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亡骸群落  作者: yuki
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亡骸群落~第二話:黒い心霊写真~

かつて私の手元に、一枚の写真がありました。

それは、写真…というより、携帯電話に送信されてきた画像と言ったほうが正確なのでしょうが。

写真には、若い男性が1人写っていました。

撮影した場所は、男性の住まい。右手を正面に伸ばし、左手はピースサイン。いわゆる自撮り写真です。

しかし、その写真には奇妙なモノが写っていました。

男性の背後。光が届くことのない部屋の奥。

そこから、黒く長細い塊が伸びて…男性の肩を覆っているのです。

闇に掴まれる。そう表現すれば良いのでしょうか。

その写真に映る怪異に気付いた時。私の頭の浮かんだ言葉は…。

『心霊写真』。

そう。これは心霊写真だと思ったのです。

写真に写っているモノは何なのか。幽霊といった類のモノなのか。疑問を覚えた私は、こういった事に詳しそうな友人に相談する事にしました。

その写真が、所謂、心霊写真かどうか。

しかし、この写真の本当の問題は、そこではありませんでした。

その問題とは…。

この写真に写っていた男性が、

…恐らく、私にこの写真を送信した直後に…、

失踪したのです。

男性は今も行方不明のままです。

…。

今思えば、この一枚の心霊写真をきっかけに、一連の怪異は始まったのでしょう。

結果、大切な友人や周囲の人を危険に巻き込んでしまいました。

きっかけはどうあれ、始まりは私が引き起こしたのです。

本当に、ごめんなさい。

悔しいです。

今更悔やんでも、悔やみきれません。

一人暮らしのアパートの一室。カーテンの隙間から朝陽が差し込み、ベッドに横たわる私の瞼を照らす。

もう朝か。すっかり日の長い時期になった。

…早く起きて、出社の準備をしなきゃ。

気怠い体を気合いで引き起こす。

洗面台で歯を磨いて顔を洗い、寝癖のついた髪を鋤き、パジャマから出社用の服装に着替え、化粧台に座る。日常的でとても普通の朝のルーティンだ。

私、川島葵かわしまあおいが社会人になって一年と数ヶ月。

一年前の春が懐かしい。

生まれ育った地元の街の高校を卒業し、大学を出て、就職。

偏差値も普通。母校も普通。実家がお金持ちというわけでもない。

際立った才能を持つこともなく、一般企業に勤める女性社員。

自己紹介が三行で済んでしまうような私でも、人一倍気を配り、努力していることはある。

それは、他人から嫌われない術を磨いていることだ。

子供の頃から人に嫌われないように振る舞い、社会人になってそのスキルは更に磨きをかけている。

私は、化粧鏡に向かって笑いかけた。

傾きを変えてさまざまな表情を何度も鏡に映し出す。

どの角度からの笑顔が上司に媚びを売れるか。

どんな表情が先輩社員からの信用を得るのに効果的か。

男性に好かれる微笑み方。女性に嫌われない仕草。

人に嫌われないための立ち振る舞いの研究と練習を、私は欠かさない。

笑顔の練習。これも、毎朝行っている私のルーティーン。

社会人になって僅か一年ちょっとだが、そんな時期に会社内で目を付けられ孤立するなんて、真っ平ごめんである。

私は人から嫌われて生きるなんて、絶対に嫌だ。

『他人に求められたい』

人間なら、誰だって思う願望だろう。

承認欲求。

それは他者に依存するだけの無意味な欲望だ、嫌われる勇気を持たねばらない、と宣う知識人もいる。

しかし、私には無理だ。

私は、『誰からも嫌われたくない』。

そう思うのは私だけじゃない。普通なら、誰だってそう思うだろう。

そんな、至って普通の私だけれども、たった一つだけ、普通じゃないことがある。

それは、私には『特別』な友達がいること。

友人の名は、神懸彩子かみかかりあやこ

彼女の何が普通じゃないかと言うと…。

彼女には、普通の人間には見えないもの…いわゆる、幽霊が『視える』のだ。

私が彼女と初めて出会ったのは、同期として同じ会社に入社した日だった。

彼女は変わっていた。

会社の近くの電柱に向かって笑い掛けていたからだ。

その電柱は、別に何の変哲もない電柱だった。

しかし、一つ、変わっていることがあるとすれば。

その電柱の根本には、小さな花瓶に活けられた花が供えられていた事だろう。

職場での同僚である彼女の仕事ぶりは、マイペースで鈍臭い。その一言に尽きる。

小柄で貧相な体格。化粧っ気のない顔。同い年とは思えない幼ささえ残る容姿。その顔も黒髪長髪の前髪で隠れてしまっている。コミュニケーションも最低限で社内に友達はおらず、他の同期社員からも暗い人間だと印象付けられていた。

そんな彼女と出会って半月後。

電柱の根本に屈んで、「寂しくないよ」、そう小さく独り言を呟く彼女を見掛けた。

彼女と出会って一ヶ月後。

心無い通行人に蹴飛ばされ倒れる苔むした花瓶を元通りに戻している彼女姿を目にした。

その後、その電柱の近くの道路で不幸な交通事故があり、少女が一人亡くなった事を社内の噂話で知った。

出会って二ヶ月後。

再び苔むした花瓶を蹴飛ばしていた通行人を見掛けて、声を荒たげる彼女がいた。

彼女はその通行人に変人扱いされたが、それに臆する事なく「この女の子に謝って!」と果敢に訴えていた。そんな彼女の足は震えていた。

それははたから見れば普通ではない行動だっただろう。苔むした花瓶を蹴飛ばした通行人は、彼女に奇異な眼を向けながら去っていった。

彼女は花瓶の汚れを丁寧に取り払い、元の位置に戻しながら、「ごめんね」と電柱に向かって頭を下げていた。

あぁ、なるほど。

彼女の行動を見て、私は理解した。

彼女は普通じゃない。

きっと彼女には、『視える』んだ。

自分には見えていない、何かが。

…面白い。

興味を持った私は、その女性に声をかけた。

それから一年後。

私・川島葵は、彼女・神懸彩子と友人になっていた。

職場の昼休み。私は彩子と屋上の休憩スペースで昼食を共にしていた。

「ねぇ彩子。今度、合コンに行こうよ。」

「ん~、葵ちゃん、また合コン?」

「仕方ないじゃない。先輩の誘いなんだよ。私が行けば男性陣が喜ぶんだって。」

「まぁ、葵ちゃん可愛いからな~。」

「彩子だって、顔はいいんだから、オシャレすればモテるよ、きっと。」

「そんなことないと思うけど…。ん~、でも遠慮しとくよ。」

「なんでよ? 彼氏いないんでしょ? いつまでも若さがあると思っちゃダメだぞ。」

「私、人前に出るの苦手なんだ。それによく空気読めないって言われるし。」

「そう…、残念。そんな空気の読まなさが彩子の良いところなのにね。」

「ははは。ごめんね。」

「そう言えば彩子って、会社の集まりにもあまり顔出さないよね。そんなに人前に出るの苦手なんだ?」

「…うん。」

「それって、あの『力』のせいなの?」

「うん。…ちょっとそのことで実家の両親といろいろあってね。」

「…家族かぁ。なんか、大変そうだね。」

「でも、今は実家から出て一人暮らししてるから、平気。両親とは大変だったけど、味方になってくれたお婆ちゃんには感謝してる。実家を出れたのもお婆ちゃんのおかげ。」

「彩子のお婆ちゃんか…。そう言えば、彩子の『力』って、遺伝なの?」

「どうだろう。お父さんやお母さんは普通だった。でも、私も詳しくは知らないけど、お婆ちゃんはその界隈では名の知れている霊能力者なんだ。」

「お婆ちゃんも、彩子と一緒で『視える』ってこと?」

「ううん。もっと凄いことができるみたい。私は『視える』だけだけどね。」

「『視える』だけでも凄いと思うよ。」

「『視える』だけで、他に何かできるわけじゃないけどね。…今まで言わなかったけど、そこの日が差し込みづらい建物の影のところにね。」

「ん?、あの苔だかカビだかが繁っているところ?」

「うん。そこにね、子供の幽霊がいるんだ。」

「え!、ほんとに?」

「うん。でも生きている人間に何かするわけじゃないの。悪い幽霊なんて、ほとんどいない。ただ、その場所で悲しそうな顔をしながら立ち尽くしているだけ。」

「そ、そうなんだ。」

「本来、此処に在る筈の無い人。陽炎のように儚い存在。きっと、うまく成仏できず、迷い、彷徨って、ここに来ちゃったんだろうな。」

「へ、へぇ…。」

「帰るべき場所も行くべき場所も失ってしまった、可哀想な人なの。そんな人達が、この街にはたくさんいる。」

「…。」

「ここはね、あなたが帰る場所じゃないんだよ。早く天国に行けるといいね。」

「…今のは、その…幽霊さんに言ったんだよね?」

「うん。私には何もできなけど、せめて、大切にしてあげたいと思っている。」

「…彩子は優しいんだね。」

「そんなこと、…ないよ。」

♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪

「彩子、携帯が鳴ってるよ。」

「ほんとだ。誰からだろう…。あ、お婆ちゃんからだ。葵ちゃん、ちょっと待っててね。」

「はいよ~。」

「もしもしお婆ちゃん。…うん。…そうなんだ。…解った。行ってみるね。うん、じゃあね。」

「…。」

「お待たせ、葵ちゃん。」

「さっき言ってたお婆ちゃんからの電話?」

「うん。この近くの神社に、妙な4本腕の木像が持ち込まれたらしくて。それを視て欲しいんだって。」

「ん? どういうこと?」

「お婆ちゃんね、時々私に心霊関係の仕事を頼んでくるんだ。私もお婆ちゃんには世話になっているから、できる範囲で手伝いをしているの。」

「彩子って、お祓いもできるの?」

「ううん、無理。危険なものかどうかが解るぐらい。」

「そうなんだ。でも、孫に手伝いをさせるとは…。彩子のお婆ちゃんは忙しいんだね。」

「それもあると思うけど…。お婆ちゃん、『彩子には自分自身の才能を大切にしてほしい』ってよく言われる。だから手伝いを頼んでくるみたい。」

「才能って、『幽霊が視える力』の事?」

「ううん。違う。」

「?」

「私もよくわかってないんだけど…、『命に優しくできる』事が、私の才能なんだって。」

私、川島葵は、いわゆる普通の人間だ。社会集団の中で普通に暮らしている一般人である。

しかし、私の同僚である神懸彩子には、普通の人間が持っていない不思議な力がある。

それは、幽霊が見えること。

彩子はそれを些細なことだというが、そんなことはないだろう。日常生活の中で、普通の人間には見えない幽霊が見えるなんて、私が思う日常とは掛け離れている。

しかし、彩子の目に幽霊が見えようと、それは私自身の生活とは無関係であり、私の生活が普通でなくなる事はない。

ない。…はずだった。

私の手元にある一枚の写真。

この一枚の写真をきっかけに、私の『普通ではない日常』は始まった。

夏の終わりが見え始める頃。

職場の屋上で私と彩子はお昼ご飯を共にしていた。

「…彩子、元気ないね。」食べかけのお弁当箱を見つめる彩子に私は声をかける。

「うん、ちょっと失敗しちゃって。また先輩に怒られちゃったんだ。」

彩子の仕事ぶりは、同期の私からみても鈍臭い。真面目ではある。しかし日頃からの対人関係の積み重ねができず、敵を作りやすいのだろう。人間関係だけで社会を乗り切っている私とは正反対だ。

「あの先輩、性格悪いからね。人の粗探しが生き甲斐みたいなもんなんだよ。気にしちゃだめ。」

「うん、葵ちゃん、ありがとね。」

「どうって事ないよ」と同年代の女性相手に姉御ぶる私。

幽霊が視えるという特技は持っていても、現実の人間社会…少なくともこの会社内での彩子の立場は弱い。

お昼ご飯だって、私以外、一緒に食べてくれる奴はいない。

入社後の彩子は誰とも距離を空けており、同期社員や先輩•同僚とも良好な人間関係を築けず、孤立していた。

その上、『視える』ゆえに、端から見れば誰もいない場所に向かって話し掛ける変な女性と噂されてしまい、心無い同僚数人は彼女の名前を弄って、陰で「サイコさん」などと呼ぶ始末だ。

私も先輩達から、彼女をその蔑称で呼べ、と強要されたことがある。

確かに彼女は普通ではないのかもしれない。しかし、彩子の事情を知っていた私は、その強要をやんわりと断る。

それでも社内での彩子への陰口は続いてた。集団は、その中で孤立した者を虐げる。誰か一人を敵にする習性があるという。

その状況が、弱い立場の者を意味もなく皆んなで侮辱するような…、集団の空気だけに流されているような感覚に嫌なものを感じた私は、その空気に水を刺してみる事にした。

日頃の人間関係を利用して、波が立たない程度に、「パワハラってバレたらクビらしいですよ~」と言い続けてみたのだ。

結果、彩子への陰口は徐々に減っていった。偏屈な人物扱いは続いているが、それは仕方ない。

しかし、後にそれを耳にした彩子は、私に感謝の言葉を伝えてきた。その言葉に、私も悪い気はしなかった。

以来、私と彩子の友人関係は続いている。

「そう言えばさ、彩子、このアプリ知っている?」

友人同士の何気ないふわっとした日常会話が続く。

「なにそれ?」

私が差し出した携帯電話の画面に映る『MutualAid』と記されたアプリのアイコンを見ながら、彩子が返事を返す。

「最近、流行ってるんだって。」

「…ミューチュアルエイドって読むのかな。日本語で相互扶助とか共済って意味だよね。」

「へぇ。よくそんな言葉、知ってるね。」

「うん。昔、お父さんが教えてくれたんだ。」

「そうなんだぁ。でさ、このアプリ、私も他の同僚から勧められてインストールしたんだ。」

「ふーん。便利なの?」

「まだ使ってないんだけど…『社会は助け合い』をキャッチフレーズにしててね。便利…らしいよ。」

「うーん、私、苦手なんだよね。機械系というか…デジタルものとかSNSとか。今まで馴染みがなくて…。」

「あはは。実は私も苦手なんだ。メルアドとか個人情報を登録するのが煩わしくてさ。」

青空の下の屋上で。彩子と私の笑い声が空に吸い込まれていった。

さて、と。

お昼ご飯を食べ終わったところで、私は彩子に、とある相談を持ち掛ける。

「ところで彩子。ちょっと見せたいモノがあるんだけど…。」

「なぁに、葵ちゃん。」

私は彩子に一枚の写真を見せた。

「うん。この写真なんだけどさ…。彩子に見て欲しいんだ。」

「?」

彩子は、お弁当を食べる手を止めて、私が差し出した写真を受け取る。

「男の人が写ってるね。知り合い?」写真を一目見て、彩子が尋ねる。

私は「うん。彼氏」と返事を返す。

「へぇ。派手な人だね。かっこいい。自慢?」

「音楽関係の仕事しているみたいで、見た目が派手なのは確かなんだけど…そうじゃなくて、もっとよく見て。」

私に促され、彩子は写真を見つめる。

男性が映っている一枚の写真。

撮影場所は、男性の住む自宅のアパートのリビング。

男性が写真の中央でカメラに向かって満面の笑みを浮かべており、胸元から金色のネックレスがのぞいている。

いわゆる、自撮り写真である。

ここまでは、普通の写真であった。が…。

「何か…変なモノが写ってるね…。」

「そうなの。これって、心霊写真じゃないかな…。」

男性の右肩付近に、黒いシミのようなモノが写っている。

その黒いシミは、写真の男性の右肩を包んでいた。

まるで、男性の後方から黒いもやが覆い被さってきているかのように見える。写真の中の男性は、その異常に気付く気配は一切無い。

この写真は、一見して異常なモノである。私はそう考えていた。

「彩子は、この写真、どう思う? この黒い靄って、その…幽霊?、なのかな?」

彩子なら、こういったオカルト…心霊現象に詳しいはずだ。そう思い、私は彩子に写真を見せたのだ。

しかし、彩子の返事は私の予想と違った。

「心霊写真とは、少し違うような気がする。」

写真を見詰めながら、彩子はそう答えた。

これが、心霊写真じゃない?

「どうしてそう思うの?」

「うーんとね、お婆ちゃんが以前に言っていたんだけど…。」

彩子の祖母は、高明な霊能力者らしい。

「『眼に見えないモノが写真に映るはずが無い』んだって。」

彩子によれば、特に最近のデジタル写真はフィルムを用いた銀塩写真とは異なり、センサーで光情報を読み取り、そのデータをメモリに保存するという過程があるため、超常的なモノが映る余地は無いそうだ。

更には、アナログ写真…つまりフィルムを用いた心霊写真は、現像の仕組みや手ブレ・多重露出といった精度の問題で超常的に見えてしまう写真が殆どらしい。

「少なくとも、私は本物の心霊写真を見た事は無いよ。だいたい合成か、別の要因によるものだった」と彩子は続ける。

「だから、葵ちゃんが持ってきたこの写真が心霊写真だとは、私は断定できないよ」それが彩子の結論らしい。

…心霊写真じゃないかもしれない。しかし、問題はそれだけじゃないのだ。本題はこれからだった。

「でもね、この写真に写っている私の彼氏…。今、行方不明なんだ。」

「え!」

彩子が驚きの表情を浮かべる

「この写真ね、彼氏と通話中に送られてきた写メをプリントしたモノなんだけど…。この直後から、彼氏と連絡が取れなくなったの。」

「そうなの…」彩子は真剣な面持ちで私の話に耳を傾ける。

「彼氏の知り合いに聞いてみたんだけど、この写真が送られてきた翌日には、彼氏と連絡が取れる人は一切いなくて…。」

「うん…。」

「自宅にも戻ってなくて…。行方不明だって。全然見つからなくて…。失踪したって言われている。」

彼氏の状況を告げると、彩子は突然立ち上がった。

「早く探さないと! 葵ちゃんの大切な人なんでしょ!」と彩子は我が身のように狼狽える。

「…大切な、人…」慌てる彩子の姿を見て、私は逆に、何故か急に感情が冷めた。

「大切、なのかな。先輩に彼氏を紹介されて、まだ一週間だし…。わかんない。」

「?」私の返事に彩子は怪訝な表情を浮かべる。

「あ、でも、お金を貸しているから、返してもらわなきゃ。」

「出会って一週間の男にお金貸したんだ…。いくら貸してるの?」

「十万円。」

「え?」

「仕事でどうしても必要らしくて。先輩からの紹介だし、知らん顔もできないし。」

「そ、そうなんだ…。」

「悪い人じゃないよ。私の事、好きだって言ってくれたし。電話の時も、新しいネックレス買ったって盛り上がったし。」

「ねえ、葵ちゃん。それってなんかおかしくない?」

「ん、なんで?」

「むぅ…。」溜め息を吐く彩子。

「ま、それはそれとして…」と仕切り直すように真剣な表情を浮かべる彩子。

「心霊写真の現場…。葵ちゃんの彼氏のアパートに行ってみたい。その場所を視てみれば、彼氏の行方について何か解るかもしれない。」

そうして、私は彩子を連れて彼氏のアパートに向かうこととなったのだった。


第三話へ続く

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