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今日から学校と仕事、始まります。②莞

対策は無駄なので

作者: 孤独

もぐもぐ……


「おいしー」


冷蔵庫を開けたら、いつも買って来た食品だったり、いつ使うんだこれ?って感じの食材が詰まっている。

夏でないのならお菓子が冷凍庫に入っているわけがない。

学校から帰ってきて、冷蔵庫を開けた阿部のんは、ちょっとオシャレな箱に入っているチョコレートを食べていた。なんでこんなものが……。いつも入れて欲しいと思う。


ガチャッ


「ただいまー。のんちゃん、今日はグラタンを買ってきたから。ご飯炊くのとお味噌汁作ってー」


冷蔵庫にあった物を勝手に食べる小学生相手に、帰って来て早々夕ご飯のご用意をお願いする沖ミムラ。今は女子大生をやっているが、家事全般が壊滅的であるため、居候しているのんちゃんに家事のほとんどをお願いしている。

正直、どっちが居候しているんだか、分からない環境である。

ただし、分かっている事が1つある。


「あ、ミムラさん。これ買って来てたんですか?」

「あれ?」

「すっごく美味しいですよー」

「……ちょっと、のんちゃん。何をしているの……」

「へ?」

「それ!広嶋くんへのバレンタインチョコなんだよ!!」



◇        ◇


「許せませんよ!!」


ミムラはのんちゃんに作ってもらったお味噌汁を飲みつつ、ちょっと怒っている。


「勝手に人の物を食べちゃダメです!」

「ご、ごめんなさい」

「名前、ちゃんと書いてあったでしょ!?」

「え?そんなものは……」

「”広嶋くんへのプレゼント”。……それも広嶋くんからわざわざ頼まれたんだよ」

「え!?広嶋さんから……!?」


ミムラも、のんちゃんも。広嶋健吾という男に興味があった。

ちょっと冷たいが、助けられている事もあったり、お互いに思いやっている。周りが言うほど鬼のような人じゃなく、優しいのだ。

広嶋はミムラにこう頼んでいた。


『お前、絶対にチョコを手作りでやんな。最初から金やるから、”必ず”買って来た物を俺に渡せ』


「って、2000円ほどのお金をもらって、3000円くらいのチョコを買ってきたの」

「あの。それミムラさんの腕を恐れてますよね?ちょっと間違った解釈すると、広嶋さんがモテない男性ですよね?」


バレンタインとは好意のある人にプレゼントをする事である。

その日に会えるわけがないが、のんちゃんも今から何かプレゼントを考える。そんな思考をしている時に聞こえてきたのは


「ふふふふ、やはり名札を外せば勝手に自滅すると考えた、この裏切の作戦に間違いはないのです」

「その声は裏切ちゃん!!なんで、のんちゃんの学習机の下に隠れてるの!?」

「というか、なぜ家にいるのかを問いただした方が良いかと。のんちゃん、気配には気付いてましたけど」


裏切京子。ミムラとのんちゃんの友達であるが、ちょっとした事で敵でもある。物騒な発言をしている女子高生である。なんか拳銃を握っているし……。当然ながら、この家に住んではいない。

では、なんでここにいるのか。大方分かっている。


「あなた方に広嶋様をお渡しするわけにはいきません。バレンタインは私、裏切と広嶋様が結ばれるべき日なのです。よって、あなた達を喧嘩させることによって、広嶋様の元へは行かせません」

「なっ!?……謀ったね!裏切ちゃん!」

「いや、裏切さん。それならどーして、広嶋さんのところに行かないんです?」


・・・・・


裏切の目が凄く赤く染まり、のんちゃんに詰め寄って、銃口をつけるほど



「あなたってホントに空気読めない子ねぇぇっ!!」

「ぎゃあああああ」

「私は!私は!!広嶋様の助言通り!!『ミムラの家に行って、ミムラの買って来たチョコの名札外しておけ。のんが勝手に食べて、2人は喧嘩するから』って頼まれた事をやって、上手く仲を引き裂けたかと思いきや!肝心な私が広嶋様のお傍にいられないんですわよーーー!!」

「さ、さっき自分の作戦とか言っておいて……広嶋くんに言われてるんじゃない。ちょっと、離れて離れて」

「あわわわわわ」

「きーーーっ、この小娘~。広嶋様に気に入られようと媚を売って!もし気に入られたら広嶋様がロリコンになってしまうじゃない!!それだけは阻止よ!」

「お、お、落ち着いてください!裏切さん!」


トラウマになりそうなくらい、怖い思いをしたのんちゃん。

みんなして広嶋から言われているが、のんちゃんだって広嶋から頼まれているものがある。



「ちょっと待ってください」

「なに?」

「まぁまぁ」



のんちゃんは学校帰りにもらってきた物をミムラと裏切にみせる。



「『ミムラと裏切が来たら、これ渡して、みんなと仲直りしろ』って、広嶋さんからのケーキだそうです」

「普通に渡しに来て良いよ、広嶋くん!!私達で弄んで!」

「なんと……その心遣いに、この裏切。嬉しいでございます」



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