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第六話 Dead or Kiss?

ーー試験の次の日。


 俺とナツメは試験結果の確認のために学校に来ていた。

 学校の壁に、多くの合格者名が張り出されている。


「私の番号は、どこでしょうか……。あ、ありました、クラスはゴールドみたいです。」


 この学校では、入学者の実力ごとに上から、ゴールド、シルバー、ブロンズと割り振られている。

 ナツメはゲームのシナリオ通りにゴールドになっていた。

 ゲームではどこか抜けているようなキャラという印象だったのだが、改めて本当は優秀なキャラなのかもしれない。


「それで、エルの名前はどこでしょうか。まさか、落ちてたりして、なんてね。」


 そんな冗談をかましながら、ゴールド、シルバー、ブロンズと順に眺めているわけだが、一向に名前を見つけることができなかった。

 いや、この世界、冒険者学校くらいしか詳しく知らないんですが、この世界で学校に入れなかったらどうやって生きていけばいいんだよ。


 俺は絶望しながら、気づけば張り出しも、最後のコーナーにたどり着いていた。

 ナツメも俺の表情から察してか、黙って後ろをついてきている。


「ああ、この行で最後なのか。えっと、ヤラ・ナイカ、イイヨ・コイヨ、チョウ・ビッチ、イキ・タリン……。エル・スズキ、あった、あったぞ。」


 俺の名前は一番最後に書かれていた。

 俺の声を聴いた、ナツメはすかさず抱き着いてきた。

 

「びっくりするだろ、急に抱き着いてきたりしたら。」


「これで二人で入学できますね。」


 そういうわけで、今は入学式の真っただ中である。

 校長先生のありがたい話を終えた後、この学校に入るための最初の重要な行事が行われることになる。

 そう、寮決めだ。

 一応説明しておくと、この学校の入学者はくじを引くことによって、同じランク同士で部屋が割り当てられることになる。

 もちろん例外があって、カップルなら一緒の部屋になることを申請出来る制度があるのだ。

 全くエロゲらしい設定だとは思うが、あまり娯楽のない世界感なので、夜に雄叫びを放つ程度は日常茶飯事で黙認されているのかもしれない。


 エロゲの時は、一周目は主人公とナツメがクジで一緒になり、二周目では貯めたお金で奴隷を買って、イナリという猫耳の女の子と同棲出来るようになっていた。

 また、モブの親密度を上げ、二周目以降でこのイベントを行うと、誰も喜ばないモブと主人公が同室になって、ホモプレイエンドというバットエンドより強烈なエンドが実装されていたのである。

 当時、某掲示板ではかなりネタにされ、調子に乗って運営がホモイベントを追加イベントで実装するという、間違った盛り上がり方をしていた。

 話はもどすが、ここでなんとしても、ナツメと一緒の部屋にならないと、変態主人公に寝取られることになるわけだ。


 入学式が一通り終わると、多くの男子がこの儀式を受けるべく並んでいた。

 多くの男子たちがカップルと認められていく中で、その中でも一割くらいは認められない人たちが出てきている。

 これがこのイベントの難しいところで、カップルと認められるためには、互いのことをよく知っていることや、セクシャルな目でお互いが見ているのかなども観察されているからである。

 つまり、いくら仲が良かったとしても、『お友達』ではこの試験を通り切ることが絶対に出来ないのだ。


「私たちはこの試験を通り切ることが出来るのでしょうか、不安になってきました。」


 これに関しては同情せざるを得ない。

 ゲーム版では不快になる為に描写されることが無かった猛獣の雄叫びが、列が進むごとにより鮮明に聞こえるようになってくるからである。

 これがゲームだったら、迷わずスキップしたくなるほどには、気持ち悪いのである。


「次の方、どうぞ。」


 部屋の中に入ると、そこには3人の禿げたおっさん教師が座っていた。

 このおっさんたちは出来ており、選択ミスでこの教師3人が行為している現場に突入してしまうと、あえなくケツから出血で死ぬバットエンドが実装されている。


 おっさん達は、俺たちを獲物を捕らえる蛇のような目つきで、舐め回すように見ている。


「そうだな。取り敢えず、お互いの好きなものについて当てて貰おうか。そうだな、青髪のチビ、こっちの金髪の好きな食べ物は分かるか?俺の合図に合わせて、一緒に言うんだ。」


 俺はナツメに目配せして、タイミングを見計らう。


「抹茶シロップのかき氷に白玉添え」

「ステーキ」


 俺とナツメの意見は見事に食い違っていた。

 あれ、公式サイトには確かそう書かれていた気がするんだが……。


「かき氷が好きなわけないですわ?騎士はその様な子供が好きそうなものには興味を持ちませんですのよ。」


 ナツメが図星を当てられて動揺しているのか、口調おかしくなっていた。

 これにはおっさん達も、苦笑いしていた。


「次にそこの自称騎士。このチビの家庭環境を当ててみろ。」


 さっきからチビって言われると地味に傷つくんだよな。

 そういや、俺ってこの世界に転生したから考えたことなかったが、家庭環境どのような設定にしておくべきなのだろうか。

 取り敢えず、田舎のごく普通の村から一人で冒険者になるために出てきたとでも言っておこう。


「田舎町から冒険者になるために来ました。」

「エルは、天から祝福を受けてこの世に生まれて来たのです。」


 いや、そんな回答で一致する訳ないと言いたいところだが、あながち自分の今の境遇と間違ってないんだよなあ。

 その後も沢山の質問をされたが、俺はナツメのことをある程度言い当てているのに対し、ナツメは俺のことを一つも言い当てられなかった。

 それを見ていた試験官はその点に不審に感じて、同室を中々認めてくれそうにない。


「お前らは、そこまでだ。取り敢えず、お前らの関係は怪しいから、同室は無しだな。」


 これは、不味い展開になってきたな。

 いっそ、ここで知ってる限りのナツメの全てを暴露して、認めてもらうくらいしかないのか?

 ゆっくりとナツメの顔を見ると、目じりからはゆっくりと涙が流れていた。

 そのまま目が合うと、ナツメは目を逸らしながら、勢いよく俺の方に抱きついて来た。


 そして、俺は動揺したまま、ナツメにキスされていた。

 俺はすぐに今の状況を理解すると、ナツメにぎゅっと抱きついて、より激しくキスをした。

 その間にも、俺の頬にはナツメの涙が伝わってきた。


 その後、離れた後もナツメは顔を真っ赤にして、こちらをただ見ていた。

 どうしよう、そんな顔されたら、俺の方が恥ずかしいじゃないか。


「ナツメのことなんか、これっぽっちも好きじゃないんだからね。」


 気づけば、俺は前世でよく聞いていた推しのツンデレと同じことことを言ってしまっていた。

 ああ、恥ずかしくて、穴が空いていれば入りたい。


「気づいてあげられなくて悪かったな。お前らは、不器用なんだな。おい騎士、このチビが大切なんだったら、キチンと守ってやれよ。」


 ナツメは明るい声で返事していた。

 おっさんたちになんとか認められて良かった。

 今回は、俺の方がヒロインの様な立ち回りをしていた気がするのだが、まあよしとしますか。



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更新頻度が遅くなってしまい、申し訳ございません。

読んでいただきありがとうございました。

もし、面白いと感じていただければ、是非とも感想をお聞かせください。

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