第四話 仲のいいお友達?
目覚めると、窓から朝日が差し込んでいた。
昨日、ナツメに連れられ宿に来たものの、それはそれは大変だった。
部屋の中で、ナツメに質問攻めにあったのである。
ナツメもこの世界に生きているだけで、相当な修羅場を乗り越えて来たことは想像に容易い。
だからこそ、俺の人生にも興味をもったのだろう。
しかしながら、俺が転移してきたのは最近で、上手くごまかすのに非常に苦労をした。
いっそのこと本当のことを言ってしまえばいいのかとも考えたが、ナツメは俺が女の子だからこそ、俺に優しくしてくれるのだろう。
だって、俺はこの世界に関して、一人のモブに過ぎないのである。
「いつまで、寝てるのよ。騎士の朝は早いわよ。」
「いや、僕は騎士じゃないんだけどな。それより、頭の髪の毛はねてるぞ。」
ナツメは焦った表情で両手で自分の頭を撫でている。
俺は意地悪な自覚があるが、ナツメのそういうところがカワイイので仕方ないのである。
「いや、冗談だぞ。」
「くっ、図ったな貴様!こうなったら、意地でも仕返ししてやる。」
そういうわけで、今仕返しを受けている最中です。
何をされているかというと、着替え中にガン見されてます。
「ちょっと、着替え中を見られるのは、恥ずかしいのですので、あっち向いてくれませんか?」
「エルは私に大恥をかかせましたからね、これはそのお返しですよ。」
ナツメは楽しそうに、俺の着替え姿を見ている。
ちなみに、エルは俺の偽名である。
光は英語に直すとlightなので、その頭文字をとることにした。
「早くしないと、入学試験に遅れますよ。いいんですか?」
なんてことだ、俺のほうがはめられてしまったではないか。
俺も一応男だったので、今の体が少女であるとはいえ、美少女に見られながら着替えるのには恥ずかしいものがある。
諦めて上の寝間着を脱ぐと、キャミソールにはナツメほど大きくないとはいえ、きれいな流線形が表れている。
転生してから、一日以上たったのだが、まだこの感覚にはなれない。
ズボンを脱ぐと、やはり自分の大切なモノがなくなっていて、落ち着かない。
相変わらず、ナツメは興味深そうに、顔を赤く染めながらこちらを見ている。
うう、何か俺の大切なものを失った気がする。
「えっと、これまで女の子の体を見たことがなくって。『中のいいお友達同士』は、みんなこんなことやってるって聞いたから、その、やってみたくて。ちょっと、恥ずかしいですね。」
恥ずかしいのは、俺のほうだよ。
それより、『中のいいお友達同士』って、ゲームに出てきた通りだと、ホモカップルのことだよな。
「その、お友達についてだけど、二人か三人でイチャイチャしてる人のことってことかな。」
「そうそう、友達同士で一緒の部屋に泊まったりして、楽しそうに『アー、イク』とか『なかだしするぜ、ひゃっほー』とか、隣の部屋から聞こえてきてさ、本当に楽しそうでな……」
知ってた、ナツメは本当に純粋だったということを。
ナツメは自分の秘密を隠すため、友達といえる人がいなかったからこそ、そういったことに疎いらしい。
やはり、こういった世界で生きていくうえで、本当のことを伝えておくべきだろう。
「なあ、ナツメ。本当は、仲のいい異性同士がくっついて、結婚していたことは知ってるよな。」
「ああ、そうすると、コウノトリが赤ちゃんを運んできてくれるんだよね。」
やはり、そこから説明しないといけないのか。
必要なこととはいえ、純粋なナツメに本当のことを言うのは、非常にやりずらい。
「その、何というか、その為にはエッチなことをしないといけなくて、それで○○とか××とかして。」
俺は知ってることを、ありのまま話した。
勉強はからっきしだったが、保健体育だけは得意だったのが、こんな時に役に立つとは。
前世の俺はソロプレイヤーだったのは、秘密だが。
全てを話し終わると、ナツメは顔を真っ赤にしていた。
「その、ひ、ひとつ質問があるのだが、それでは男同士でくっついたとしても、何も解決しないのではないか?」
刃のように鋭い質問を突っ込まれてしまった、騎士だけに。
いや、本当にこんなこと話したくないのだが、仕方ないか。
「男って、どこかで発散しないとまずいことになるんだよ。なので、男同士なら口やお尻を使ってだな……」
説明が終わると、ナツメが青ざめた表情で硬直していた。
ああ、わかるぞ、俺もそんなことなんて、一ミリたりとも想像したくない。
俺たちは、その後無言で朝食をとって、入学試験の為に学校に向かっていた。
そうして、学校に向かって歩いている途中で、ナツメの独り言が聞こえた気がした。
「その、女の子同士だと、どうなるのかな。いや、そんなことないし、ちょっと興味持っただけだし。」
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