13th The Other Side In Raicyer
私は、その人と出会った時に、背筋に電流が走ったのが分かった。
屈しない視線、恐れも無く敵へと切り込んでいく度胸、避けて、弾いて、呆気なく敵を切り裂いて前へと進んでいく背中。
恋とかじゃない。けれど、確かに私はその姿に胸を締め付けられていた。
救世主じゃないと彼は言うけれど、十分にその資格は在るのではないだろうか。
世界を救えるのは、世界と対等に渡り合えるものだけ。
そういう意味であれば、何もかもにも罪悪感を感じてる彼は一番あってるとは思う。
まあ、元々は彼に何か好奇心を刺激されてついてきたのだけど。
鍛えられた身体に、莫大な魔力、更には個人属性を持っている。
正直、魔術師にとってこれ以上魅力的な人は居な……何を口走っているのだろうか私は。
彼は私のことをどうとも思っていないはずだし私も……。
否、確かに好感が持てるところがたくさん在る。だがソレが恋に繋がるわけではないしそもそもたかが顔を見た程度で胸が締め付けられるような感覚に陥る程度で恋とは言いまいその上先日は彼の泣き顔を見てしまった今思うと何と言うことをしてしまったのだろうか無遠慮にも程があったのではないか嫌われてしまったのだろうかああそれは嫌だ気持ちがどんどん落ちていく――
「おーい、レイシアさーん……?」
「……何?」
意識が現実に戻れば眼前に彼――タツヤの顔があった。
一瞬で意識が白く染ま――
「いやだから何で直ぐに呆けた表情に……」
「……なんでもない」
彼は納得しないような表情を見せたが、それも直ぐに変わる。
彼は基本的に自分のことを卑下する傾向が在るが、そんなことはないと思う。
端正な顔立ちに、少し釣り目の眼は強い意志を感じさせる。が、何時もは緩やかな弧を描いて気の抜けた顔になっているのだがソレがまた良い――
「もう面倒だから言っちゃうけど、そろそろ飛竜の巣につくからな……?」
「……わかった」
先日に受けた飛竜の討伐依頼。
報酬が伝説とも言われるソロモンの魔道書だったために彼に了解を言わずに何時の間にか受けていたが、恐らくは偽者だと思う。
しかし、それでもAランクなのだから良品の魔道具だろう。
しかし、
「……熱い」
「そりゃあ、北と入っても今夏だし、森だし」
そうは言っても熱いものは熱い。
大体、魔術で衣服の内側を涼しくしてるからといってこの外からの熱気はどうにもならない。
周りは樹木が多い。その上、蔦や蔓が蔓延っているものだから余計に湿気が多く、汗が吹き出る。
襟元をパタパタとさせて風を入れてみるが、元々中は涼しいので意味が無い。
「にしても、飛竜って強いのか?」
「……分類上はB++。……竜種の一種で、傭兵達の登竜門とも言われてる」
「……つまり、強い?」
頷く。
直後に彼が何か飛び跳ねる。何時ものこと。
但し、今回はAクラスだったので、それなりに強いだろう。
「……作戦としては、私が翼を封じて空から落とすから、その間に何とか倒して」
「いや、ソレは百も承知なんだけどさ、ぶっちゃけ――俺の剣と槍で切れるの、ソレ?」
「……問題ない」
というか、彼の剣で貫けないものといえば早々無いとは思うが。
どうやらアレは実在する金属の中には無いものらしく、相当硬い。
「まぁ、やってみりゃわか――!?」
「……?」
彼の声が驚きに止まる。
何故かと彼の視線を辿り、
「……ッ!?」
自分の喉が干上がったのが実感できた。
何故ならば、
「……飛竜が、人間を……!!」
襲っている!?
何故だ!? 何故こんな所に人が!?
装備を見る限りに旅の者だろうが、それでも危険だ。
「……タツ――」
「ッ!!」
私が声をかける前に彼は走り出していた。
その姿は不覚にも格好良いと思ってしまう。
風すらも追い越してかけるその姿は、まるで神話に出てくる風の巨狼だ。
「……構築」
意識を世界へ。自分の手中へと納める。
先ずは口を塞ぎ、女性への攻撃を少しでも減らす。
ブレスが出る直前に地面からの土の槍でソレを阻止。
「っ!? グゥウゥアアアアアアアアア!!!!!」
怒りの咆哮に女性が身をすくめるが、その瞬間には彼が女性の身柄を確保して退避している。
即座に飛竜一帯の温度を下げ、大気を固定。翼を凍らせる。
が、流石に竜種。魔力が強い上に属性が炎のために中々凍らない。
ならば、更に魔力を込めれば良いだけのこと。
「……ッ!」
「ギッィィァアアアアアッ!?」
固定完了!
「……タツヤ!!」
「おおおおおおあああああああああ!!!」
私が声をかけるまでも無く、彼は飛び出していた。
彼は短槍を振りかぶり、空中で身を捻り、
「っぶっち抜けええええええええ!!!!」
視覚する。
槍に彼の魔力がつき、その存在が変化していくことを。
形が整えられ、刃は長く、鋭く。
そして竜殺しの絶槍は――投げられた。
「ア、ガ、アァアアアアアアアアァァァァァァァッァァアアア!!!?!?!?」
ソレは脳天を穿ち、一瞬でソレを致死へと変革させる。
飛竜はのた打ち回り、しかし直ぐに倒れ付した。
……終わった。
「……依頼完了」
呟けば、体から力が抜けた。
竜種と戦うのはこれが初めてだし、そもそも威圧感が凄まじい。
気付けば膝と腕が笑っていた。
彼はと言うと――
「……」
助けた女性を俗に言うお姫様抱っこで此方へと走ってきていた。
中々の美人で、自分では勝てない。
そんな感想が頭の中で生まれ、顔が熱くなり。
それでも彼についていくのだなと、何と無く確信した。
如何でした?
自分としてはやばいなんか納得できないとか思ってたりするのですが。
といいつつ、自分で書いておきながらレイシアがとても可愛いと思うのは販促ですかそうですがごめんなさい。
ともあれ、彼女の中はカオスです。グルグルです。
さて、新しい人はどうだろうか……?
ではではっ