2nd 召還されると神殿だった
景色がまわる。
混ざる。
狂う。
ぐるぐるぐちゃぐちゃごりごり××●●▲▲――――――
何かが俺の身体を触っている感じがして、それでも何も見えない、動けない。
なのに違和感も無ければ恐怖も無い。
不思議と、懐かしさすら覚えてしまう。
微かに、何かが見えた気がした。
「う、あぁ!?」
高所からの落下なんて体験した事が在るわけでもなく、何とか身を回して着地。
慌てて周りを見てみれば明らかに現代とは違う趣の部屋ですねオイ。
石造りで、その上正方形。背後に一つだけ扉があって、辺り一面は微かにしか灯が無い。
……なんだよ此処?
というか、何人かの人影がこっちを向いてたりもして。
イ――――――ヤ―――――――!!!?
俺は視姦されて喜ぶ趣味でもない。
ああもうなんだなんだ此処?
人影の中で俺から見て真正面の人が出てきた。
明らかにファンタジーな感じのローブに身を纏っていて、顔が見えない。
「――ようこそお出で下さいました、我らが救世主様」
すべり出た声は女性のもので、しかも若い。
てか救世主って何だオイ。
「いや、救世主って何? てか此処何処? いやそれ以前にアンタ誰だ?」
口から半ば無意識に出た言葉はまるで異世界に飛ばされた主人公のテンプレ的な言葉で――
……異世、界!?
「私は巫女、ノルン・ディストリアです」
うわ、何このマジテンプレ設定。
「俺は、周藤巽夜」
眼前のフードを被った人がフードを取り、その下から出てきたのは……って金髪碧眼の美少女!?
「ああ、救世主タツヤ様……。お会い出来て至福の極みに御座います……」
うん、いきなり感極まって涙を溜めつつ此方を上目遣いするのはやめようか。破壊力大きすぎるから。
それから話を進めると、こうだ。
某竜のクエスト的に魔王が現れて、ソレを撃退するために何人かの救世主が各国から召還されているらしい。
――つまりはとばっちり食らったわけか俺は。
「質問良いですか」
「何なりと」
「何で俺なんですか」
「召還はランダムで……伝承には相応しいものが選ばれる、と」
何ぞソレ。完全に被害者じゃないか俺。
と、言うか、その話だと俺は俗に言う魔物とかと戦う羽目になるわけですが。
……勝てるのか、俺?
取り敢えずは抵抗せずに、このまま従おう。
逆らうって言っても丸腰でこの人数相手だと相打ち程度だろうし、なによりまさか『魔法』とか使われたら勝てる気がまるでしない。
「まぁ、よくは分からないけど……ひとまず、把握した」
「そうですか? よかったぁ……」
ぱぁ、と、花のように笑う金髪碧眼美少女巫女、ノルンさん。
いや、笑顔はとても魅力的なんですけどね。
溜息をついて、この神殿っぽい所から促されるままに外へ出た。
気分的には犯罪者の感じだった。