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プロローグ

ドリフターズを読んで思い付いたものです


「良く来た、勇者達よ」


は、と

そんな風に思うものが大半であった。学校で授業を受けている最中に、唐突にどこかで見たような豪奢な宮殿の中のような場所に飛ばされた30人ほどの高校生達が、半数はへたりこみ、残りの半数は呆けている状態で、大勢の人間に囲まれていかにも王、といったいでだちの人物に威厳たっぷりにこんな台詞を聞かされれば、頭が働かぬのも無理はない


「わしはこのフィナンシュという国を治めている王、ケイン・アルベルト・カッツァーノ・ジン・フィナンシュという者だ。今、この国は、否、この世界は破滅の一歩手前に追いやられているのだ。魔王と呼ばれるものが操る魔族という存在によって。勝手に呼び出したことは謝る、しかしもう後が無いのだ。望む報酬はできうる限り用意しよう。頼む、この世界を救ってくれ」


『…お、おおおおおおおお?!』



自らを王であると名乗った人物の言葉に対する返答は、驚愕と困惑、そして歓喜の入り交じった咆哮であった


「マジか!?こんなラノベみたいなこと本当にあるんだな!」「すげえ!ハーレムとかつくれんのかな?!」「どんな報酬も、ってんだから当然だろ?!」「ぃやったー!もう勉強しなくていいんだー!」

この状況を少なからず理解した者たちのなかでも、楽観的な者達は自分達が負けてしまうかもしれないという思考には至らず、メリットのみ、己に都合のいいようにしかとらなかった。その一方で、しっかりと考えるものも多くいた。そもそも話についてこれていないものもいたが…


「ま、待ってくれ!俺たちは戦いなんてしたことがない、ただの人間だ!どうやって戦うっていうんだ?!」

「案ずることはない、そなたたち勇者には特別な力が宿るのだ。…最初に呼んだ勇者達はチート能力と言っていたか。なんとなくわかるはずだ、己に宿った力が。戦ったことがないといってもその力はまさしく一騎当千、心配は無用」

「いま、前の勇者達、とおっしゃいましたね?どういうことです?」

「この勇者召喚の儀では全部で500の勇者が召喚される。基本的に一度に召喚されるのは30人前後、といったところだ。先に召喚された勇者たちには大食堂で宴会中だ、後で貴殿らも行くといい」


確かに、言われてみれば、といった声がそこかしこから上がる。宴会という単語の方に反応しているものもいるが、大半は己のチート能力についてのものであった。そして王はさらに言葉を続ける


「そして…そして、どうか頼みがある。これは王としてではなく、一人の親としての願いだ。魔物たちによって拐われたわしの三女、アンジェリカを助けてやってくれ!アンジェリカはその美貌から魔物たちに目をつけられ、拐われたのだ!頼む、救ってくれたのなら、先程言った報酬とは別に、公爵の位と、アンジェリカ自身をくれてやる!だからどうか…!」


「…顔を上げてください、陛下。わかりました、お引き受けしましょう。それでいいだろう、皆?」

『おお!』


王の懇願に答えたのは先程発言した者であった。皆に同意をうながし、そしてそれに慣れているところを見るに、どうやらこのクラスの中での地位は高いらしい。


「おお…!感謝すr「いらん」「いりません」…なに?」


王の言葉を遮ったのは二人の男であった。いらんと吐き捨てたのは170cmほどの体格であるが、体はごつく、精悍な顔つきの男で、眼光は鋭くギラギラと濁っていた。いりませんと切り捨てたのは眼鏡を掛けたひょろ長い180cmほどの男で、体格は頼りなく、目尻の下がった柔和な顔つきだが、その眼光はギラギラと濁っていた


「なっ…!お前達!?なんで…」

「なんでもなにも、いらないでしょう、そんなもの」

「応、そうじゃ。いらんから、いらんと言うた」

「よい。そうか…気に入らんか。では貴殿らには別室でまた交渉をするとしよう。他の勇者達は宴会に参加するとよい、明日からは己の能力の把握と研鑽が始まる、存分に英気を養ってくれ」

『はい!』


他の勇者達は皆出て行った後、異論を唱えた二人はとある部屋に移されていた。その部屋は狭く、ただ大きな円卓が中央にあるだけの殺風景なものであり、その円卓には既に四人の先客がいた。


「ほう、珍しいな。」「二人同時、かあ…世も末、って感じ」「ふ、ふむ。せ、拙者はなんだか眼鏡を掛けた御仁とは仲良くやれそうな気がしますぞお」「どうでもいいよ…早く本を読む作業に戻らないと…」「ひえっ、うう~…怖そうな人…」


二人はなんとなくだが理解した。自分達はつまり、お眼鏡に敵ったのだと。


(やはりあの王、こちらを試していましたね…)

(おお…皆癖は強そうじゃが戦では頼りになりそうだの…もうけもうけ、精々わしを上手くつかっとくれよ?)


眼鏡の方は想定内、精悍な顔つきの男はそもそも戦のことしか考えていなかった。そこに、王が入ってきて、二人に着席を促し自らも円卓の席に着いた


「さあ、では始めようか、真の勇者諸君。魔王討伐のための会議を…!」


王の口元は耳まで裂けるかのように嗤っていた。







あくまでドリフターズリスペクトです

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