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加速する現想譚  作者: 無碍
2章 連速
15/38

15th クマさん退治

 人間の急所は身体の真ん中に集まってる。

 額、鼻、喉、鳩尾、下腹、股間など。

 他にも在るって言えば在るが、大体はこれだけで良い。

 まあでもね、ソレに打ち込まれたからって即座に戦闘不能になるわけじゃあない。

 一瞬行動が停止するだけだ。だから――


「連撃を入れれば良いわけ、その間に」


 何かでかい熊っぽいヤツ。八目の熊。

 体長が三メートルくらい。


 熊の弱点は額。

 故に、手に持っている槍の石突で額を打ち抜いてから、身体を中空で回して腕を刈り取る。

 悲鳴を上げる暇は与えない。

 熊より少し背後に着地。すると同時に石突で熊に足払い。

 身を回して落ちてくる熊に、穂先で死閃をあわせる。


 一発、斬撃が走る。


 直後、熊の首と胴体がさよならをする。

 ん、まあ、こんなとこで。


「ほら、やってみ?」


「無茶言わないで下さいっ!?」


 悲鳴を上げたのはウルド。

 場所はこのまえ飛竜を狩った森の少し手前。

 Cクラスの依頼で、八目熊を討伐、と言うのがあったので、彼女の腕前を見てみると、


「えいっ、やぁっ、ったあああっ!?」


 ……うん、まあ、倒せたけどね。

 もーすこし君は自分にあった武器を使おうか。

 手斧とかを使うのは結構だが君ちっこいだろう。


「ちっこいって言わないで下さいっ!?」


「あ、ごめ。思わず口が」


「〜〜〜っ!!!」


 地団太踏む彼女。ああ、和む。というか、楽しいなぁ。


「まあ、ちっこいのは事実だから諦めてもらうとして」


「うぅぅぅ〜〜〜!!」


 睨んでも駄目。


「君の場合は、身のこなしが素早いから短剣とか、弓があってると思うなぁ」


 今まで見た冒険者的な意味で。

 ちっこいから素早いし、ちっこいから敵からの攻撃が当たりにくいし、ちっこいから隠れることも出来るし。


「喧嘩売ってるんですかっ!?」


「え? 何で??」


 する意味無いじゃん。

 てか、万が一にも負ける気がしない。


「て、天然ですか……」


「……諦めて。……いつもこうだから」


「そんなぁ……」


 俺が何をしたと!?

 なんでそんなことをいわてるの俺!?

 まあともかく。


「えーと、確か荷の中に……」


 練習用で『加工』した短剣が在るはず……。

 お、あった。


「ほいこれ」


「ひぃっ!? 投げないでくださいよっ!?」


 そんな脅えなくても。


「それ、俺お手製、かな? 何で、かなり切れると思う」


「はぁ……」


 しげしげと眺める彼女。あ、それ試しに属性付けてみたんだが。風。


「で、それでクマと戦ってみて」


「あ、はい! 有難うございます!!」


 …………。


「……え? いま、何て?」


「いやだから、クマと戦ってこいと」


「アタシを殺す気ですかっ!?」


「瞬間的な逆切れは勘弁してくれ。だから言っただろ。君はそーゆう系統の武器が合ってるって」


「いや、でも」


「うだうだ言ってるんじゃな――お」


「――え?」


 良い感じにくまさん登場。

 森の〜クマさんに〜でぇ〜あぁった〜。


 はい、どうぞ。


「死にますっ!!」


「死ぬな」


 ま、いってこい。


「ひゃああああああッ!!!?!?!」



 数分後。



「だっ、だからいったじゃないですかぁ……っ。無理だってぇ……!!」


「倒せたから良いじゃん」


「うっ、ひっぐ、ぐす、うえぇ……!」


 あー、いかん、泣き顔はなんというか見たくなるけどこれ以上はアウトだし。

 なんとかクマさんを倒した彼女は、やっぱり泣き崩れた。泣き癖でもついてるのかこの子。


 取り合えず抱きしめて背中をぽんぽんと叩いて落ち着かせる。


「……く、クレイン、さん?」


「ん?」



「な、何をしてらっしゃるのでしょーかっ?」


「抱きしめて背中叩いてる」


「〜〜〜〜ッ!?」


「うごっ!?」


 行った直後に鳩尾にボディーブローが突き刺さった。

 しぬ。あ、息が……


「く、クレインさんのバカッ!!」



 ……この力があったらクマなんて余裕じゃあ……?


 純粋な疑問に答えてくれる人は――


「……たぶらかすなと、あれほど……!!」


「……」


 俺、死ぬかも。

新しいもの書くかも。

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