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加速する現想譚  作者: 無碍
2章 連速
14/38

14th 視続けるほどに

 自分が不幸だなんて言う気は無いですけどね?

 流石にこれはやりすぎと言うか。


「何で俺簀巻きにされてるの……?」


 朝起きたらベッドのシーツ諸々でグルグル巻き。

 そんな何時もの朝。




 そんな何時もは嫌だ!?

 てか俺が何をした!?

 しかも何か硬化の魔術掛かってるからこれ千切れない!?


「ぬっ、くぉっ、うりゃっ!?」


 だ、駄目だ。幾ら飛び跳ねてもどうにもならない。

 相当強く縛られてるぞこれ。

 にしても、誰がこれやったんだろうか?


 候補1.

 レイシア。


 ……そういえば俺のこと解剖したいとか言ってたなぁ。身動き取れなくしてばっさり?

 嫌だなソレ!?死にたくないっての!!


 候補2.

 昨日拾ってきた(救助した)女性。


 飛竜に教われてた所を救助したわけだが、女性と言うことでレイシアに任せちゃったからなぁ……。ぶっちゃけ良くわかんない。

 覚えてるのは、軽戦士みたいな格好で、手斧とか槍とかブンブン振り回してた。

 緑色のセミロングで、泣きそうな顔で振り回してたよなぁ……――


「んーっ! んんーッ!!!」


 ……あれ。

 何か隣からうめき声みたいなものが。

 しかも何か昨日聞いた感じがする声なんですが。


 恐る恐る横へと首を向けると。


「んーッ!! んんんーッ!!!」


「うおわぁっ!?」


 思わず飛び跳ねようとして飛び跳ねれなかった。畜生。

 ともあれ。


「君も起きたら簀巻き状態?」


「ん、ん!」


 首肯する彼女。どうやらそうらしい。

 てかなんで涙目……って当たり前か。

 なんせ助けられた直後にこれだもんなぁ……。そりゃ泣くよなぁ……。


 ……いや、待てよ?


 ここで彼女が苦して簀巻きにされてるってことは、だ。


 犯人はレイシアでは?




 ……冷や汗が出た。

 嫌な汗が背中を伝う。

 レイシアは基本的に怒らない、というか、感情の起伏が少ないから、怒ったりは滅多にしないのだが、一度怒るとマジで恐い。


 ……なんと言うか、明王って居るんだなって感じで。


 だがそれにしても俺が何かをしたのだろうか。

 全く覚えが無いんですが。


 首を捻って考えてみるが、全く、本当に全く引っかかるものが無い。

 あるぇー?


「……起きた」


 ……何で直ぐ後ろから声がしたのでしょうか。

 凄く冷たいよ?あはは。


 いや、笑える状況でもないのですが。


 だって首元にひんやりとした感触が確かに在るから。

 多分これって俺の剣だね。

 毎日手入れとかしてたら分かるんですが、何で俺は斬られかかってるんでしょうか。


「……あの、レイシアさ――」


「……また、誑し込んで……」


 何が!? 何がどうなってるの今!!?!?!


「……今度と言う今度は、許さない」


「え、ちょ!?」


 一瞬刃が俺の首筋から放れたかと思うと、瞬転、振り下ろされ――!!


「……えい」


 縛っているロープを断ち切った。

 え? なんなんですかこれ? え?


「ちょ、レイシアさん、これ一体どういう」


 俺が問を放ち終える前に、既に彼女は簀巻きにしていた女性のロープを切っていた。

 ……物凄くシュールな絵。何だこれ。どこの昼ドラだ。


「う、ひっぐ、こ、恐かったぁぁ……!!」


「うわっ」


 自由のみになった瞬間に飛びついてきた彼女が、既にぐずっており、涙やら鼻水やらで顔面が濡れて……この服、洗濯せねば。


 いや、それよりもまず、


「うんうん、もう大丈夫だから、はい落ち着いて深呼吸〜。吸って〜、吐いて〜」


「すー、は〜……」


 おお、ジェスチャーにちゃんと付き合って深呼吸してる。何か素直な子だなぁ。

 ぽんぽん背中を叩いてあやして、呼吸を落ち着いて行かせて、


「……だから、何で誑し込むの」


 何が!? 誑し込むってなんだよ!?

 え、俺なんかしましたかってかヤメテヤメテギリギリと重力増加魔術を肩にかけるのは止めて壊れるっ!?


「お、俺、何かしたか……?」


「……」


 ふいっ、と顔を背ける彼女。俺が悪いの? え?

 ……こっち向いてくださーい。


「あ、あの……っ」


「ん?」


 下の彼女から声が。

 はいはい、何で御座いましょう?


「い、今更ですけど、助けていただいて有難う御座いましたっ」


「ああ、いーよいーよそーゆーのは。俺は俺がしたいことをしただけだし、レイシアもソレを望んでたし」

 

 実際、そうなのだ。

 俺がやりたいことをやっただけ、つまりは自己満足。

 褒められるようなことはしないし……してないって言ったらしてないんだっ。


「あーっと、その、君、名前は?」


「あ、すみません、遅れました。アタシはウルドといいますっ」


「ん、りょーかい」


 あ、じゃあ俺もしとくかな。

 レイシアの首を引っつかむ。明後日の方へ向くなっての!


「俺はクレイン。で、こっちの不貞腐れてるのがレイシア。よろしく」


「よろしくお願いしますっ」


「……不貞腐れてない」


「あーはいはい」


 ぐりぐりと頭を撫で回しておく。

 こうしておくと何故だかわからないが彼女の機嫌が良くなる。


「で、何で君はあんなとこに? 飛竜討伐の依頼は俺達が受けてたと思うんだけど?」


「あ。それ、は……」


 ……何で赤くなって縮こまるんだ。

 いや、まさか、まさかとは思うんだけど……。


「……迷子?」


「ひぅ……」


 ま じ で か 。


 地図とか持ってるはずだろ?もしかして読めない?

 いや、もしかして、


「……アタシ、旅の商人の人達と旅してて、はぐれて、それであそこに……ひくっ」


「うわあ!?ちょ、泣くな泣くな誰かー!!」


「……だから、誑し込むなって……」



 中略。




「えと、じゃあこれからよろしくお願いします、クレインさんレイシアさんっ」


「……………………」


「……え? これ、俺のせい? 俺のせいですかー?」


 結局一緒に旅することになるのだった。

 ……やっぱり俺のせいなのか? これ。

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