表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きこもり姉ちゃんの中の人、魔王です。だけどアイドル始めました。  作者: 風谷 華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/8

第1話 俺の姉ちゃんが魔王になった朝

家には、“決して開けてはいけない扉”がある。


 俺――**東雲しののめ照人てると**の家にも、その扉が存在する。

 二階の廊下、一番奥の右側――姉、東雲いのの部屋だ。


 美人で成績もよく、どこか神秘的だった姉は、半年前にいじめを受け、学校に行かなくなった。

 同級生の彼氏(学年一のイケメンで人気者だったらしい)に告白されたせいで、嫉妬され、孤立し、壊れていった。


 それから姉は半年間、一歩も外に出なかった。

 家族と顔を合わせることすら避け、夜中にこっそり冷蔵庫を開け、風呂も丑三つ時。


 まるで幽霊のように、存在だけが家に残っていた。


 


 ――はずだったのに。


 


 「…………え?」


 


 その朝、俺は目を疑った。


 まだ春休み。高校入学まであと一週間。

 朝飯を食べにリビングに降りた俺の視界に飛び込んできたのは――


 下着姿でステーキを焼いている姉だった。


 


 「え? え? え????」


 


 鉄板でジュウジュウ音を立てる肉。

 立ち込める香ばしい香り。

 その前で、堂々と立っているのは、半年ぶりに見た姉――のはずなんだけど。


 黒髪ロングに、白くて細い手足。美人で、おっとりした印象。


 だけど今、

 顔はキリッと引き締まり、目は鋭く、胸は――


 でかい。布一枚でFカップが存在を主張してる。


 「なんで下着!? なんでステーキ!? てか、なんで姉ちゃんがリビングにいるの!?!?」


 その“姉”は、ふっと俺を見て、にやりと笑った。


 「ふはっ、ふははははっ……ようやく目覚めたか、東雲照人!」


 「誰だよお前!!」


 「我はお主の姉ではない。正確には中身が入れ替わった。

 この肉体は確かに東雲いのだが、内に宿るのは――第六魔王・ヴェルネス!」


 「いやいやいやいや!? なんだその厨二ネーム!?」


 「異世界にて我が研究した転生魔法により、この世界の波長の合う魂と接続し、こうして入れ替わりに成功したのじゃ。

 ふぉっふぉっふぉ!」


 「てか! 下着!! 着ろよ服を!!」


 あまりに堂々としすぎててツッコみ損ねてたけど、今この人(姉の身体)、下着一枚なんですけど!?!


 「視界がヤバいんだよ!! その巨乳! てかお前、姉ちゃんの身体なの! 俺にとって一番見ちゃダメなやつなの!!」


 「は? 最初からこの姿だったが?この姿で布団の中にいたぞ?」


 「この世界では人に会うときはちゃんと服を着るの!! せめて俺のTシャツ着て!!」


 俺は慌てて自室に駆け込み、引き出しからTシャツを一枚つかんで戻った。


 「これ!! 着てくれ!! ほんと無理!!」


 「ふむ……お主の布か。ふん、まあ我の器である肉体に、貴様の服を纏わせてやるのも悪くはない」


 そう言って――ヴェルネス(中身)は、躊躇なく背中にあるブラジャーのホックに手をかけた。


 「脱ぐなぁあああああああああああ!!」


 俺は全力で後ろを向く。


 「ブラの上から着るんだよ!! 今のお前、俺の姉ちゃんの身体してんだぞ!?!?」


 「ふむ……人間の羞恥という感情は難しいな」


 すぽっ。


 着替えたらしい。振り向くと、俺のTシャツをぶかぶかに着た姉(の身体)がいた。


 けど――胸がデカすぎて、生地がぴったり張りついてる。

 **布越しにわかる柔らかさ。**視覚の暴力。情報量の過多。


 「……あ~~~~~~~っっっっ……!」


 思わず俺は目をそらした。

 こいつ、わかってやってるだろ!!


 そのままヴェルネスはステーキを切り分けながら、さらっと言った。


 「ちなみに、東雲いの――お主の姉は、我の世界で元気にしておるぞ?」


 「……は?」


 「今は我の肉体で、魔王として国を治めておる。

 魔力も才能も桁違いでな、民の信頼も厚い。むしろ我より魔王らしいまである」


 「大丈夫なのそれ!? いの姉ちゃん、繊細なんだぞ!?!?」


 「大丈夫じゃ。我の記憶はこの身体に、姉の記憶もあちらにある。

 つまり、互いに融合したのじゃ。どこにも問題はない!」


 「いや問題しかねぇよ!! 返せよ!! 俺の姉ちゃんを!!」


 叫ぶ俺を見て、ヴェルネスはふっと笑った。


 「焦るな。あやつも我が世界を気に入っておる。

 満足したら、また入れ替わってやるわい」


 「っ……!」


 現実感が、どんどん壊れていく。


 「……もう、無理。寝るわ俺。これは夢。絶対夢」


 現実逃避するように、俺はくるりと背を向け、階段を上がる。


 「起きたらきっと、元の引きこもり姉ちゃんが戻ってる……うん、そう……」


 視界の端に見えている――ぶかぶかTシャツに下はパンツ(しかもちょっと見えている)の姉ちゃん(魔王)が、ステーキをパクパク食べてる姿は、きっと幻、そう、夢に違いない。


 


 俺はベッドに潜った。


 これは夢。絶対、夢。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ