こうして私(陰キャの)は生まれ変われた気持ちになれた〜とある少女の失恋模様〜
この日、私は失恋した。
夏休み前の終業式が終わったその日の夕方、近所の公園に呼び出されて初めて受けた告白。相手は隣のクラスの男子。
私の目を真っ直ぐに見ながら発する、彼の言葉の数々にドキドキした事を思い出す。
それから散々悩んだ。こんな私が誰かと付き合えるなんて思いもしなかった。多分、今までの人生の中で一番悩んだと思う。
それでもやっぱり、付き合うことに決めた。
陰キャの私でも、好きになってくれる人がいた。だからこそ精一杯応えたいと思ったし、私も好きになりたいと思ったし。
その日から私の努力が始まる。
ネットでバッグやブラウスにスカート。靴に靴下。多分、見せることはないセットアップの下着を購入。ついでにベースメイクのセットやリップグロスも買った。
姉や母の化粧品をちょっぴり拝借し、動画を見ながらメイクの練習。
ベースを済ませ眉毛を整える。
――おっ!
アイシャドーを入れてライナーを引く。
――わぁ!
マスカラを盛ってチークを延ばす。
――へぇ……
みるみる変わっていく自分にドキドキする。
それから度々、私達はにデートに出かけた。
最初はどこを回ったか覚えていない。緊張しすぎて俯いてばかりだったから。
二回目以降はちゃんと話すことができた。上手く話せたかは分からないけど、彼も笑ってくれていたから大丈夫だと思う。
そらからどんどんと積極的になっていく私。手を繋いだり密着したり、五回目のデートではファーストキス。
楽しかった。大人になれた気がした。このまま全てをあげてもいいかと思うくらいに。
だけど、終わりは突然やってきた。
【お前、重い。別れる】
たったそれだけの文字がスマホに浮かび上がった。
身体が震えた。直ぐに返信しても、既にブロックされている。電話も出ない。
慌てて彼の家に行っても、誰も取り合ってくれない。
自宅に戻り、食事も取らず部屋に籠った。家族が寝静まった頃、ハサミを手にして洗面所に。
服を着たまま風呂場に入る。そのまま熱めのシャワーを浴びながら、じっとハサミを見つめ続けた。
――何で……私が……何を……
左手で自分の胸ぐらを掴み……ハサミを突き刺した。
彼が好きな色のブラウスを切り裂く。あの人が好きな柄のスカートを切り刻む。アイツにだけ見せてもいいと思い、背伸びをして買ったブラとショーツをずたずたにしてやった。
そして、持っていたハサミを床に叩きつけ……泣いた。
うわぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!
あの日以降、私は再び陰キャに戻る。前よりも闇が深くなったかもしれない。
ただあの日、服や下着を切り裂いた後に感じた、“生まれ変わった”様な感覚を私は一生忘れない。
またいつか、あのドキドキを感じたいと思う。
そして今日、始業式を迎えるのだった。
最後まで読んでいただき、有難うございます。
何かしらの反応があれば、単純な筆者は小躍りするほど喜びます。
よろしくお願いいたします。