何その剣比喩…」

俺は思わず吹き出しそうになった。


放送部の部室では、マイクが立ち、スピーカーがボソボソ震えていた。

部員が「次の放送原稿はこちら~」と言いながら原稿を差し出してきた。

ヴェルネスはマイクに向かって一歩前に出た。


「……我の声よ、この世界に響け」

「え、マジで?」

部員たちは固まり、マイクを奪って「いのさん、原稿どおりにお願いします!」と促した。


彼女が一言――

「こんばんは、民たちよ。今宵も我と共に在らんことを」

教室ほど近かった放送部の部屋で、異様な空気が流れた。


部員の一人が小声で「ちょっ…美人が言うから、なんだか怖いな…」と呟く。

俺は背筋がぞくっとした。




その夜道を教室に戻りながら、ヴェルネスは真剣な顔で言った。

「照人。我、気づいたぞ。演劇・軽音・放送……それぞれ良いものじゃ。だが、すべてを兼ね備えた活動こそが我の望みじゃ」

「つまりどういうこと?」

「ステージ。歌・踊り・演技・声。全てが一つにある“光る場”――それが必要じゃ」


彼女は鞄からスマホを出し、校内SNSの掲示板を開いた。

「アイドル同好会、爆誕!」の文字が、夕空の光に反射する。

「文化祭でデビューライブやるぞ。メンバー:我・照人・ユウト」

「え!? 俺!? それとユウト!? ってか勝手にメンバーに入れるな!!」

「許可なぞ不要。先手必勝ゆえな」


ユウトがその場に現れ、目を輝かせた。

「ま、まじ!? いのちゃんとステージ!? 俺…推せるってレベルじゃねぇぞ!」

「頼むから、静かにしろ」

俺は自分の鞄をかばんごと乱暴に閉じた。




教室の中、夕焼けの光が机にゆらゆらと映る。

女子たちはスマホ片手に、「いのちゃんアイドル!?」「ユウトも出るってマジ!?」「なんだか、面白くなってきた!?」とざわめいていた。

俺は椅子に浅く腰かけ、頭を抱えた。


(俺の姉ちゃんが…いや、姉ちゃんの代わりの魔王が…アイドル同好会って…この学園、どうなってんだ…)

そんな俺の耳に、静かに聞こえた。


「ふふっ、これで我の“民”も増えるな」


ヴェルネスはスマホを握りしめ、夕焼けを背に笑っていた。

その姿が、どこか“王者”で、“アイドル”で、“魔王”であることを同時に感じさせた。


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