第二話 まるでマシュマロみたいな…
俺は転移してから、反射する自分の容姿、不気味に光る三つの月などから、TSして転生したという事実を受け入れざるを得なかった。
鏡に映る少女は、空色の髪、瞳はラピスラズリのような青色で、三つの月の光が反射して、魅惑的に光っていた。
そうして俺は、反射するガラスを前に立ち続けていたのだが、ある一つのことに目を奪われていた。
男なら誰でもあこがれたことのある、そう、豊満に実った果実のことに。
俺は、魔法使いを目指していたため、もちろんそのようなものに触れたことが無かった。
それが今では、よくも悪くも、目の前に存在しているという事実に目をそむけることは出来ない。
「ちょっとくらいなら、いいよね」
何故か自分のものであるのに、遠慮がちになっている。
触ってしまったら、何か大切なものを失ってしまうかもしれないが、目の前にある未知なる探求心を抑えることは出来なかった。
「はむっ」
俺は、少女がだしたいやらしい声に気づいて、必死に抑えた。
なんだこれは。
体の二つから、こそばゆい感覚とともに、ゾクゾクする刺激、体を麻痺させるような快感が広がっていく。
まるで自分の体ではない、他人の体をのっとったかのような不思議な感覚だった。
俺は赤らめた顔を目の前に、はっと我に返る。
「そういや、このせかいって女の子いないんじゃね」
甲高い声が、街中に響く。
俺はとっさに振り向いて周囲を確認したが、真夜中ということもあり誰もいなかった。
俺は、急いでその場を去ることにした。
そういうことで、今は高原まで来ている。
あの後、急いでゲームの中で学生の技の練習などで使われていた、安全荒野へと向かって夜中を過ごした。
そして、俺は女だと周りにバレないようにするため、かわいいドレスを急いで脱ぎ捨て、アイテムボックスに入っていた転生前に来ていた部屋着に着替えていた。
皮肉なことに前世でもチビだったため、腹回りを調整するだけでなんとか切ることが出来た。
というか、他の着替えもアイテムボックスに補充されていたのだが、ワンピース、ドレス、カーディガン、スカート、ガターショーツ、ビキニ、って全部女物っていう、嫌がらせ具合である。
「それにしても、明日入学式なんだよな」
俺は、移動時に気づいたが、町はお祭りの為の準備がされていた。
お祭りが始まると同時に、学校への入学テストが行われるという話なので、準備具合を鑑みても、受験日は明日が妥当か。
こんなギリギリのタイミングで転移させるとは、さすが悪魔の所業である。
受験日の日程も正確にわからないから、あくまでも目安ではあるが。
いや寒いね、少し体でも動かすとしますか。
俺は明日の入学式の為に、魔術をおさらいしておきたいので、もう一度悪魔が与えてくれたアイテムボックスを漁る。
早速、それっぽいノートを取り出す。
「なになに、『陰キャでもわかるコミュニケーション入門』ですか。中身は……っと、『チーズ牛丼はお好きですか?』」
俺は本に書かれている分を読み上げる。
俺はチーズ牛丼は結構好きかな、何なら現世では週に一回くらい食べてたし。
そんなことを考えながら、ページをめくった。
「そこで好きだといったあなた、だから陰キャなんですよ。」
俺はノートを棒読みしながら、読み終わった後に文の意味に改めて気づく。
「ただの悪口じゃねーか。」
その後、五冊目で『ニートでもわかる冒険者入門』が出てきた。
中身を要約すると、自分が発動したい魔法とそれに釣り合う程度のエロいことを同時に想像すれば良いらしい。
そういや、ゲーム内でもホモカップルが大量に出来上がっていたのだが、これが関係しているのか?
そんなこんなで、魔法の発動方法が分かったので、実践してみよう。
まず、転移前にやっていたゲームを思い出す。
ここでネタに使うのは、生前に一番推しだったナツメである。
ナツメは騎士で、一人の更衣室でひっそり着替えていたときに、主人公に裸を見られてしまい、そのまま勢いで押し倒されてしまうのである。
そのシーンの、「くっ、殺してくれ」というセリフはベタだが、ご飯百杯はいけるほど破壊的だった。
あとはポーズでも考えるか。
これは、生前にみたアイドルアニメのかわいいポーズを参考にさせて頂くことにしよう。
俺は、頭にアイドルのポーズと、エロいことと、発動したい魔法を浮かべ、魔法を発動させる。
膝の高さまで生えた雑草を右足で蹴り上げ、逆足を軸にクルリと舞う。
舞いを終えると、右手を地面から水平に構え、詠唱を行う。
「えくすぷろーじょん」
すると、目の前に大きな火の玉が出来上がり、ある程度の大きさになると、ゆっくりと前に飛んでいった。
俺は満足げに発動した魔球を追っていたのだが、魔球の向かう先に人がいることに気づいた。
俺は、この世界に来て初めての魔法の発動に夢中になっていたあまり、周りの注意を怠ってしまった。
向こう側の相手までにはだいたい百メートルくらいだろうか、今すぐに阻止しないとヤバいことになってしまう。
俺は見よう見真似で身体強化の魔法をかけ、地面を勢いよく駆けた。
その速さは音速を超え、魔球にみるみる追いついていく。
あと少しで、前にいる人までたどり着ける。
そう思った矢先、向かい先の人がくるりとひっくり返り、剣を一太刀振るった。
振るった剣は閃光を上げ、大きな破裂音とともに、俺の発動した魔法をいとも容易く切り裂いた。
俺は予想外の展開に驚きながらも、このままではまずいことに気づいてしまった。
今の俺の体は蝶のように軽く、それでいて速度を考えると、ほとんど爆発で吹き飛んでいるようなもんだ。
俺、止まれなくね?
一応止まろうと試みたのだが、その努力も空しく、目の前にいる剣士を勢いで張り倒してしまった。
俺はゆっくりと目を開くと、目の前の剣士の兜は勢いでぶっ飛んでいた。
顔は整っていて、紅葉したイチョウの葉のような黄色に、ペリドットのような優しい黄緑色の瞳。
俺の右手に広がる、マシュマロのように柔らかい、少し未熟な果実の感触。
彼女は泣きそうな顔で、俺を必死に睨んでいた。
目の前の騎士は、間違いなく、ナツメ本人だった。
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読んでいただきありがとうございます。
私は最近書き始めたので、拙い文章で読みにくいかと思いますが、ぜひ読んでいただければ嬉しいです。
感想お待ちしております。