始まった日
キリが良かったので、今回は短めです。
薄れていた意識が、覚醒していく。
最初に感じたのは、どこか心が落ち着き、包まれているだけで全ての不安が払拭されていくような、柔らかな温もりだった。
その何とも言えない温もりを、全身で感受していると、俺の右側から、声を掛けられた。
「こんにちは、アラン……産まれて来てくれてありがとう」
そう俺に声を掛け、俺の顔を覗きこむように見てきた女性が見えた。
その女性の顔は、どことなく幼さを残した少女の面影があり、それでいて、美しさも兼ね備えた大人の女性の顔をしていた。
女性は満面の笑みを俺に向けてくる。
俺は、直感で気付いた……この人が俺の新しい人生においての母親なのだと。
どうやら俺は母親の横に寝かせられ、母親の温もりを感じていたようだ。
母親の慈愛に満ちた顔が引っ込むと次に、こちらも溢れんばかりの笑みを浮かべた、男性の顔が見えた。
その男性の顔は、青年と言える年齢で、目鼻が立ち、意思の強さも見える顔をしている。
「初めましてアラン、君のパパだよ……」
俺は、美男・美女の夫婦の間に生まれたらしい。
顔が全てだとは思わないが、顔が良くて困る事は無い。
俺は俺をこの世界に転生させてくれた神様に、少しだけ感謝した。
そして最後に、俺を覗きこんだ顔は、まだまだ幼い小さな男の子だった。
まだ、3才か4才ぐらいなのだろう、生まれたての赤ん坊を初めて見たのか、少しだけ困惑した顔を浮かべ。
「はじめまして、スチュアートです、3さいです、おにいちゃんです」
きっと、生まれる前から、この時の為に、父親や母親から教えられたであろう挨拶を、大きな声で言ってきた。
家族の初めての挨拶が済んだのだろう。
父親が高らかに宣言の言葉を口にする。
「ウィリアム家の父祖達に宣言する、ここに生まれた新しい命を、ウィリアム家に繋がる正統な命である事を、父の名は『ジョージ・ウィリアム』母の名は『クレア・ウィリアム』兄の名は『スチュアート・ウィリアム』そして……新しい命の名を……『アラン・ウィリアム』とする事を、ウィリアム子爵家家長の名において承認する」
この人達が、俺の新しい家族……。
俺は、理由は分からないが、暖かく幸せな家族の元に生まれて来た事を確信した。
(この新しい家族と一緒に、俺は幸せに包まれて生きて行こう……)
1人心の中で誓った……。
今後、更新時間を19時とさせて頂きます。
ド底辺作家に愛の手を……w