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加速する現想譚  作者: 無碍
1章 初速
7/38

7th 何か新事実

「いや、クレインさん凄いですね、あの最後の時のあの技!!」


「いやいや、そんな事無いですよ」


「そんな事無いです!! だって一撃で何百のゴブリンを倒したんですよ!!」


「ははは……」


 どうもこんにちは、周藤巽壬ことクレインです。

 いや、勿論最初から偽名でギルドに所属してました。てへ。


「……一体、どうやったの」


「ん?」


 いつの間にか背後に魔術師の女の子が居た。正確には個人の属性を持たない精霊魔術師らしい。

 年は多分俺より一つ下くらいか。

 ともあれ。


「何が?」


「……最後の、一撃。……貴方が持ってる、剣。……その、力?」


 あー、はいはいはい。そういうことね。

 いや、咄嗟にしてはこの剣良く出来たよ。ホントに。

 試したこともないし、出来るかなと思ったら出来たよ。

 ぶっちゃけ、出来るという確信は全くなかった。

 行き当たりばったり。土壇場。まあ色々な言葉は在るけれども。


 取り敢えずはそういうことにしておいた方がいいな。


「うん、まあ」


「……そう。……でも、あなた自身の魔力も、凄い。……いい研究対象」


 おい、何か今悪寒が走ったよ。

 何か後ろ向いてみると頬が赤くなった状態で舌なめずりしつつ此方を見下ろしてくる黒髪ロングの美少女が。


 だからイヤ―――――!!!


 俺にソッチ系の趣味はないの! どっちかというと責めtごほんごほん。


 ともあれ。


「研究対象は勘弁ね」


 苦笑して言うと、彼女は以外にも”そう”とあっさりと引き下がった。

 何か違和感を感じつつもとりあえず、


「にしても、戦士のおっちゃんが酔うとはなぁ……」


 屈強な身体に反して意外と繊細なのな。

 今は後ろに乗りつつ錬金術師の姉さんに薬処方してもらってる。

 というか、実質依頼主の子も含めて女性だけだから居心地が悪いったらない。


 しかも全員が全員、こっちに好奇心のカタマリのよーな眼を向けてくるから余計に体がむずがゆくなる。


「いや、それよりクレインさんですよ?」


「へ?」


 いきなり黙ってた依頼主さんが声をかけてきた。

 年は恐らく俺より上。でも子供っぽいというか俗世的というか。


「一撃でアレだけの魔物を倒すなんて……本当はAクラス並の実力者ではないんですか?」


「は?!」


 い、いきなり何を言いやがりますかこの子はっ!

 実際問題平均はわからないけど、多分それでも俺の力は反則なんでしょうね。

 でもソレをひけらかす必要はないし。


「いやいや、アレは剣が掘り出し物だし、魔力も限界まで出したし」


 剣が許容できるまでの限界だけどね。うん、嘘じゃない。

 とりあえず貴族のお嬢さんは納得したようで、座りなおしてはくれた。


 ああ、速く目的地まで着いてくれないかな。




「依頼完了、と」


「皆さん護衛有難う御座いました。報酬はギルドカウンターでもらってください」


 こうして王国からの脱出が成功した!!

 報奨金は五金貨。


 この世界では銅→銀→金みたいで貨幣価値が上がるんですけれども、セルが日本で言う百円。ウィルが一万円。ソルが十万円。


 で、今回は五十万稼いだことに……ってなにぃ!?


「ちょ、お嬢さん、これは何か報奨金の額が増えてる気が……」


 最初は五ウィル七セルだったはずなんですけど。


「予想外なゴブリンの大群に襲われたので、その分、報奨金を上げさせてもらいました。あと、お嬢さんじゃ無いです。ちゃんとエリカ・ウェルト・アーデンハイツっていう名前が在るんです!!」


「あ、すいません」


 長いな、やっぱり貴族ですねお嬢さん。あ違った。まいいか。


「クレインさんは、この後どうするんですか?」


「ん? 俺?」


 元の世界に帰るって言う漠然とした目標なら在るけど……。

 でも何も情報はないしな。

 うーむ……。


「取り敢えずはこのまま旅を続けると思う」


「だったら、少しの間でもいいので私の家に来ませんか?」


「へ!?」


 今なんと仰いました!?

 貴族のお屋敷の来ないか、だと……!?

 へへ、久々に血が滾っちまうぜ……!!


 さて、現実逃避終了。


「えーと、それは何で?」


「簡単な話です。一番の武勲はクレインさんにありますので」


「あー……」


 そういうと皆さんが嫌な顔をするんじゃ……て何でしないんだあんた達は。

 むしろ笑顔を浮かべんな。生温かい目で俺を見ないでくれぇっ!!


「いやでも、邪魔になるし」


「家長が許可してるんです。何の問題もありません」


 家長!? この年で言え継いでるのこの子!?

 お嬢さん……恐ろしい子!! ……硝子細工の仮面っぽくね。


 とは言え、其処へいけば元の木阿弥。最悪、また城に連れ戻されるかもしれないので。


「んー、いや、今回は遠慮しておくよ」


「そう、ですか……」


 しゅんとなる貴族のお嬢さん。うん可愛いけど却下。

 まあでも。


「いつか尋ねさせて貰おうかな?」


「……っ! はいっ!!」


 うん、笑顔の方が可愛いんだよね。


 持っていた地図に書き込んでもらって―――は?


「え、や、ちょっと、お嬢さん?」


「だから――」


「ああいやいや、そのネタはもういいから。てか、これ……?」


「ああ、私公爵位なんですよ」


 吹いた。

 公爵? あの王様に次ぐ地位の?

 は、なめてんの貴方。

 てかこの地方。まだ先なんですけど。あ、私有の騎士団が此処に居るんだっけか。


「まあ、いつか、また」


「待ってますよ?」


 苦笑してギルドへと入った。




「いや、兄ちゃん、アンタには世話になったなぁ」


「はは、止して下さい。あんな大群を一振りでなぎ倒したのはバロックさんじゃないですか」


 ギルドでもあり食堂でも在るこの場で、つい先ほど依頼完了した時の同僚達と談笑していtた。


「……それより。……私達の。……ギルドに、入らない?」


「いや、だから、まだ目的も在るし、気楽な一人旅がしたいんだってば」


 これは何十回と言い返した言葉。

 今のところはいるつもりはない。まあ、誘ってもらえるのはありがたいが……。


「地理とかに詳しい人はありがたいけど、今は身軽でいたいし」


 苦笑する。

 なんていったって初めての異世界。土地勘が在るわけじゃないし、未だに地図はおッかなびっくり。慎重に読んでいる。

 まあ、冗談だけどね。


「まあ、そこら辺は自分でも地図読めるし――」


「……なら、私が着いてく」


「ね。……って、はぁ!?」


 何を言い出しますかこの奇天烈無口無言寡黙多分変態美少女は!?


「……燃やす」


「すいません冗談です」


 読心術……。何で出来るんだ……。

 というか、本当に何を言ってるんだ?


「……本気なのかい? レイシア」


「……本気」


「あたしとしては出て行って欲しくはないんだけどねぇ……」


 そりゃそうだろう。

 何て言ったって広報からの支援攻撃、または広範囲攻撃を行える役だし。

 正直、この子が抜けてしまったらかなり厳しくなるのは間違いない。


「……平気。……必ず、戻ってくるから」


 意思を込めた言葉に、誰も反論できなかった。

 俺、弱ッ!? どんだけ弱いんだよッ!?


「……これから、よろしく」


「え、あ、や、まあ……よろしく」


 とりあえず握手を交わす。

 何と言うか、妙なことになった。




 これからどうなるのやら。

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