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第4話 桶狭間の合戦

 「あははははははははは  あははははは・・・・鬼がくる! 信長め!  信長め!」

信勝が殺されたことを聞いた母、土田御膳は狂ったように泣き喚き、かと思えば笑い出しとしばらくは錯乱状態が続いたが、その後は全てを忘れたように表舞台からは消えていった。この土田御膳、その後も長生だったようで本能寺の変以後は信長次男の信雄の庇護の元、文禄3年(1594年)に伊勢国、安濃あのつで死去した。死亡時年齢は不祥だが70代中頃の歳だったのではないだろうか。


 永禄3年の2月、ここは駿河の駿府今川館。現在の静岡県静岡市。

「太守様、尾張の大高、鳴海、二つの城より、信長が城周りに築いた砦に阻まれ食糧確保にも難儀のよしと援軍の依頼が矢継ぎ早にきております」

太守様とは駿河、遠江、三河を治める大大名、今川義元いまがわよしもとである。

「尾張の小賢しい小童め。そろそろ叩いておかないといかんのう・・この機会に一気に踏み潰すか」

「は、美濃の斎藤道三亡き後、織田を援護するものはありませぬ。今が良い機会かと」

「うむ、出陣の触れを出せ。5月の初めには出陣したい」


永禄3年西暦1560年5月 

ここは尾張の清洲城。

「信長様、今川が本格的に動き出しました。ここ2、3日中には出陣のよし」

「で、義元は出てくるか」

「はい、総大将は義元本人が出てくると」

「よし、・・・・・・猿!」

信長が、雑用係の猿にそっくりな男を呼んだ」

「はい〜 猿めはここに」

どこに隠れていたのか、縁側の下からヒョイっと顔を出した。

「猿、分かっているな。すぐに準備に取り掛かれ」

「はは〜 猿めにお任せ」

と言うや、あっという間に目の前から消えた。

「殿、猿に何を?」

と重臣の丹羽長秀に尋ねられたが、それには返事をせず一点を見つめるように扇子を鳴らし続けた。家老たちが清洲城で籠城をと進言するも、返答せず世間話で終始していた。


 5月19日 その夜・・信長は浅い眠りに入っていた・・・・・

“信長〜 わしが分かるか。 お主の祖先、ナガスネヒコじゃ! これから言うことをよく聞け。負け戦でお主に死なれては困るからの。良いか、今お主が考えている戦をすれば良い。しかし、それでも義元には勝てぬ!よいか、儂が一時いっとき(約2時間)だけ嵐を呼ぼうぞ!その嵐に乗るのじゃ。あはははは  ぬかるむ ぬかるむ あはははは“


「信長様 信長様! 今川勢が丸根砦、鷲津砦に襲い掛かりました!」

その知らせを聞いた信長! ガバッと飛び起きると

「出陣!」と叫び清洲城を飛び出して行った。まだ明け方の4時。信長について行けたのは、身直にいた小姓5騎のみ。午前8時には熱田神宮に到着。午前10時には善照寺砦に入り兵が集まるのを待った。この時の軍勢おおよそ2000ほどか。


 その頃、今川義元の本陣では、信長が善照寺砦に入ったとの情報に松井宗信、井伊直盛などの部隊を前衛に配置、万全の体制をとりながら松平元康(のちの徳川家康)が食糧を運び入れた大高城に向かった。

その道すがら、街道の至る所で村人に歓迎され酒や握り飯が振る舞われた。兵達は村人たちがあまりに歓迎している姿をみて気をよくしていた。そこに大八車に大量に酒樽やご馳走を積んだ一団に出迎えられた。その村人のおさは先ほど信長に命令され飛び出して行った猿(木下藤吉郎)である。

「いや〜今川様の皆々様方〜 よう御出でくださいまし〜 いくさも、もう終盤だに〜 ここらでと村人一同で歓迎の品々お持ちしましたに。お時間ごぜーましたら、ここらでご一服どうぞ」

と愛敬あるサル顔で大量の酒やつまみを差し出した。

「いや〜 織田のうつけ様にはもう困り果ててただに〜 助かったべや なあ〜」 

と仲間たちと歓迎の意を表している。少しそのまま待っていると、今川の家来衆が戻ってきて

「殿様のお言葉じゃ。 皆のもてなし、心嬉しいとの仰せじゃ」

「はは〜 お言葉ありがてえです」

「もうすぐ、今川様が儂らたちのお殿様じゃ〜 嬉しいの〜」

と言葉を交わしつつ村人が帰って行った。しかしその村人たちは山裾の道に入り込むと一斉に別れて山中に消えて行った。

“あれだけ大量の酒や、生物もあるだに。腐る前に、早めにどこかで止まって食うべ“と藤吉郎はその時を遠くから見張りながら待った。


「太守様、大量の酒や肴、いかがいたしましょうや」

「うむ、どこか良き場所を見つけ、皆に振る舞え。見張り番だけはしっかりせい」

「ありがたき、その様にいたしまする」

今、今川義元の周りには約6000の兵が守りを固めている。更に前衛には井伊直盛、松井宗信、瀬名氏敏を配置し万全の構えを見せている。が、その鉄壁の守りが今川型の緩みに繋がっているいようとは勝ち戦が続く今川の誰もが思わない。

「あの岡の上でしばし休もうぞ」

段々と気温が上がり兵達にも疲れが見える。目の前に広がる岡、運命の“桶狭間山“へと兵列が登っていった。


「甚兵衛! 魚は桶狭間山 殿にすぐに知らせろ!」

1人の農民姿の男が藤吉郎の指示で消えた。

「しかし、それでも今川の兵の数はまだどでかいの〜 織田の殿様はどうするのかの〜」


 桶狭間山では兵達に先ほどの酒や肴が振る舞われ、皆いい気分で騒いでいる。今川義元も上機嫌でさながら真昼間からの宴会状態であった。 酒宴が始まり小1時間も過ぎた頃、急に空が暗くなりだした。

東の空から真っ黒な大きな雲が覆い被さってきた。兵達が空の異常に気付き見上げた時、凄まじい稲光が空を走り、岡の上に立つ大木が落雷で倒れた。それに驚いた側近たち、

「太守様、ここは危のうござります。山裾に降りましょう」

と促され、桶狭間山の裾、狭間に急いで降りて行った。とその時を合わすように視界をも遮るような大雨が降り始めた。兵達は雨宿りの場所を求めてんでんバラバラに散っていった。


 その大雨の中を、織田の軍勢が進んでいる。鎌倉街道から横にそれ、大将ケ根の山道を突き進む。

“神は我に味方した!“織田信長は今朝方の夢を思い返し、勝利を確信した。この雨で桶狭間は細い一本道を残して全てがぬかるみに埋まる。今川の兵は身動きが取れなくなるだろう。

「良いか! 目指すは義元の首のみ! その一点に突き進め!」

織田の軍勢が、槍先のように目指す一点に飛び込んでいった。


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