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異世界の呼び声  作者: 岡田孝
1,星からの暗黒
6/20

1-5

 オーナーに教えてもらった部屋の扉を開くとそこには、金によってきらびやかに装飾された高級そうな木製のタンスや、思わず靴に泥が付いていないか確認してしまうような美しいカーペットなど、一目見ただけでこの家主の経済状況がうかがえるような、豪華に装飾された部屋があった。

 ステラはそれを見て思考を停止したようにして驚き、クレイは困惑したような表情を作り、マヤはいつも通りだった。俺は正直引いていた。確かに、高級なものには高級なだけの価値や意味がある。それでもこれはやりすぎだ。いかにも―


「いかにも成り金野郎のしそうなこと……」


 マヤが冷たい語気でそう言った。どうやら俺と同じことを考えていたらしい。マヤは実際本物のお嬢様だし、そう思うのも無理もない……のだろうか?よくわからないが。

 

「さ、この子の日記とかアルバムだとかを探しましょう」


 そう言ってマヤはすぐに家探しを始めた。それにつられて二人も部屋を漁り始めた。

 俺たちはハンナという女性のの行動パターンというものをあまりにも知らない。普段どこに行くのか、恋人はいるのか、趣味は何なのか。もしかすると、普段行きつけのアヘン窟でまだアヘンを吸っているのかもしれないし(アヘンというのは奏の国から貿易によってもたらされた麻薬の一種で、アヘン窟というのはそれを主に販売する店のことだ。ちなみに俺は依頼で一度だけ行ったことがあるが、もう二度と近寄りたくもないと思っている)、恋人の家で一晩中いちゃついているのかもしれないし、旅行に行っているのかもしれない。そういったことを知るために、日記やアルバムが必要なわけだ。

 途中でかびたパンなどを発見しながら15分ほど経つと


「あったよ」


 と言って、茶色い髪の毛にいくつかの埃をくっつけながらステラが日記をこちらに渡してくれた。ものすごく得意げな顔だったのは言うまでもない。

 マヤがステラの頭を払っているのを横目に見て、俺はハンナさんの日記を読み始めた……


10/29


 今日は友人たちとピクニックに行きました!冬だからすごく寒かったけど、少し運動したら逆にむしろ暑くなったくらいだったので、最高のピクニックびよりでした。楽しかったです!

 マリーちゃんに腕のかさぶたの件について聞いてみると、家庭の事情だと言われてしまいました。何か誤魔化されているようにも思えるけど、言いたくないなら無理に聞くこともできませんよね……

 

10/30


 たばこは健康に良いから吸うべきだとミスカトニックの先生方はおっしゃいますけど、丁寧にお断りさせていただきました。せっかく家から送ってもらった家具に臭いが染み付いてしまうのはちょっと……

 ボブ君がマリーちゃんの悪口をいっていました。暗いだとか、家の明かりがいつも点いていないような貧乏人だとか、かさぶたが腕だけじゃなく脚にもあるだとか。本当に最低だと思い、思わずその場でビンタをしてしまいました。痛かったと思いますけど、人の陰口はよくないです。……けがとかはしてないかなぁ、なんだか申し訳なくなってきてしまいました。


11/1


 なんとなんと!マリーちゃんからお誘いがありました!普段は私から遊びに誘っているので、こういうことがあるのは本当にうれしいです!!明日はどんな服を着ていこうかな……とりあえずコルセットは少しきつめのものにして……うーん、悩みどころですね……

 まぁ、今日は早めに寝ましょう。夜更かしは乙女の敵ですからね!


 日記は毎日一日も欠かさず書かれていて、ここで終わっている。どうやら彼女は11/2日に誘拐されてしまったらしいことがうかがえる。


「この日記を読む限り、このマリーって子と遊んだのが最後みたいだ」

「あー、あった。こいつか……」


 いつの間にかアルバムも見つけ出していたステラがそれをぱらぱらとめくり、一枚の写真を見せてきた。先ほどの家のお嬢さんだ。


「じゃあ、あー、マリーちゃんの家にもう一回行ってみるか?」

「あぁ、そうしよう」


 さっき彼女に話を聞いたところ、知らないの一点張りで何も聞き出すことができなかったことを思い出す。日記の内容からして二人は確かに友達だったはずだし、むしろこちらに協力してくれないとおかしい。しかし、そうではなかった。ならば、


「彼女は何らかの形で失踪にかかわっている可能性が高い。どんな形でかは分からないが、何とか話を聞き出してみよう」


 それにしても、何かが、何かが引っ掛かる……。身代金目的の誘拐にしては、彼女の家への連絡がない。ハンナさんが誘拐されたのは今から7日前だ。あまりに遅すぎる。家出だとかそういうことでもないだろう。どこかに遊びに行って帰ってきていないなら、なぜ一緒に行ったはずのマリーさんだけが家にいるのか。彼女の友人の話や、聞き込み、この日記の内容から察するに、ハンナさんは普通の―普通というには少し金持ちで優等生すぎるが―女の子にすぎない。そんな子にいったい何があったのだろうか……?

 一抹の不安を胸に、俺たちはその部屋を後にし、マリーさんの家に向かった


今日から18時30分投稿になります!!

もともとほとんど守れていなかったので、少し遅らせればいけるのではないかというわけです

そろそろ物語が動き始めますので、少々お待ちください。

感想、レビュー等、お待ちしております。

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