9 入れ替り ひなサイドその4
短いです。
「 今日で終わりかあ。」
まるで夏休みが終わる小学生みたいに呟いてしまう。入れ替りの魔法の効果は、明日の朝には切れる。色々やってみたいけどさ、休みじゃなくて学校だし。
私は、学ランに袖に通すと、きっちりと詰襟のホックを止める。大概の男子は外してる人が多いのに、仁はきっちり止めてるんだよな。――私としては、このきっちりとした感じはきつくて仕方ない。
これはこれで、男の子にならなきゃ絶対に味わえない感覚だから貴重なんだけどね。
学校へ行く支度を済ませた私は、いつものように仁や真央と渉くんと合流し、学校へ行く。
教室に入ると、自然といつも通り行動する。中身が私でも、体は覚えてるみたいで、本来の持ち主がやってる通りに鞄から、昨日やった課題を取り出す。
駄弁りにやった来た渉くんに一言伝えると、仁の元へ課題を持ってく。
「 ひな、これさっさと写せや。」
このセリフもスルリと出てくる。仁は、私になりきろうと必死みたいだけど、私は、苦労せずに、仁になりきれてる。
――なんでだろう? まあいいか。
「 ひな、課題やってきたの?」
「 だって、仁にやって来いって言われじゃもん。」
「 なんだ。そゆこと。」
真央とこそっと話をしてる側で、がまの如く汗をだらだら流していらっしゃる方が約1名。
まあ、いつもの私の行動を考えれば、妥当だと思うけどさ、それにしたって私を信用しな過ぎでしょ。
「 仁。まさか、課題やってきたん?」
「 うん、まあ。やってきた。」
‥‥‥やっぱりな。物事に慎重なのはいいけどね。今回の場合かなり損してると思うよ。こいつが損してるのはいつもの事だけどね。
いつもなら、なんで課題してきとんって怒るところだけど、今は『仁』だから怒る訳にはいかない。あっそとだけ言い残して私は、『 仁』の席に戻った。
その日授業中何か起きないかなって、ずっと期待してたけど、結局何にも起きなかった。つまんない。だけど、私が気まぐれで、使った『入れ替りの魔法』まさかあんな事になるとはね。後々の私が後悔する事をこの時の私は知らなかった。
次から新しい話になります。