5th 今後につく
「ふっ、シィ――、はああぁぁっ!!」
「うーん……」
次々に此方へと降りかかってくる剣戟を時には避け、時には剣で(借りた)弾く。
時にはフェイントを、時には愚直なまでの剣筋は明らかに達人と呼べるものだ。
しかしそれを淡々と避けたりする俺ってなんなんだろう。
いや、ぶっちゃけて言うと、こっちに来てから、というか呼ばれてから、日に日に身体能力が上がってますね。何でだ。
元々鍛えていた事もあって、今じゃもうほら、第二王子さん(騎士団の連隊長らしい)さえも軽々と。
というか、そろそろ付き合うのも疲れてきたし、終わらせよう。
「おおおおおおお!!!」
「……」
打ち込まれてくる太刀筋に沿って、流すように裏拳を入れる。
剣を弾き、そのままに蹴りを入れた。
「が、ぁ?」
「ういしょっと」
そのまま適当に震脚で正拳付きを叩き込む。
吹っ飛ぶ王子様。
直後、それまで、という声が響いたりした。
「救世主様は本当にお強いですね。何か習っていたのですか?」
「え、まあ少し」
ああめんどい。
聞かれるのが判っていたからこそ殆ど動かなかったが、それでも興味をとめることなど出来ないのか。
つい先程までいたのはこの国の騎士の鍛錬場で、そこで模擬戦をやってたわけだが。
俺なんかに負けていいのか連隊長。オイ。
かるく言葉を交わしてさっさと出る。
というか、気になって使用人方に聞いてみると、どうやら此処、相当危ないらしい。
魔物などのレベルは低いが、国の上層部などが割れていて、そろそろ危ないかも、と。
いや、うすうすわかってはいたんだけど。
つー事で、この国から出る事に決定。
誰かに使われるなんてのは真っ平ごめんだし、死ぬのはもっと嫌だ。
どうやらこの世界にはギルドが在るらしく、これもテンプレ設定。
其処に所属して、依頼をこなしていけばどうとでもなるだろう。
幸い俺の顔はまだ一般には出回ってないみたいだし。
その日、早速、登録しにいった。
ギルドではランクGから始まり、一番上はSSらしい。世界中でも片手の指程度らしい。
Gは言ってしまえば子供の手伝い程度のことしかしない。本格的な依頼はEから。
ランクDまでは試験で取得できるので、それを試しにしてみたら楽だった。
依頼内容は大牙狼五匹の討伐。
城から借りてきた剣で直ぐに終わる、が。
命を奪うということに対してやはり耐性が無く、帰ってきてからは何度か吐いた。
それでも生きなければならないのだろう。
ああ、くそったれ。