ピンチはチャンス
振り返ると、どデカい真っ黒なクモがゆっくりこっちへと迫ってきていた。
(おいおい·····まじかよやべえだろあんなの·····)
おそらくさっき一斉に襲ってきたクモの親分だろう。
「オルァァァァァァァァァ!」
俺はそいつに向けてがむしゃらにマシンガンを撃ちまくった·····が、皮膚が硬くて全く効かない。
そのクモと目が合い一瞬の沈黙の後、俺は全速力で拠点の方へと走った。
(こんなの逃げるしかねえって·····)
ザンッザンッザンッザンッ!
クモも全速力で追ってくる。
だめだ。どうにも逃げられそうにない。
もうあと10秒も経たないうちに追いつかれる。
そう思った時、俺はそのクモのある特徴に気づいた。
(あいつ、クモのくせにでかい口がある·····)
(見えたぞ·····勝ち筋が!)
俺は全力で走りながら腰に着けていた小さいカバンからあるモノを取り出し準備をする。
クモはすぐ後ろまで迫っていた。
あと数秒で追いつかれてしまう。
クモはその大きい口を開け、今にも俺を食おうとしている。
その瞬間、
「くたばれクモ野郎ぉぉぉぉぉお!!!」
俺は振り返り、それをクモの口の中めがけて投げ入れ、急いで側の木の陰に伏せた。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
「はぁはぁはぁはぁ·····やったか。」
恐る恐る様子を見に行くと、クモは内側から破裂し、粉々になっていた。
(予想以上の威力だな。)
俺がクモめがけて投げたもの、それは手榴弾だ。
特に思いつく使い道もなくマシンガンを創った時のノリでついでに創ったようなものだったが、まさかこんなに役に立つとは。
「うっ·····」
身体中が傷だらけの中、全速力で走ったせいで傷口が開き、出血も多く、急に立ちくらみがしてそのまま倒れ込み動けなくなってしまった。
(くそ·····拠点まで行けそうにないし、もうここで治療しよう。)
俺は包帯を創ろうとした。が、そのときあることを思いついた。
もしかしたら皮膚や血液を創造できるのではないかと。
そうすれば治療せずに一瞬で全回復出来る。
俺は身体中の傷口に意識を集中させ、そしてその傷口を塞ぐ皮膚を創るイメージをした。
すると·····
「うわっなおった。」
これなら血液もいけるのでは。
今度は全身を流れる血液に意識を集中させ、血管に血液を注ぎ込むイメージをした。
すると·····
「うおぉぉ。これは間違いなく血が増えてるぞ。」
形容しがたいが間違いなく血が増えていくのを感じた。
体もすっかり元気になり、怪我も癒え、万全に回復した。
(それにしてもこのスキル便利だな。)
俺はスキルのありがたみを感じながら拠点へと帰った。