世界うるるん、時の旅
四年の一度、うるう年には二月二十九日があります。
うるう年がないと、地球が太陽の周りを一周する間隔にズレが生じます。
放っておくと日本で四月が真夏になるなど、暦と季節がおかしくなっていきます。
うるう年を正確にいうと『うるう日』のある年、となります。
森の中で南天の低木が赤い実をつけていた。
その前にむしろが敷かれていて、小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんが座っていた。
「子狸くん、閏年って知っているよな」
「うん、知っているの。白猿さん。4年に1回、2月が1日長くなるの。でも、今年はうるう年じゃないよね?」
「そうだな。次のは来年の2024年だ。西暦で4で割り切れる年、で覚えるといいぜ。地球が太陽の周りを一周するのが、だいだい365日と6時間ぐらい。そのズレを調整するために4年に一回、一日分長くするんだ」
「んとね。2月に1日増やすのは変なの。12月を伸ばせばいいのに。あ、そうすると大晦日が32日になっちゃうの。ところで、なんで『おおみそか』っていうんだろう……」
「昔は三十日を『みそか』って呼んだんだぜ。年の最後だから『おおみそか』にしたんだ。で、うるう年の話に戻すと、日本の年度が4月から始まるみたいに、西洋でも3月から行事を始めていた時期があったんだ。その頃にうるう年ができたんだな。最後の月が2月だから、そこで調整していたんだ」
「そうだったんだ」
「中国や日本では、昔は閏月ってのもあったんだぜ」
「うるう月?」
「空の浮かぶ月の満ち欠けはだいだい29日半で一巡するんだ。暦のひと月を29日と30日で交互に使って、12か月で354日にしていた時代があった。月の満ち欠けを基準にした太陰暦ってやつだ。この場合は、地球が太陽の周りを公転する365日とは11日ずれる。だから3年に1回、うるう月をいれて調整したんだ」
「うるう月って、13月があったの?」
「同じ月を2回繰り返したみたいだな。普通の3月の後に閏3月を置くとか。うるう月は縁起が悪いと思われていて、王様がなるべく城を出ずにこもっていたそうだ。王が門の内側にいるということで『閏』の字になったらしいぜ」
「んとね。今のカレンダーだと、ひと月は30日か31日なの。だとすると月の満ち欠けとはズレていくと思うの」
「今のカレンダーは太陽だけを基準にした太陽暦だ。だから、暦の月は月の満ち欠けと関係なくなっているな。4年に1回、うるう年がある。正確にいうと『うるう日』がある年ってことだな。さらに厳密にいうと、4年に1回ってのも例外があるんだ」
「え? うるう年のはずなのにそうじゃない年もあるの?」
「さっき公転周期は365日と6時間といったけど、それでもズレはあるんだ。こういう感じのルールで調整しているんだ」
・西暦で4で割り切れる年は、原則として閏年
・ただし、100で割り切れるなら原則として閏年にしない。
・ただし、400で割り切れる年は閏年
「だから西暦2100年は例外で、2月は28日までになるぜ」
「例外になるのはずっと先だけど、その時期に近くなったらニュースで騒がれそうなの」
「閏年や閏月は、地球の公転のずれを調整するものだ。他に地球の自転のずれを調整するもので『うるう秒』ってのもあるぜ」
「んとね。地球の自転はだんだん遅くなって、1日の長さはだんだん長くなるってきいたの」
「うるう秒の考えかたはちょっと違うぜ。何億年もの歳月で自転が遅くなっていくのは確かだけどよ。潮の満ち引きや地下マントルなんかの影響もあって、自転する時間にブレがでることがあるんだ。これを微調整するのが『うるう秒』だ。たとえば2017年1月1日には、1秒追加されて午前8時59分60秒が使われたぜ」
「なんで9時前に1秒いれたの?」
「イギリスのグリニッジ標準時の午前0時に1秒入ったんだ。日本の時刻は標準時との時差が9時間あるぜ」
「んとね。1秒増えただけだと、変わったかどうかわからないと思うの」
「日の出と日の入りの時刻が1秒ズレるだけだからな。普段の生活では特に気にならないと思う。でもコンピューターの世界では、うるう秒は大きな問題になるらしい」
「え? たった1秒なのに何が問題になるの?」
「10台のコンピューターが同じ仕事をしていて、どれか1台が壊れても他のものが代用できるシステムがあったとする。この場合、10台のコンピューターは時計を合わせてないと正しく動かないんだ。時計がズレたコンピュータがあると、古いデータで正しいものを上書きしてしまう可能性がある」
「そういうシステムを使う人は特に気を付けないといけないんだね」
「うるう秒によるコンピューターの誤動作をネタにしたSF小説とかホラー小説も書けそうだ」
「んとね。そういう小説って、なんか難しそうなお話なの」
「うるう秒は地球の自転時間のズレが0.9秒をこえそうなときに使われてきた。でも、大きな影響がでるからな。うるう秒を設定している国際度量衡局の昨年11月の会議で『うるう秒は廃止』と決まったらしいぜ。自転とのズレをどうするかは2035年までに決めるそうだ」
ちなみに今でも明治以前から使われた暦(旧暦)が載っているカレンダーもあります。
旧暦では2023年には閏月があり、現在の3月22日から旧暦の閏2月となっています。